071話 ジリ貧
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フェンリルの雄叫びを聞いてシングルの三人以外は、少しの間体がすくんでしまった。その間にシングルの三人はすくんでしまった俺たちの為に前に出ていた。
リーダーのリリスは本来タンクではないが、とびぬけたレベルと戦闘の経験を活かしてヘイトをしっかり稼いでから戦いやすい距離を探しているようだ。
マーニャからの支援が加わりフェンリルの攻撃を何とかかわしていた。持久力の差が出てからでは立て直せない為、アントはバインド系や移動阻害系の魔法をあたりにばらまいていた。
何でそんなことが分かったかといえば、アントが魔法を使う前に大きな声でばらまくことを宣言していたからだ。魔法のバインド系や阻害系は基本的に敵味方を識別して範囲に入っても敵にしか、かからない仕組みになっている、謎仕様だ。
フェンリルの魔法耐性が高い為か、デバフの魔法のかかりが悪い上に、かかってもほとんど効果をなしていないようだった。アントの攻撃魔法もあまりダメージを与えているようには見えず、リリスの攻撃で傷も負っていないようだった。
さすがにタンクがメインじゃない人間がタンクをしながら、ダメージディーラーになるのは難しいのだろう。いったんシュリにタンクを代わってもらい、ダメージを稼ぐ方法を検討しなくてはいけないだろう。
「シュリにありったけの支援を開始しろ。ヒーラーの二人は全員に速度上昇系と防御力上昇系の魔法をかけたらシュリを全力で支援しろ。シュリ、痛い役目を押し付けてしまってすまないが、どのくらいやれそうか試してくれ」
「ご主人様の為です。喜んで壁となります。皆さんフォローお願い致します。ご主人様の糧となりなさい犬ッコロ!!!」
おぉ……挑発スキルに口の悪い言葉を乗せたな。
リリスがマーニャにシュリの支援をするように指示を出してから、俺の方まで一気に下がってくる。
「シュウ、助かった。タンクをしながらではどうにも攻撃がうまくできなかった。ダメージを与えられる方法を検討しようにも、タンクをしながらではな。あの娘はどのくらい耐えれそうだ?」
「おそらく耐えるだけなら、支援さえあれば持久力の続く限りか、気持ちが折れない限りはいけると考えています。支援なしではそう長くは持たないでしょう」
「私も支援なしじゃそんな長く持たないから、タンクがメインだとさすがにタフなんだな。壁をしてもらってる間にスキをついて、ダメージが通りそうな攻撃を重ねていこう。
効きやすい部位が分かるといいのだが、この際贅沢は言ってられないな。Aランクのパーティーに鈍器使いが合わせて三人いるから、打撃はそっちに任せよう。刺突系は私とAランクにパーティーに一人だからあなたたちで何とかなるかな?」
「弓が二人いるから、可能なら付与魔法で相性を調べてもらおう。うちは斬撃系には困ってないから、色々試させてもらうよ。本命はカエデの刀だけどな、頼むぞ」
簡単な打ち合わせを終えた後、各人準備に入る。
シュリの挑発に合わせて、弓を構えたメアリーとマリアが矢に付与術をかけはなっている。ここら辺の連携は問題なくこなしており、付与術の矢が当たった後にフェンリルの気がそちら側に向く。
その瞬間を見計らって今度は、リリーが片手剣の【ソニックリープ】突進スキルを使って攻撃をしてすぐに離脱している。他にヘイトが移る前にシュリが盾スキルなどを使いしっかりとヘイトコントロールしている。
付与魔法をした矢の効き目は、風付与が一番深いダメージになっていた。弓との相性がいいためか、小さいがしっかりとダメージになっているようだった。深いダメージとはいっても鏃の先が刺さったくらいのものなのだが……
武器との相性の高い付与であれば娘たちでも、ダメージを稼げることが分かった。だが反対に、付与がなければスキルを使っても、おそらくほとんどダメージが与えられないということだ。
鈍器系を使っているAランク冒険者たちは、支援をもらってもフェンリルの速さについていけず、突進系のスキルも鈍器にはない為、攻撃自体出来ない状態だった。
リリスの攻撃はフェンリルをイラつかせるには十分なダメージを与えており、シュリのヘイトコントロールをたまに上回ってしまいタゲが飛ぶことがあったが、さすがシングルというべきかシュリがタゲを取り返すまで上手く動いてくれている。
こっちが優勢に見えるが、フェンリルのスキルや魔法の余波を受けて、シュリ以外の討伐メンバーにもダメージが通っているため、今の状態ではじり貧になってしまうだろう。
予想よりフェンリルの与えるダメージが高く、支援をもらっているシュリにもダメージが蓄積されつつあった。
どこかで流れを変えないと、何もできないまま全滅の可能性も高くなってきている。フェンリルをイラつかせることができるダメージを与えても、あれくらいのダメージならそのうち回復してしまうだろう。
うちのメンバーもシュリの挑発等に合わせて攻撃をしているが、まともにダメージを与えられているのは、カエデと俺だけだった。他の娘たちは、付与を使っても気持ちばかりのダメージしか与えられてい。おそらく武器の性能のせいだろう。
カエデのは、自分で丹精込めて鍛造した迷刀【霞】で、俺のもカエデが俺に合わせて何度か調整を重ねてくれた薙刀なのだ。娘たちが持っている数打ちの量産品とは違うのだ。
ダメージが与えられないと判断した娘たちにシュウは、下がって周囲の警戒に当たらせることにした。おそらくフェンリルの雄叫びを聞いてほとんどの魔物はここから離れたと思うが、邪魔が入って今の状態が崩れるのは非常にまずいのだ。
時々シュリの負担を減らそうと、Aランクのタンクたちがヘイトを稼いでタゲを奪っているが、よくて三分程しか耐えれて無かったのだ。
その点シュリは、戦闘が始まってから一時間が経過しており、その間に五十分以上タゲをとっているのだ。英雄症候群があるとはいえ、燃費の良くない体なのだ。どこかでしっかりと補給できるタイミングをつくらなくては。
俺の攻撃は一応通るのだが、フェンリルが早すぎて雷付与以外で攻撃をあてられないという現実が。おそらく、風付与の突きや火付与の斬撃ならもっとダメージ出るはずなのだが、あてれないんじゃ意味がない!
攻撃を加えながらインターバル中に、何か打開できるスキルが無いかスキル宝珠リストを流し読みしていく。二十分かけて何回か読んだが起死回生になるようなスキルは見つけられなかった。
ただふと思い出した漫画で、右手に火魔法、左手に氷魔法をだして合わせて新しい魔法をうった、ポンコツ魔法使い改め大魔導士の少年を思い出した。
誰が一つしか魔法やスキルを使えないと言った? 俺が勘違いしてただけだろ! やってできない事はないはずだ。体に雷魔法を付与して武器の薙刀に風魔法を付与すればいいだけだ……集中……集中……体に雷魔法を付与してからしばらくして、武器に風魔法が付与された!
よし! いける! と思った瞬間に付与が強制解除されてしまった。二属性付与はやってできないことはないが、修練や特訓、慣れが必要だろう。今すぐに使いこなすことはおそらくできない。
一番現実的なのは、フェンリルに届くであろう武器の召喚だ。
話の通りであれば、蜻蛉切など日本や世界の伝説に出てきている武器であれば、ダメージを与えられるはずなのだ。DP的には問題ないが武器に頼るやり方なら、まずは試作したピースをつかってからだろう。
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