673話 短い平穏
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食事も終わらせ商会にたどり着き、ディストピアに帰る事にした。もちろんドッペルのまま移動なんて事はせずに、専用魔導列車に乗り込ませてから、憑依をといて自分の身体に戻ってくる。
手に入れた情報をグリエルに伝えるために、行政府の執務室へ向かう。途中で三人とは別れて、単独行動(監視役でニコ・ハク・ギン・クロがいるが)になる。シェリル・イリア・ネルの三人は、何が楽しいか分からないが、いつも楽しそうで頬が緩むな。
執務室に入ると難しい顔をした、グリエルとガリアがいた。とりあえず、得てきた情報をかいつまんで話していく。
「……というわけだ。俺が思うに、勇者たち二人はどちらかというと、平和主義って言うのはおかしいが、暴力や相手を威圧するように、力を無意味に使うタイプの人間ではないと思う。問題なのは、勇者のパーティーメンバーの現地人……この世界の人間の方だと思うな。
何というか、好戦的? 傲慢系? トラブルの臭いがする感じだ。あいつらがどういう思想の持主か分からないけど、勇者たちからの目が届かない所では、何をするか分からないな。ゴーストタウンに来たら、絶対に講習は受けさせろ」
勇者のパーティーでもトラブルを起こせば処罰対象だし、犯罪は犯罪なので罰せられることは、しっかりと理解して頂きたいところだ。貴族だって処刑しているこの街で、勇者の称号なんて何の役に立たない事を、理解してもらいたいところだ。
遭遇した勇者たちの印象を軽く伝えてから、行政府を後にする。
三日後に勇者たちがジャルジャンの街を出発して、地下通路に入ったとの事だ。馬車に乗っているようで移動速度は、およそ時速二十キロメートル程だ。勇者の馬車かな? そんなのはどうでもいいか。明日には到着するだろうから、警備を厳重にするようにゴーストタウンに指令を出している。
次の日の夜にゴーストタウンに勇者一行が到着した。最後の説明の時間に間に合った……というか、勇者たちのために、本日だけ臨時で説明の回数を増やしたのだ。三十分位の講習なので、真剣に受けてもらいたいものだ。
講習が終わったようで、移動を始めた。どのランクの宿に泊まるのだろうか? みんなで泊まれる、大きな部屋があるタイプなのか、四人で泊まれる部屋を複数借りるのだろうか? どこにしても、ゴーストタウンはダンジョンの中だから、ダンマスのスキルでマップ先生から映像を見れる。
入る宿だけ確認してから後は、スプリガンのみんなに監視は任せようかな。街の案内所で情報を聞いたのか、迷いのないスピードで進んでいく。到着したのはゴーストタウンでは、Cランクの稼ぎの良いパーティーからBランク当たりのパーティーが、よく利用する宿だ。
Aランクのパーティーに、勇者がいるのに予想より安い宿に泊まるんだな……と思ったが、ゴーストタウンで、どれだけ稼げるか分からないのであれば、少しは節約するのが普通か?
スプリガンに連絡をして、勇者一行の監視をお願いしておいた。
夕食の際にみんなに、勇者一行の話をしてからお風呂に向かったのだが、気持ちよく風呂に入っていたのに、勇者のパーティーの人間がトラブルを起こしたと、スプリガンから連絡が入った……到着してから、三時間も経ってねえぞ!
俺は生身で行くわけにはいかないので、ドッペルに憑依して対応にあたる事にした。念のためにシュリとアリス、ピーチに護衛を頼む。従魔たちもニコ・ハク・クロ・ギン・ソウ・コウの六匹を連れてきている。移動の間に、スプリガンから情報を仕入れる……
「どこでトラブルを起こしたかと思えば、色町かよ……何となく、店で俺に絡んできた奴な気がするのは、気のせいだろうか? 勇者は何処にいるんだ? やっぱり別行動してるな。呼びださないと収まらないか?
とりあえず、様子を見に行こう。ゴーストタウンの衛兵たちで対応できなかったら、俺が出ないといけないしな」
めんどくさくなったが、こんな時にしか俺の出番が回ってこないんだから、しっかりとしないとな!
ウォーホースを使って、現場の近くまで移動する。
「……だから、何で俺が悪いんだよ! 俺の誘いを断った、この女が悪いだろ! 勇者のパーティーの壁役だぞ! そんな人間に、こんな仕打ちをしていいと思ってるのか?」
ん~酔っぱらってる? とはいえ、個人的なお付き合いが禁止のこのエリアで、そのセリフはアウトだぞ。
「ここに入る際の講習で『色街では、個人的なお誘いはしてはいけない』という事を説明している。この街の法律を守れないから、こういう状況になっている。こちらの指示に従わないのであれば、実力行使で捕まえるぞ!」
「勇者のパーティーの人間に、そんなことをしていいと思うのか? この街も終わりだな!」
勇者は結構真面目というか、事を荒立てないようにしていたのにな。馬鹿なパーティーメンバーがいると、苦労するな。勇者に同情をしてしまった。そんなことを考えていると、衛兵のリーダーが捕えるように命令を出した。
近くにいた衛兵四人が囲むように近付いていくと、あろうことか武器を抜いて、攻撃をしようとしていた。まじか!
「シュリ! あいつを止めろ!」
俺の命令に従ってシュリがチェインを発動し、力任せに引き寄せた。そのまま投げ飛ばし、地面に叩きつける。
「シュウ様! こんなくだらないことで呼んでしまい、すいませんでした。連絡して、そんなに時間が経ってませんが」
「気にするな。こんな事しかする事が無いから、たまには頼ってくれ。一応連絡を受けて確認したが、こいつが色街で悪さをして、今武器を抜いて攻撃しようとしたことが、問題になっているという事でいいのかな?」
「その認識で問題ありません」
「クソが! いてーだろが! ん? お前ジャルジャンにいた奴だな! よくも俺に恥をかかせやがって! てめーみたいなクソがいr、ゲボアッ!!!」
俺の悪口を言ったアホが、シュリのスタンピングを腹にうけていた……あれはきついな。俺でも悶絶するぞ。
「ゲホッゲホッ! 勇者のパーティーの人間に、こんなことしてタダで済むと思うなよ!」
「お前さ、それだけしか言えないのか? 勇者のパーティーだろうが、一般市民だろうが、貴族だろうが、王族だろうが、この街の法に逆らえば最悪極刑もあり得るんだよ。そしてこの街を作ったのが俺なわけで、衛兵の手に余るかもしれないという事で、呼ばれたんだよ。
迷惑な奴だ。あ、現行犯だから弁明の機会は無いから、口塞いどいてくれ。装備をはぎ取って、特殊手錠をつけておこう。シュリ、牢屋まで連れてってくれ。アリスとピーチはついてきてくれ」
シュリはそのまま衛兵の後について、牢屋に向かっていった。上級ランクの冒険者用の牢屋に、連れていかれるようだ。
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