093話 蹂躙
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状況を観察していると不意に両軍が少しひいた。
今だ!
「全員に告げる、これから戦闘に入る。次の連絡が入るまで各自の判断を優先して力の差を見せつけろ」
俺が率いる年少組と従魔たち、カエデ、レイリーが一応両軍の先頭に当たる兵士、冒険者たちに接敵する。レベルを見る限りBランクの冒険者すらいないだろう。おそらく依頼は出るが、その金額を考えるとBランク以上はあまり参加することは無いんじゃないかな。
それでも、街に愛着があれば参加するだろうけど。今の俺がまさにそれだし、街の為に第三勢力としてだけどな!
まず先陣を切るのは、年少組の魔法使いレミー。俺の非殺をしっかり理解して、魔法チョイスをしている。敵の両軍は何があったかわからずに倒れていく。
レミーの放った魔法は、雷魔法で魔力の出力を抑えた、ショックという魔法を使っていた。今のレミーが普通にショックを放ってしまうと、自分と相手のレベル差による魔力と抵抗力の差で、下手したら死んでしまう可能性が高いのだ。
本来ならショックとは、同レベルの相手であれば少し痺れさせて時間を稼ぐ魔法なのだが魔力が上がってくると魔法の出力自体が高くなっていくため、抑えて魔法を撃って消費を抑える事もあるのだ。
レミーの放ったショックで両軍とも三十人程が沈黙してぴくぴくしている。年少組というとシェリルの暴走とイリアの精霊魔法が便利すぎて他の娘が目立っていないが、しっかりと実力をつけているな。
おっきい武器! のエレノアは、今回は斧ではなくヘヴィモールを使っている。もちろん大型武器のスキルは全部十まで上げているので特に問題なく扱っている。そのエレノアは超重量武器のヘヴィモールで、漫画の様に人間を高く吹き飛ばしていた。
一五〇センチメートルいかない身長で二メートル近くある、超重量武器を器用に扱っているさまは、正直怖いものがある。持ち手を器用に動かして理科の勉強で教えていた支点・力点・作用点の原理を上手く使って武器を振り回してるのだから、そりゃビビるわな。
だって自分の娘位の小さな娘が自分たちでも振れないような、超重量武器をもって鎧を着た兵士を吹き飛ばしてるんだから、相手もどうしていいかわからないよな。
今回はエレノアの陰に隠れがちだが、両手剣使いのケイティも刃が潰されているとはいえ、全長は二メートル近くあり、刃は少し広く重量はおよそ十キログラム程のクレイモアを振り回して相手を蹂躙している。
吹っ飛ばしているという意味では、タンクのメルフィとサーシャも同じような状態である。こっちは武器ではなく盾を上手く使って相手をポンポン吹き飛ばしているのだ。全力で突進して相手に盾を打ち込むシールドチャージや、力にものを言わせてシールドバッシュで吹き飛ばしている。
周りが派手すぎて陰に埋もれがちだが、シーフのソフィはその武器と役割の特性からみんなが暴れている隙をついて、前線指揮官だと思わしきものを暗殺して回っている。
あ、暗殺は比喩的表現ですよ? 死角から忍び寄って誰にも気づかれずに意識を刈り取って、離脱してるから暗殺って言ってるだけで! レベル差がありすぎて相手が全く気付けないのだ、こんなところでもレベルが作用するとは思わなかったがそういう事だろう。
さて年少組の問題j……じゃなくて、優秀な娘のイリアとシェリルはいつも通りの平常運転でした。イリアは精霊魔法の阻害系を巧みに使って、他の娘達をアシストしている。しっかり自分の立ち位置を理解して行動している。
一方シェリルはというと、今回は武器を持っていない。カエデに頼み込んでグローブの様な手袋を作ってもらっていた。拳を握りこむと殴る部分に仕込まれている砂鉄が、硬くなるような構造になっており拳を守る設計になっている。
シェリルが力の限り殴れば骨折でなく、下手したら体に穴が開く可能性があるので、もちろん手加減のエンチャントがつけてある。もともと体術に秀でたシェリルだったため、最近は武器をふらずに近接格闘(素手)にこっているようだ。
初めは俺と同じ武器がいいって言ってた、可愛いシェリルはどこいったのだ。今でも可愛いけどな。ロリコンじゃないぞ! スレンダーな体系は好きだけどな!
おっと、話がそれたな。そのシェリルは、敵陣に突っ込んで空白地帯を作っている。なぜ空白地帯かというと、シェリルに殴られた相手は悶絶してその場に倒れこんでしまうため、近付くに近付けない空間になり空白地帯になっている。
年少組に危なくなる要素は一切なかった。従魔たちもみんな暇そうだ。ニコよいくら暇だからと言って頭の上に乗るな。ハク、当たり前のように俺に抱えてもらうように膝の上に乗るな。クロ・ギン、暇なのはわかるが寝そべってあくびをするな!
みんな緊張感を持ってくれ。俺だって暇すぎて、くつろぎセット出して紅茶飲んでるけどな。従魔たちできちんと仕事してるのはリビングアーマーだけだな、っても仁王立ちして地面に剣突き刺してるだけだけどな。
ウォーホースは単独で戦争に出すのは何かよくない気がしたので、後方でノンビリさせている。でも敵が来たら迎撃してもいいように許可は出しているぞ。
正面は俺たちが戦闘に介入してから、およそ三十分程で年少組に蹂躙されていた。手加減で誰一人死んではいないが、武器が手元にあれば起きた時に、近くの敵を殺し始める可能性があったので、全員の武器と防具を取り上げることにした。蹂躙するよりこっちの方がはるかに時間がかかったけどな。
年中組・年長組の方もおおよそ状況は同じようだった。娘たちの攻撃では誰一人死んでいなかったが、メルビン男爵が娘たちの蹂躙を見て、錯乱して馬から落ちて踏まれて両足骨折、内臓が一部破裂してしまったようだった。
ほっとけば死ぬ可能性があったので、キリエに指示して回復するように言ったが治してあげるために行動したのに、邪魔をする兵士にキレて双剣のチェルシーが、進路上のものを排除してメルビン男爵をある程度まで回復させた。
本当は死んでほしいけど、メルビン男爵の弟は前男爵や現男爵より無能で、さらに質の悪い人物と噂があったので今死なれると大変迷惑なのだ。
程なくして両軍から武器防具の類を全部回収して、両軍の団長と貴族を縄で縛り捕縛した。キリエとピーチに指示をして、戦場に大規模な回復魔法をかけてもらう。
全員を完全回復させる必要もないので、無理をしない様に指示を出している。戦場から少し離れてこちらを見ていた一団が動き出したので、一応戦闘態勢をとらせる。俺の予想が正しければ、この一団は戦争を監視して結果を王都に伝える役割を持っているやつらだろう。
後は、戦争後の権利うんたらの話をして、きちんと書面に残すのではないかと考えている。一〇〇メートル程まで近付いてきて、
「我らに戦闘の意志は無い。戦ったとしてもこの人数では勝ち目はほぼ無いに等しいだろう。我らはこの戦争を見届けるために中央から派遣された騎士団である。今回の戦争の勝者シュウ殿にフレデリク・リーファス両街の権利についてお話ししたい。よろしいだろうか?」
「みんな戦闘態勢は解除、警戒は怠らない様に。権利については、色々聞きたいことがありますので、時間がかかりますがよろしいですか?」
「問題ない、戦争が一日かからずに終わるのはかなり珍しい。こちらとしては時間は余っている。貴族以外の勝者が出たことで、色々説明をしなければならない事もあるのだ。こちらの話も時間がかかる事を了承してほしい」
「ありがとうございます。みんな、天幕をはれる場所を作ってくれ。後、誰かウォーホースをここまで連れてきてくれ。しばらくしたら天幕が完成しますのでしばらくお待ちください。ところで皆様騎士団の方たちは、貴族の出身でしょうか?」
「我らの騎士団に入る前の身分は関係ない、という話じゃないですよね? この騎士団はこういった戦争や、街同士のいざこざを解決するために作られた騎士団です。公平を期すために、戦闘能力と性格で選ばれる為貴族出身のものは多くありません。実力のない貴族たちが口をそろえて、後始末団と言っていますが、ただのやっかみですね」
この騎士団は、性格がひねくれてる貴族は入れないのか。それなのに貴族同士の戦争の見届け人なんてしていれば、貴族達に悪口を言われるのは当たり前か、この世界の貴族ってゲスな奴が多いんだな。
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