680話 終結
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黒龍が溜めてから吐き出した、雷属性のブレスが被弾したワイバーンが、力なく地上に向けて落下している。見た感じ死んではいないが、かなりのダメージを負っているようだった。
「あいつ、大丈夫か?」
自然と声が出てしまった。それにしてもドラゴンのブレスと、ワイバーンのブレスって、ここまで威力が違うのだろうか? ミリーが大きな声で魔導通信機に向かって『起きろ!!』と怒鳴っていた。それを聞いた被弾したワイバーンは、意識を取り戻したのか、身体を反転させて羽ばたきだした。
「ダメージのせいか、動きがぎこちないな。ミリー、あいつを近くに呼べるか? ピーチたちに回復してもらおう。ついでにバフもかけておきたいから、ライラも一緒に行ってくれ。防御は雷属性でよろしく。あのブレスがどれだけ吐けるか分からないけど、念には念を入れておこう」
本当はあまり手伝わずに、黒龍に勝ってもらいたかったが、予想以上にLv以外の差が大きくでてしまい、これ以上放置していたら、もしかしたらワイバーンの内の、何匹かが死ぬかもしれないと思い方針を変更した。
被弾したワイバーンが回復してもらい、バフも受けて戦場に戻っていく。傷を負ったばかりの兵を回復させて、そのまま戦場に送り出す……鬼畜の所業だな。
五匹目のワイバーンが戦場に、戻ると一声ギャア! と鳴く。一匹が降りてきて、バフをかけてもらっている。五匹が全員バフをかけてもらうと、戦場の空気が変わった。バフの分だけ動きが良くなっていて、ダメージも少し増えている。黒龍が鬱陶しく感じており、鳴く声に怒りがこもっているような印象の声だ。
ワイバーンたちが、黒龍の対応に慣れてきたのか、距離がドンドン近くなってきていた。数の利を上手く活かして、死角からの攻撃を仕掛けている。初めはスキルを使わずに、攻撃できる範囲で無理なく攻撃している。
今度はその攻撃に合わせて、他のワイバーンから魔法やブレスが、追加攻撃で入りダメージが蓄積しているのが分かる。
黒龍が少し距離を取り、息を吸い込み溜める仕草が見られたため、全員が一気にその場から離脱した。雷属性のブレスだけはコーン状に広がるのが分かっているので、回避ができないのならダメージを減らす努力をしようという事らしい。まぁミリーの指示だから従魔のワイバーンは従うよな。
前回より溜めの時間が短い、雷属性のブレスを吐きだした。
「前より威力が低い気がするけど、気のせいか?」
俺の質問にみんなが低いと思うと頷いていた。やっぱり弱いか。溜めが短い分ダメージが減るのは、よくわかるな。じゃぁ、もっともっと溜めれば、強いブレスが吐けるのか? 上限はあるだろうけど、強くなると考えられる。スキルか何かだろうか? ドラゴンの固有の特技みたいなものか?
黒龍とワイバーンたちの戦闘も、終盤だろうか? 回復とバフのおかげで、ワイバーンたちの動きは全然衰えず、黒龍は体力も減るしダメージも蓄積されているため、動きが悪くなっている。
黒龍の動きが悪くなればなるほど、ワイバーンたちの攻撃が苛烈になっていく。スキルを織り交ぜダメージが跳ね上がっていく。
「おーおー、あの黒龍って本当に強いな。あれだけダメージを受けているのに、まだ落ちないって本当にタフだな。ステータスに現れない数値の差なのかね? 人間だったらレベル六〇〇超えてても、Lv四〇〇を超えているワイバーンに、あれだけ攻撃くらえば二、三回は死ねるだろうな。
それに、ワイバーンの尻尾の針に、何度もさされて動けなくならないって、どういう事なんだろうな? 魔物には効果が薄い? ドラゴンだから?」
原因は分からないが、一対一だったらワイバーンでは勝てなかっただろうな。そういえばハクを一緒に戦わせようと思ってたけど、そのハクは……ダマの背中で、丸くなって寝てやがる。ついでにニコもハクの上で寝ている。こいつらに戦う気は全くなかったな。
黒龍が動きの精彩さが無くなり、ワイバーンたちに捕まり地面に叩きつけられた。
「どうやら抵抗の意思が、無くなったようですね。行きましょうか?」
ミリーの案内で黒龍の落ちた場所に向かっていく。到着したが暴れている様子は見られない。
「観念したのかな? ワイバーンたちに捕えておくように、言っておいてくれ」
近付こうとすると、俺の前に自然とシュリが俺の前に立ち、俺の後ろにピーチとライムがついている。隷属魔法をする時には、頭に手を置いた方がいいと聞いたので、黒龍の頭に向かって移動する。
頭に手を置こうとする前に、シュリがチェインとは違い、実物の鎖を取り出して口が開かないように、ぐるぐる巻きにしてから物理法則を無視して引っ張り、頭を地面にこすりつけさせる。
「ちょっとかわいそうな気もするけど、俺の支配下にはいるなら生きる事を許してやる! 隷属魔法を受け入れろ! これで受け入れない場合は首を刎ねる」
ドラゴンは総じて頭がいいため、言葉はわからなくても、意図は通じるようなので便利だ。俺の声を聴いたワイバーンも、ギャアギャア鳴いて黒龍に言い聞かせるようなトーンだ。
俺の被害妄想じゃなければ、ワイバーンたちは俺の事を『この方に大人しく従わなければ、死あるのみ! 慈悲は無い! だから大人しく受け入れてくれ』って言ってる気がする。
必死になって鳴いているワイバーンの声を聞いてなのか、力の入っていた頭から力が抜けた。どうやらこっちの事を受け入れたようだ。抵抗はしないのだろう。頭に手を付けて隷属魔法を使い支配下に置く。
「どうやら支配下にはいってくれたようだな。きちんと住みやすい場所も、用意してやるから暴れるなよ。まずは、これを飲め」
俺は、Dランクのエリクサーが入っているバケツを、黒龍の口に投げ込む。飲んだ音が聞こえしばらくすると、元気いっぱいになった黒龍が俺の前で頭を下げた。
そこにいつの間にか近寄って来たダマが、頭の上に手を乗せている。やっと後輩ができて嬉しいのか? でもその態度は良くないと思うぞ! そういえば、従魔の序列って何かあるのかな? 今度確認してみるか。
黒龍は不本意ながらも、ダマの後輩扱いを受け入れた。多分勘違いしてるだろうけど本気で戦えば、ダマの方がおそらく強い。こいつ知らない間にダンジョンにもぐって、自分でレベリングしてるんだから、強くもなるわな。
格としても神獣なので、ドラゴンに見劣りするものではないだろう。何より自分の身体をある程度デカくできるため、問題は無いと思われる。
「さて、俺の支配下に入った事だし、名前を付けてやらないとな。カッコいい名前がいいな。見た目がF〇シリーズのバハムートに似てるから、バハムートにするか」
そんなノリで言うと、黒龍がキュイン! と鳴いた。気に入ってくれたようだ。頭を撫でてたダマが鳴いた際に、急に動かした頭に吹き飛ばされたため、走って戻ってきて猛抗議をしているが、蹴飛ばして黙らせた。何で俺だけ! みたいな顔するな。そして空気を読め!
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