952話 ダンジョンの中で迷走
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「ちょっと気になる所もあるけど、この部屋は、外とは違うみたいだな。魔物がいた形跡もないし、心なしか部屋の温度も低い気がする」
俺がこの部屋に入って調べた感想を述べた。
「そうですね。なぜこんな部屋があるのかとは思いますが、このダンジョンを作ったモノの思考なんて理解できないですからね。ただ、利用できるなら利用するのがいいと思います」
ピーチが俺の感想に更に言葉を繋げた。そして言う通り、この部屋を利用するのがいいという結論に至った俺たちは、魔法とクリエイトゴーレムを駆使して、この部屋に休憩スペースを作成した。
マップ先生を見てある程度分かってはいたが、予想以上に広い空間だったのだ。この階層の特徴なのか天井までは10メートル以上あり、部屋の広さはバスケットコートが、軽く4面はとれる程広かった。ここなら簡易的な宿泊施設ではなく、本格的な宿泊施設を作ることが可能だ。
とはいえ、予想以上にみんな疲弊しているので、今日の所は入口にアダマンタイト製の扉をつけて、野営コンテナで休憩する事にした。そもそも、ここに休憩スペースをわざわざ作る必要などないのだが……よくわからない思考で、ここに拠点となりえる休憩スペースを作成する気満々である。
魔導具や装備などで、しっかりと防御をしていたのだが、ジリジリと襲ってくる熱波を完全に防ぎ切れていなかったため、かなりお疲れ気味であった。魔導具の効果で涼しかったんだけど、いうなら、クーラーの効いている部屋で、太陽に照り付けられている感じだろうか?
そんな感じのせいで、普通に進むよりかなり体が疲れていたのだ。前に同じような階を通った時は、こんな感じじゃなかった気がするんだけどな……とよく覚えていない昔の事を思い出そうとして、失敗した。
それにしても、シルキーたちは元気だな。野営コンテナの作成もぱっぱと済ませ、そのまま食事の準備を始めたくらいだ。移動時はずっとクロやギン、大きくなったダマの背中に乗っていたから、ピクニックにでも来ている気分なのだろうか?
そんなシルキーたちが作ってくれた食事は、今日もおいしかった。
次の日は、みんな何も疑問を持たずに休憩スペースの作成に取り掛かっていた。女性陣……俺以外が、あーでもないこーでもないと言い合いながら、女性でも過ごしやすく防犯に優れた休憩スペースを必死になって考えていた。
ここまで来れる冒険者が人格的に優れているかは分からない上に、ここまで来れるという事はそれなりの実力者である。ただダンジョンの中で何かあったら自己責任ではあるが、同じ人間からの悪意によってなら話は変わってくるとかなんとか。
確かに言わんとしている事はよくわかるが、何処にだって屑はいるしな。それこそスラムから各国トップまでいろんな所にだ。スラムの人間は生きるのに必死でと注釈がつくだろうが、上の立場の人間は悪い事だと分かってて息を吸うように悪さをするやつもいるしな。
封建制だったら、領主が絶対で領民は家畜当然みたいな人間もいたとかいないとか。まぁ小説の中の話なら、目つきが気に入らないとか言って切り殺す貴族がいるけど、あれは小説だからだろうな。昔の事なんて俺には分からんしな。
まぁ、地球でも昔は奴隷制度があった位だし、日本では江戸時代だったか? 非人と呼ばれる人間として認められていない階級の人たちもいたらしいし。人は自分より下の人がいる事で、愉悦に浸る生物だからしょうがないのかな?
っと、話がそれたな。今みんなが話し合っているのは、個室にするか大部屋にするか、パーティー単位にするかと言った所である。
すでに決まっている事と言えば、トイレ・風呂は完備すると言う事だ。大きなものにするか、部屋に設置するかは議論の余地があるとの事で、先に部屋のタイプを決める事になったのだ。
ただその議論がかれこれ1時間は続いている。こんな事で1時間もと思わなくもない。30分前に口に出してみた所、言葉でフルボッコにされたのだ。
個室派は、ダンジョンの中で四六時中一緒にいなきゃいけないから、こういった時こそ1人の時間を大切にするべきです! と主張している。
大部屋派は、わざわざこんな所で設備の整った部屋を準備する必要はない! だから雑魚寝で十分でしょ! と主張している。整備の整った部屋は無くても、風呂トイレはきちんとしたのをつけるのは矛盾してないか? と思うが黙っておく。
パーティー単位派は、単純に分かりやすく、気の置ける仲間と一緒の方が安心する! と主張している。
俺も意見を聞かれるのだが、全部が全部、分かってしまう主張なだけに口をつぐむしかなかった。だって俺が変な事言ったら、それに決まってしまうかもしれないしな。こんなにボッコボコにされてるのに、こういう判断を求められることを聞かれると俺の意見に傾くからな……
なので俺は、部屋に関わらない設備をせっせと造っている。これだけ天井が高いのだから、4階建てくらいの構造でいいかな? 天井まで2.5メートルちょい……まぁこんなもんだろう。こんなに部屋を作れる空間を増やしても、そんなに人は来ないと思うけど、息抜きだしちょうどいいかもしれない!
集中してトンカントンカンしていると、実際はクリエイトゴーレムでザックザックとやっているんだけどな。フロアは、石にした。木造だと火事になった時に大変なので、この部屋に造るモノは全部石で作る事になっているのだ。
もちろん全部石で作ろうとしているわけでは無い。鉄筋……アダマンタイト製の棒を柱や床に入れておくので、耐久性にも優れている事だろう。まぁ、魔核を埋め込むので、自動修復機能付きだけどな!
そんなこんなで2時間ほどかけて4階分の空間を作成した。どんな構成になるか分からないので、正方形の柱と床だけの建物を造って、階段は用意していない。壁もまだ作っていないのでそこから飛び降りて、議論を重ねているみんなの所へ戻る。
そうすると、俺が造った建物を見て、各階層毎に大部屋、個室、パーティー別の部屋を作ることになった。そこで1つ疑問に思ったのは、ここ誰が管理するんだ? ということだ。それを聞くと、みんな失念していたようで黙ってしまった。
ここにシルキーたちをって訳にもいかないし、マジでどうすんだ? 休憩エリアとしてお金をとる事になった場合、誰かがここにいないといけないんだぞ。娯楽なんかはダンマスのスキルで用意してあげられるけど、すき好んでこんな危険の所に来たくないだろ。
護衛に関しては、リビングアーマーたちを準備しておけば問題ないけど、こいつらにお金のやり取りはさせれないしな。
そう考えていると、ネルから
「昔の私たちの家族みたいに、仕方がなく奴隷落ちになっちゃった家族を、何組か購入してここの管理をしてもらったらどう?」
確かに、安全面に配慮して、決まり事『3日に1度は掃除をするので、その時は建物から出てもらう』等、決めておけば、危険にさらす事もないか? 最悪、強引にダンジョンの壁に穴をあけて、外とつながる通路を作ってもいいか?
うーん。色々面倒なので、もし休憩スペースとして開放する事になるなら、ゼニスに任せよう! 商売に関してはあいつに任せるのが一番だしな!
1階は共有スペース、2階は大部屋、3階はパーティー用、4階は完全個室という割り振りになった。
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