072話 現代兵器登場
1日1話分書くって思ったより大変・・・たった3000字だと思ってた時期がありました。
俺だって小説読みたいもん!
俺やカエデ、リリスの攻撃で何とかダメージを与えられている状況だがじり貧に陥っている。とりあえず、シュリの状態を確認しておかないと、英雄症候群で上がっているパフォーマンスが下がる前に手を打たないと。
「リリス、しばらくでいいからタンクをシュリと代わってくれ。シュリは、強いけど燃費が悪いから様子を確認させてくれ」
「分かったわ、ふぅ……こっち向きなさいフェンリル!」
リリスの挑発スキルに乗った殺気に反応して、すぐにターゲットが変わった。シングル冒険者のスキルって威力が上がるのか?
シュリがしっかりとヘイトを稼いでいたのにすぐにタゲが変わるとは、それともリリスがダメージコントロールしてヘイトをとらないようにしていた? 今はどっちでもいいか、シュリの状態が気になるんだ。
シュリの動きが少しずつ悪くなってきたので状態を確認すると、空腹(初期)となっていたのだ。ステータスにもマイナス補正がついていたので、かなり焦った。
フェンリルが迫ってきていることが分かってから食事をとらせたのだが、全然足りなかったようだ。戦闘となると使うエネルギーも普段の数倍は増えるのだろう。
こういうときの為に、高カロリーの保存食もシルキーたちに作らせておいてよかった。
「シュリ、どうやら食事が足りてないようだ。戦闘で大量にエネルギーを消費したみたいだから作ってもらったアレを食べろ。飲み物も準備してくれてるから一緒に取るんだ。
甘ったるい飲み物かもしれないけどしっかりと補給はしてくれ、大変な役目だけどお前が崩れるとおそらくみんな死ぬ可能性が高くなる。代わってやれるなら代わってやりたいが、タンクは練習して無かったから代わってやれない……すまん」
「モグモグ……いいえ、私の存在意義は盾としてご主人様の安全を守ることです。痛い苦しいなんて、ご主人様の安全を確保できるのであれば塵に等しい感情です。大食らいの私なんかの為に色々して下さったご主人様にやっとできた恩返しなんです。
私の身が朽ちようとも守り切ってみせます。では、行ってまいります。リリス様お待たせしました、タンクを代わります。こっちへきなさい!」
シュリの思いが重いが今はそれで本当に助かっているのだ、甘んじて受け入れよう。俺はシュリが抑えてくれている間に打開策を考えなくては。
『GUROOOOOOOOO』
初めに行った雄叫びとは全く異質の咆哮がフェンリルから放たれた。大音量による感覚の混乱、王者の雰囲気を醸し出した威圧、咆哮の物理的な衝撃波。タンクをしていたシュリは支援魔法による保護があり何とか防ぎ切ったが、それ以外のメンバーはシングルの冒険者を含めみんな一時体が硬直してしまった。
フェンリルは、その隙を見逃すほど甘くなかった。
フェンリルはこの時、一番厄介な人物に痛手を負わそうとして地雷を踏み抜いてしまった。
シュリの攻撃ではダメージはくらわないのは分かっており、挑発によって上がっていたヘイトをさっきの咆哮でキャンセルして、隙だらけの俺に向かって攻撃を仕掛けようとしていたのだ。
やばい……俺死ぬんじゃね? 咆哮のせいでまともな防御態勢も取れる状況ではないのだ。当たり所が悪ければ即死、よくても瀕死どちらにしても危険だという事だ。だけど、体が動かずに何もできないのだ。
もう目の前にフェンリルがいる……時間が細切れになったように鮮明に状況が見えている。音は聞こえなくなった。
噛みついて一気に息の根を止めるようだ……
瀕死はなくなった……噛みつかれればおそらく助からない……
みんな、俺がいなくなっても幸せに生きてほしいな……
来る苦痛の瞬間を見たくなかったため、目を閉じる……
・・・・・・・
・・・・・・
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痛みが来ない、恐る恐る目をあけると目の前にシュリがいて、全身に電気がほとばしっていた。フェンリルは十メートル程離れたところにいた。
状況を考えると、おそらく全身に雷付与をしてフェンリルより早く動き俺とフェンリルの間に入り、吹き飛ばした、もしくは退かせたのだろう。
「ご主人様に手を出すなぁあああああ!!!!」
シュリが咆哮を上げた。先ほどのフェンリルと同質の咆哮の様だ。まともに受けたフェンリルは一瞬下がるがすぐに、雄叫びで応えた。
いくら雷付与を全身にしていても、圧倒的にフェンリルが有利なのは変わらないし、付与の時間が長引けば魔力が切れてしまう。不利な状況は一切変わっていない、殺意のこもった咆哮の後の絶望が少しいい方向に向いただけだ。
くそ……フェンリルの咆哮で耳にダメージが入ってしまったようだ、キンキンと耳鳴りがしている。バカでかい声をだしやがって……
ん? バカでかい音か、確か軍事オタクが強い光と大音量で、相手を行動不能にさせる爆弾があるって言ってたな。段ボールマニアのゲームにもそういった爆弾あったな、確か、スタングレネードだったはず、効果があるかわからないが召喚リストに確かあった。
【M84スタングレネード】
あった、二本召喚して収納の腕輪にしまっておく。後は使うタイミングだろう。効いたとして一回だけだろう、二回目は無い。慎重に作戦を練らなくてはいけない。
「カエデ、今打開策を思いついた。大音量と強い光で相手をひるませる武器があるんだ。おそらく目も耳も使えなくなるから、その隙にピースを足に打ち込む予定だ。だから、合図したら耳を塞いで目を閉じてほしい。全方向に影響が出るから使いにくい武器だけど、決まれば効果は絶大だと思う」
「確かに、今さっきの咆哮で耳がしばらくやられて何も聞こえなかったね。強い光で目が見えなければ何とかなる? だけど相手はフェンリ、鼻でも敵の位置わかるんじゃない? 蛇とかみたいに特殊な器官はないと思うけど」
「鼻か、確かに狼だとすれば鼻もいいはずだな、催涙弾みたいなのだと攻撃できなくなるから、狼は分からんが確か犬は、アルコールや柑橘系のにおいが嫌いだったような? 強いにおいが苦手なら、アンモニアでもいいのか?」
アンモニアを瓶で召喚した。アルコールだとスタングレネードで燃える可能性があるし、柑橘系だと効果が薄そうなイメージなので、刺激臭のするアンモニアに決めた。
「おそらくフェンリルの鼻はこれで何とかなる。魔力で動きを感知されるなら今の状態じゃどうにもできないな、とりあえずやるだけやってみよう。娘たちは俺が指示すれば何も疑わずに目や耳を閉じるだろうけど、シングルやAランクの人たちにどう説明するか」
「説明しなくてもいいんじゃない? どうせ信用してもらえないし、一応注意は飛ばして従わなかったら自分の責任ってことでいい。パーティーの隠し技を見せるって形だから、信用しきれなかった自分たちが悪いってね」
「時間がかかりすぎてもっと不利になる前にやらないといけないからな。とりあえず準備ができたら開始しよう。ピーチ、キリエ、シュリに防音と光遮断の効果のある魔法をありったけかけてくれ、多少でも効果があれば違うからよろしく」
「「了解です」」
シュリの準備が整ったところで、
「みんな、奥の手を出す。合図をしたら目と耳を閉じろ。魔導具で大音量と強い光をだす。直接見るなよ、一時的にでも目が見えなくなるぞ。シュリは、カウント終わりに防御態勢! 3・2・1、閉じろ!」
カウントをして、スタングレネードを二本投げる。
娘たちとシングル三人は、俺の忠告を聞き目と耳を閉じたようだった。
キーーーーンッ!
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