685話 フェピー的緊急事態
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いつものように朝ストレッチをして、朝食を食べた後に少し休んだら、一時間程スキルリンクの訓練を行い、汗を流しにシャワールームに向かおうとしていると、グリエルからの伝言だという事で、秘書が慌てて俺の家に駆け込んできた。
今すぐという事だったので、ウォーホースを表に呼んで街の中心地まで爆走していく。
慌てて来たわりには、グリエルの執務室にいた、グリエル・ガリア・ゼニスの様子は落ち着いている。
「今すぐにって呼ばれてきたんだけど、あんまり慌てていないのは気のせいか?」
俺がそう聞くと、グリエルが答えてくれた。
「状況的には切迫? といっていいのでしょう……ですが、シュウ様が動いてくれるのであれば、すべてがひっくり返るので、そこまで悲観はしていません」
「ん? 悲観する程の、何かが起こってるのか?」
「ディストピアではないんですが、中立都市のジャルジャンから至急の連絡があり、王国がリブロフに向けて軍を出しているとの事です」
「はぁ? 何で今更王国がリブロフに軍を向けるんだ?」
「シュウ様はお忘れかもしれませんが、一ヶ月ほど前にゴーストタウンに来た勇者たちは、王国が召喚した勇者ですよ」
「すっかり忘れてたわ。というか中立都市に手を出すって事は、俺たちが出張ってくるのもわかってるのに、何でわざわざ攻めてくるんだ?」
「国王としては、おそらく攻めたくはないでしょうが、貴族という物は面子を気にする生き物です。それにシュウ様の実力を知らない貴族がほとんどですから、抑えきれなかったのではないでしょうか?」
「よくわからないけど、ジャルジャン……フェピーから連絡があったのは、援軍要請?」
「そうですね。ジャルジャンの戦力では厳しい数の戦力がきているようです」
「そっか……バッハとワイバーンを連れて行ってくるか?」
グリエルとガリアは、引きつった顔をしているが、ゼニスは
「それはいいですね。ディストピアというよりは、この樹海の頂点だと思われる黒龍のバッハを従えたとなれば、ちょっかいも減ると思いますよ」
「ゼニスの言ってることはもっともなんだが……あの黒龍、バッハを使うのか? 正直支配下に置かれてると分かっていても、飛んでるのを見ると私は怖いのだが……」
「ガリアもか、私も頭でわかってても体が言う事を聞かん」
「そんなもんか? 俺のドッペルと……戦闘に耐えられるワイバーンは、何匹いるっけな? 五匹はいるから、ドッペル六体とバッハとワイバーン五匹を連れて行ってくるか。ジャルジャンに寄らないといけないとなると、どうするべきだ?」
「フェピー様には、こちらから連絡しておきますよ。そのまま王国の領土に入るのは拙いので、リブロフと王国の境界線位で待機してもらえれば大丈夫かと。もしかしたらもう中立地帯に、入ってるかもしれませんね」
「ん? マップ先生で確認してないのか?」
グリエルの執務室に沈黙が流れる。俺は無言のままマップ先生を起動する。
「名目上、侵略軍と呼んでおくが、ちょっと調べた所、中央に近い貴族たちの街の騎士団が、複数集まっているようだな。そろそろ中立地帯に入るっぽい。
気になるのが、王族の関係者や王都の騎士団は、いないみたいだな。これを見る限り貴族たちの独断だと思うけど……先に国王に会いに行くか。このスピードなら、どの位でリブロフにつくと思う?」
「軍事は専門ではないので、正確にはわかりませんが、明日には到着するのではないでしょうか?」
「至急って事だからそんなもんか。ってか、ジャルジャンの兵士たちがリブロフに間に合わないから、俺に援軍を頼んだって事か。ガリア、ミリーに伝言。全員を至急家に集めてくれって伝えてくれ。対応は、バッハに乗って俺が国王に会ってくる。
向こうさんの意向を確認して、対処を決めてくるわ。ワイバーン五匹は、リブロフの防衛のために向かってもらう。一応グリエルは、ヴローツマインの竜騎士にも、出動するように命令してくれ。何かあったら連絡するから、魔導通信室には誰かに詰めておいてもらってくれ。ちょっと行ってくる」
グリエルの執務室を後にした。
「シュウ様、ちょっと買い物行ってくるわ……みたいなノリで、行かれましたね。それが出来てしまうので、何の違和感を感じない自分が恐ろしい」
グリエルが改めてシュウの規格外を認識した。シュウには一生分からない事だろう。
何か面白そうと、ウォーホースと競うように走ってきて、一緒に休んでいたダマにバッハへの伝言を頼む。俺はウォーホースに乗って移動をしようとしたら、ミリーが待ってと声をかけてきたので、一緒に乗って家に戻る。
家の近くで仕事をしていたメンバーが六人程いて、それらの次に俺は戻って来たようだ。マップ先生で確認すれば、みんな急いで戻ってきているのが分かるので、後二十分もしないうちに全員集まるだろう。
食堂で、ブラウニーに飲み物を準備してもらい、ゆっくりしていると全員が集まった。
「急に集まってもらってごめんね。簡単に状況を説明すると、中立地域のリブロフ、ジャルジャンの衛星都市みたいなところな。あそこに王国軍が攻めてきている。王国軍とは呼んでるけど、貴族たちの寄せ集めだな。
リブロフまで後一日の距離みたいで、リブロフの守りにミリーのワイバーン五匹と、みんなのドッペルに行ってもらおうと考えてる。俺はバッハに乗って、国王の所に行って話をしてくるつもりだから、三人くらいは俺と一緒に来てほしい」
妻たちが五分程話し合った結果、リブロフで指揮を執るピーチとシュリ、アリスは候補から外れ、ワイバーンが行くという事でミリーも外れる。回復要因としてキリエ、盾としてリリー、攻撃要因としてケイティ、魔法使いとしてイリアがついてくることになった。
シェリルとネルも納得しているようで、ずるい! とか言っていない。何か成長を感じるな。昔だったら絶対に、ずるいって言ってただろうからな。
シュリのポジションを任されたリリーは、かなり緊張している様子が伺えたので、気楽に行こうと声をかける。守る事だけを考えれば問題ないからな。
準備が済んだ所に、バッハたちがやって来た。
「ニコとハク以外は、向こうについてってくれ、ダマ、しっかりとまとめるんだぞ」
近くの空き地に降りてもらい、各々乗り込んでいく。俺の従魔たちは誰に似たのか、緊急時じゃないと適当で困るが、緊急時にはしっかりと命令に従ってくれるから優秀ではある……頑張れダマ!
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