686話 面倒な奴ばっか
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行動を開始するために、全員がバッハかワイバーンに乗った。
「じゃぁみんな、リブロフの防衛は任せたよ。バッハのスピードなら、王都で面倒な事に巻き込まれなければ、間に合うと思うから、また後でな」
「ご主人様、それってフラグじゃないの?」
後ろに引っ付いていたイリアから、ツッコミが入る……
「ウグッ。自分でフラグを立ててしまったか、まぁいい。みんなに任せるんだから、リブロフは問題ないさ。こっちも四人もついてきてもらってるし、バッハがいるから大抵のことは大丈夫だろう。じゃぁ、みんなリブロフでね」
バッハと五匹のワイバーンが、ディストピアの空を駆け抜けていった。
ディストピアの住人は、またバッハとワイバーンが何かをするのだろうか? と考えていたが、考えても意味がないことを思い出し、日常生活に戻っていった。順応性の高い人材ばかり集まったようだ。
「バッハ、高度はこんなもんでいいから、お前はこの方角に向かって全力で飛んでくれ。ミリー、ワイバーンの指示は任せたぞ!」
前半は頭をペチペチ叩きながらバッハに、後半は魔導無線を使ってミリーに伝える。
「高度が高いから、どの位のスピードが出てるか、いまいちわかんないな」
バッハの頭の上から地上を見てみるが、家ですら豆粒より小さく見えるので、どれくらいの速度なのかピンとこない。ここで風が当たっているのなら、そのスピードを体感できただろう……
バッハは、ウォーホースのような高速移動をする魔物と同じように、風を操って風の流れを抑えることができるため、俺たちにはそよ風くらいしか感じられない。
変わらない景色に飽きてしまったので、バッハの頭の上に乗っている俺たちは、各々本を読んだりゲームを始めたりしていた。三時間経つ頃には王都目前まで来ていたので、ウォーホースたちの数倍は早く進んでいたようだ。
「もうすぐで王都だけど、その前に腹ごしらえをして、国王に会いに行こうか」
イリアが持っていた収納のカバンから、シルキー特性の軽食セットを取り出してもらい、みんなでパクつく。そのにおいを嗅いでいたバッハが、自分も自分もとアピールするので、王城の広間に付いたらなと声をかける。
さすが一国のトップの城という事で、広い空間が設けられているので、体長が三十メートルを超えているバッハでも、余裕で降りる事が出来る。問題はバッハが食べれるようなサイズの食事は、準備していなかったので、DPで大きな料理……丸焼き系を色々召喚してカバンに詰め込んでいく。
さすがに王城でDPを使い、召喚する姿は見せたくないので、収納のカバンにしまってから出すことにした。
食事も終わり、バッハに降りる場所を指示する。
バッハが王城に近付くと、パニックを起こしているのが目に見えてわかったが、今回の事は謝るつもりはないので放置して突っ込ませる。
バッハが着地をすると、頭を下げて俺たちが降りやすいように配慮してくれているので、そこから降りていく。
「止まれ! 何者だ!」
「俺の名前はシュウだ。国王に用事があって文字の通り飛んできた。これが国王から渡された通行書みたいなもんだ。確認してこい」
「貴様! ここがどこだかわかってるのか? 王城だぞ! それなのにその態度はなんだ!」
「お前と問答するつもりはない、早く上役でいいから連れてこいって」
「貴様の様な奴等みたいに危険を、王の所に近付けさせるわけないだろ!」
危険に近付けたくないのはわかるが……どうしたもんだか?
「そこの兵士! 死にたくなければ、その方たちをお通ししろ!」
「ん? 何か見覚えがある顔だけど……何処であったっけな? リーファスとフレデリクの戦争の時に、後始末に来てくれた、深紅の騎士団だっけ? その中にいた顔か?」
「私の様な木端な存在も、覚えてくれていたんですね。ありがとうございます。国家反逆罪になったと聞いた時は、話しをしておくべきかと勝手に思っていましたが、濡れ衣だと知った時は、顔から火が出る位恥ずかしい思いをしましたよ。おっと失礼しました。
おそらくリブロフの件でお見えになったと思いますので、そのまま国王へお会いになっていただければと思います。案内しますね」
初めに対応していた兵士がギャーギャー言っているが、一緒に来ていた騎士団の仲間に羽交い絞めにされ、何処かへ連れてかれていた。
ギャーギャー言っていた内容については、おそらく貴族出身の兵士だと思われるような発言があったので、平民などから成りあがった深紅の騎士団のメンバーを、蔑んでいるのだろうと判断できた。
「この広場はバッハ……この黒龍に使わせるけどかまわないよな?」
「もちろんです。お前たち、馬鹿な真似をする人間がいないか、この広場を見張っておけ」
後から駆け付けた、同じ鎧をつけた騎士たちに向かって命令を出している。同じ深紅の騎士団の面々なのだろう。
「バッハ、不届き者がいたらブレスを使ってもいいぞ」
「シュウ様!」
「何か問題でも? 騎士団のメンバーが、俺の騎龍にちょっかいかけさせなければ、問題ないだろ? バッハを暴れさせないためにも、しっかりと見張っておいてくれ。っとそうだバッハ、さっきあげると言ってた飯だ。いっぱい準備したから食べて待っててくれ」
先程召喚してしまっておいた、丸焼き系の料理を次々と出していく。満足そうに一鳴きするとかみしめるように食事を始めた。
「すまんな、待たせた。俺が訪問した理由もわかってるみたいだから、さっさと国王の所へ行こうか」
「今、ご案内いたします」
案内されるがままに王城の中進んでいく。十分位歩いてやっと国王がいると思われる部屋の近くまで来たが、何やらトラブルの様だ。目指している部屋か、その付近で怒鳴り声が聞こえている。
内容は、扉を叩きながら『私との面会以上に大切な事とはなんだ! 一週間も待った上に追い出されるのに、理由も教えていただけないのは何故だ!』みたいな事を叫んでいる。
俺が来たせいで、面会の時間が削られた貴族だろうか? 俺のせいかもしれないが、元をただせば王国が悪いんだから、俺には関係ない。それより、あれは国王に逆らって、不敬罪とかにならないのだろうか?
「ダールトン侯爵様、すいませんがお通しください」
「貴様は……平民風情が国王に何の用だ?」
「国王に言われた客人、国賓の方々をお連れしています」
「貴様らのせいか……」
睨みをきかせた後、隣にいた護衛の騎士の剣を抜いて、切りかかって来た。俺が動こうとする前に、リリーが俺の前で盾をかまえていた。だが、リリーに剣が届く前に、俺たちを案内していた深紅の騎士が剣をはじいていた。
「国王に会いに来て、武器を持っているなど不敬だろ! 侯爵である私に剣を向けるとは、その罪万死に値する。お前らこいつらを捕えよ」
近くにいた、残りの護衛の騎士たちが俺たちを取り囲んだ。
ろくでもない貴族だな。なんてどうでもいいことを考えながら、どう対応するか悩んでいた。
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