076話 メルビン男爵再び
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冒険者ギルドと半分縁を切ってから二週間が経った。特に何もなく、農園や家畜の世話をしたりレベル上げ用のダンジョンに行ってみたり、新しくダンジョンを作ってみたりしていた。
基本的に家の敷地内ですべてが完結してしまっているが、特に不自由なこともなくむしろノビノビと娘たちは生活していた。時々気まぐれに市場をにぎやかしに行ったりもしている。
一週間前にシングル冒険者のリリスたちが、獣道の森から帰還したことを外出しているときに聞いた。ギルドからの街への報告は、『フェンリルの討伐に成功、討伐後に森の異変を調査するも何もなく魔物の数も減っていた』と大々的に発表されている。
発表された中に、よその街のBランクたちの情報は全くなかった。活躍したのはシングル冒険者とAランクパーティーが中心だったとのこと。討伐で一番活躍したのはシュリなんだけどな、その情報を公表しないのだろう? それとも冒険者ギルドでの一件のせいなのだろうか?
色々なことを考えていたが、四日前にリリス、マーニャ、アントが揃って俺の家を訪ねてきた。家を見た第一声『でかくない?』であった。
リリスたちは、ギルドの発表について不満を持っていたが、世間的な事を考えて今回の発表を受け入れた事を話してくれた。
リリスでもタンクをするのは厳しかったのに、Cランクのシュリがタンクを引き受けて長時間耐えきったというのは、かなり公表し辛い内容だとのこと。シングルも大したことないと思われるし、CランクでもSランクの魔物のタンクができると思われるのは絶対に避けたいのだ。
無謀なことをして死ぬ冒険者が増えるかもしれないし、今回の緊急招集の際にシングルの冒険者に楯突く者が出たりするのを避けたいのだ。
なので仕方がなく今回の発表は受け入れたと、苦しそうな表情で話してくれた。
今回の発表について真相がわかったので特に思う事は無かった。ついでにリリスたちは、預けていた荷物を受け取っていった。Aランクパーティーたちの荷物も一緒に受け取っていってくれた。預かっていた物は、全部なくなったので少し気が楽になった。
二週間位であった変化はこの位だろう。大きな変化もなく平和な日々が続いていた。おっと、一つ忘れていたことが、牧畜用にドモヴォーイを三匹、海エリア用にメロウを三人召喚している。召喚できる精霊を探していたときにやっと発見したのだ。
のんびり過ごしていた昼下がりに、俺の家に来訪者があった。
一緒に獣道の森に行ったAランクパーティーの一チームだった。名前は覚えていないが、間違いなくそのパーティーだった。
「お? シュウじゃないか。今回依頼された奴隷の引き取りってあの娘たちなのか?」
「はぁ? 奴隷はともかくとして引き取りって何の話だよ」
「何の話って言われても、メルビン男爵がこの家の奴隷を買い取ったから、屋敷まで護衛して連れてきてほしいっていう指名依頼を受けたからな。売買書もきちんとここにあるからな」
「そもそも、いくら積まれても売るつもりはない! 娘たちがそれを望むならともかく、俺の意志で売ることなどない! 俺があいつらのこと奴隷扱いしてたか? してないのだろ? お前らはどんな権利があって言ってんだ? お前らのものじゃねえだろ?」
「そんなに怒るなって、でも指名依頼で売買書もあるんだから、連れてかないといけないんだが……話し合いは向こうでお願いしていいか? 連れてかないと俺たちがペナルティーくらうんだわ」
「そっか、娘たちを連れてくっていうのか……じゃぁ、今からお前らは俺の敵だな」
「そうそう、連れて……はぁ? 何で敵になるんだよ」
「簡単な話だ、娘たちがほしいメルビン男爵が何かをして、売買書とやらを作ったんだろう? 法的に効力があるっていうなら、そういう関係者を巻き込んでるわけだよな? 俺は絶対に認めない。国を敵に回しても認めるわけにはいかない。じゃぁ、戦うしかないだろ? なら、お前らは敵じゃん」
「何でそうなるんだよ……売った覚えがないのに何で売買書があるんだ? お前の言ってる通りに不法行為が行われてるのか……でも、ギルドを通した依頼だからな」
「たかが街の中の護衛にAランクって不自然だろ。戦わせるように仕向けてるだろこれ。まぁどうでもいいや、今問題なのはお前たちが俺の敵かそうじゃないかだ」
「敵になるつもりはないが、クエストを意図的に破棄すると高額のペナルティー……これが俺たちを戦わせようとしてるって事か。クエストを邪魔する者を実力で排除しても、問題にしないって特記があったな。そういう事だったのか」
「で、お前たちはどうするんだ? わかってると思うけど、俺たちをランクで判断するなよ。俺一人でもなんとかなるだろうけどな」
「おいおい、冗談はよしてくれよ。全員の相手は流石に無理だが、お前一人なら俺らが負けるわけないだろ? それより、敵になるつもりはないんだ。とりあえず、全員でメルビン男爵の所に来てくれねえか? ここで話しててもどうにもならないんだから」
「よし分かった、お前ら全員敵な。メルビン男爵の指名依頼受けたことを呪え。ガルド・ノーマン・アクア・メイ、周辺に防御結界」
俺は共に戦ったAランクパーティーを敵と認識し戦闘態勢に入った。
「まてまて、なんでそこで戦闘することになるんだよ? メルビン男爵の所にいくだけでいいんだぜ?」
「そもそも、何で俺たちがあいつの所に行かなきゃいけないんだ? 用があるなら連れて来いよ。まぁどうでもいいや、お前らに残されたのはここで死ぬか、男爵の所に帰って報告するかの二つに一つだ。それ以外の返答はすべて戦闘の意志ありとみなす」
「くそが! 何で融通がきかねえんだよ。さすがに俺らも命は惜しい、今集まってきている全員相手に勝てるわけない。俺らは男爵の所にもどる」
「戻るついでに伝言頼むわ。次はないっていったよなって伝えておいてくれ」
四大精霊に指示をして結界を解除させ、若干青い顔をしたAランクパーティーを見送った。
さて、約束を破ったメルビン男爵はどうやって始末するか。直接手を出すのもめんどくさいしな……男爵のいる部屋に魔物召喚して襲わせるか。
うむ、意外に名案なんじゃないか? 突発的な魔物の発生で男爵死亡。不吉な伝言を頼んだが、魔物が勝手に男爵を殺すわけだから、実際は俺が直接的な原因なんだが、俺との関係は一切証明できない。
思い立ったら吉日! 男爵のいる場所を確認する……ちょうどムカつく豚と一緒だったのだ。騎士は一緒にいないようだったので都合がいい。
召喚するのは、豚君も一緒にいるわけでLvを上げたオークにするか。万が一にも騎士たちが駆けつけるまで耐えたら意味がないので、Lvを上げて一気に制圧してもらおう。
ポチっとな。
この世から豚と害虫が合わせて二匹いなくなった。もし召喚が可能だったらホモークを召喚したかったが、召喚リストには出ていなかったのであきらめた。
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