077話 震撼のフレデリクの街
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俺が召喚したオークによって引き起こされた事態は、予想外な方向に問題が広がっていった。
街の中では、メルビン男爵の部屋に突然オークがわき殺されてしまったこと、そのオークが異様に強かったことが一気に駆け巡った。男爵が死んだことによる街の混乱は全くと言っていいほどなかったが、オークが街中に沸いたことが多くの混乱を招いた。
特に女性にとっては死ぬよりつらい思いをすることになる可能性があるのだ。この日から騎士団や冒険者ギルドの勇士たちによって街の中の巡回が増えた。
ん~俺は真実を知っているが、それを話すわけにもいかないしな、まぁそのうち騒ぎも収束するだろう。娘たちを家から出さないでも済む口実を手に入れたと思えばいいか?
とはいっても、今回のLvを上げたオークでも娘たちなら、素手で倒すことができるくらい戦闘能力に差があるから、口実もくそもないけどな。
男爵が死んでから二日が経った時、娘たちを連れて行こうとしていたAランクパーティーの……名前は忘れたが、リーダーが家に来た。
噂話を聞いたか聞き、簡単な詳細を語ってくれた。メルビン男爵の部屋に今回の報告をしに行ったところ、男爵と豚君がすでに食われていたそうだ。あの二人は戦闘力皆無で全く抵抗できずに死んだらしい。
ただ、先に駆けつけていた騎士団の中堅がそのオークにやられて怪我をしていたのだ。亜人の森に出てくるオークであれば一対一でも倒せる実力のあった騎士だったのに、不覚をとったわけでもないのに圧倒されたと話していたらしい。
流石にけが人を増やすわけにはいかなかったので、自分たちが倒したとの事。
長々と語ってくれたが、俺はその様子をマップ先生でみていたのである程度は把握していた。さすがAランクというべきか、一撃で屠っていた。
リーダーは正直連れてかなくてよかったと言っている。もし無理にでも連れてって反感を持った状態で、男爵が死んでいたのなら、どうにもならない状況になってたのではないかと青ざめた顔で語っていた。
俺は自分の手で始末できなかったのが心残りだけど、当然の報いを受けたならもう何も思う事はないとそいつに伝える。実際は俺が暗殺したような物なんだけどな!
何度も謝罪をしてから立ち去って行った。
俺の周囲には特に混乱もなく平和な日が一週間程過ぎたある日、街中で異変が起きたのだ。魔物がわいたとかそういう話ではない。
フレデリクの街の人間が極度のストレス状態に陥ったためか、疑心暗鬼になり一部の人間が暴れだしてしまったのだ。初めのうちは騎士団や冒険者に問題なく取り押さえられていたが、次第に騎士団や冒険者からも暴れだす人間が出てきてしまったのだ。
俺の召喚したオークが発端でフレデリクの街が混乱に陥ってしまったのであれば、流石に動かなければならないと思い現状を確かめるために、マップ先生を開き暴れている人の状態を見てみることにした。
なんだよ、この状態異常の夢魔って……一種の精神干渉系の状態異常か? よくわからないので物知りな四大精霊に聞いてみた。
この世界の夢魔とは、バクと呼ばれる夢を喰う魔物が人間種の夢を喰うと、喰われた人間種の者につく状態異常とのこと。
今回のフレデリクの街の混乱は、メルビン男爵の部屋に突如沸いたオークの事が発端になっているが、今の混乱の原因は俺のせいではなく夢喰いのバクのせいだとのこと。
厄介なことはこの世界のバクは、スピリチュアル系の魔物でありその存在をほとんど知られていない魔物であり、ダメージを与えることのできる攻撃手段が恐ろしく限定的な厄介な魔物なのである。
スピリチュアル……霊的な存在にダメージを与えるには、その魔物の反対属性の魔法攻撃か付与魔法を行わなければならないらしい。
アンデッド系に属している物なら神聖属性の攻撃、教会などで武器を祝福してもらえばダメージを与えられるのだが、今回のバクに関しての属性は四大精霊も知らないとのことだった。
ん~困ったな。スピリチュアル系の魔物を探すのも大変だし、探せたとしても反対属性を探すのがまた大変だな。そもそも、スピリチュアル系って目に見える存在なのか? 分からない事が多すぎるな。
四大精霊と中庭で話を終えた後、しばらく物思いにふけってるとシェリルが、世界樹の根元にあるダンジョンの入り口から勢いよく飛び出してきた。
「とぅ! 到着!」
実にいい笑顔だ、子供は元気があるのが一番だな。
「あ! ご主人様、こんなところでどうしたの?」
「そうだね、今回のこの街の騒動の一端が分かったんだけど、どうやって対処したもんだかわからなくてね」
「ん~シェリルも一緒に考える! 私にも教えて!」
元気よく宣言してきたシェリルを微笑ましく思った。解決策が出るとは思わないが、人に話すことで考えがまとまるかもしれないな。シェリルを膝の上に乗せて、今回のフレデリクの街で起きている騒動の流れを説明して、今問題になっている魔物の説明をした。
「ん~、ご主人様は、あの変態貴族からシェリルたちを守ってくれたんだ! シェリルはずっとご主人様と一緒がいいの!」
嬉しいことを言ってきたシェリルの頭を撫でてあげると
「えへへ、撫でられちゃった。それで、バクって魔物をどうやって探すか悩んでるんだよね? だったらご主人様がいつも使ってる、ダンジョンマスターのスキルのマップって使えないの? フェンリルを探す時に使ったって話してたと思うんだけど無理なの?」
暴れる人間を調べた時にマップ先生って使ってるじゃん。フェンリルとかも探したのに使ってるじゃん。四大精霊の話を聞いて何となく、目に見えるかわからないから探す方法をどうしようか考えてる時に、マップ先生の存在を失念していた。
シェリルがせっかくくれたヒントを無駄にしないために、シェリルを膝の上に乗せたままマップ先生を操作して、フレデリクの街にいる魔物を表示できるようにポチポチした。
え? 俺の家に四匹も魔物がいる、ってニコ・ハク・ギン・クロの従魔達だった。俺の家以外には……ん? 五匹も魔物の反応があるな。
街の中心、メルビン男爵の屋敷付近に一つと冒険者の多くいるエリアに四匹。何でこの四匹は冒険者に倒されないんだ? 詳しく調べていくと、魔物の状態が○○にテイムされている、表記されていたのだ。
冒険者の従魔のようだったので、それなら討伐対象ではないな。三匹はモフモフ系の魔物のようで、もう一匹は俺達でいうウォーホースみたいなもので馬車を引かせる魔物だった。
ってことは街の中心、変態貴族の屋敷にいるこの魔物の反応が、ビンゴ! バクだ! ステータスの確認をしないとな。
何か突っ込みどころの多いステータスだが、必要な情報は手に入れられた。属性は風らしい、なのでこの世界で反対属性は地になるのだ。武器に地を付与すると衝撃系のダメージ増幅だったよな。鈍器と相性のいい付与だけど、バクにどうダメージ与えるんだろ?
この世界の属性は基本的に反対属性と言うものが存在している。火⇔水、風⇔土、雷⇔氷、光⇔闇と言ったような感じである。魔物のほとんどは無属性に分類されるが中には属性を持っている魔物もそれなりに存在している。
解りやすい物でいえば、スピリチュアル系やゴーレムの様に素材にしたものによって属性がつくのだ。土・岩・鉱石系だと土属性、水なら水属性といったような感じである。他にも、属性とは別に寒い地域にいる魔物は熱に弱かったり苦手な属性も存在している。
「シェリルのおかげで見つけられたよ。ありがとな」
シェリルにお礼を言いながら、頭をワシャワシャ撫でる。
「ご主人様、やめて~髪が乱れるの! でも、お役に立ててうれしい!」
シェリルは口ではやめてと言っているが、実に嬉しそうな笑顔をして喜んでいる。うむ、可愛いな! ロリコンじゃねえぞ!
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