663話 嫉妬
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グリエル・ガリア・ゼニスとの話し合いも終わり、グリエルの執務室を後にする。階段を降りていくと、子どもたちが登校してきたようで、教室がにぎやかになってきている。
教室の中を覗くと、俺だと気付きみんなが挨拶してくれる。その後に、ニコや他のスライムたちが撫でられているのは、しょうがないだろう。こいつらの人気に若干嫉妬だよ!
それはさておき、ここには魚人の子どもたちも通ってきているようだ。水の無い所では、大変だということだったが、大丈夫なのかと思っていると、教室の一角に掘りごたつのような、くぼんでいる所に水をためてあり、そこに足をつけながらクラスメイトと話をして、楽しんでいるようだった。
うん、差別につながらずにいい感じだな。魚人たちは、好んで水魔法を覚えていたので、自分たちで水を出すのは、お手の物だ。魚人の子たちがためた水に、一緒に足を突っ込んでいるヒューマンや、獣人の子たちもいた。クマの獣人が水をかけて、体の毛を綺麗にしてたりもしている。仲が良くていい事だな。
学校では種族の隔たりなく、子どもたちがいい関係を築けているのは、素直に喜ばしい事だ。こんな事が可能なのは、ディストピアだけなんだよな。
その内この世界で……というのは難しいだろうけど、俺の管理下にある街では、実現していきたいところだ。特に帝国側は力が第一なので、種族による隔たりは少ない。優秀なら問題ないが、それで差別が亡くなるわけではない。俺の理想とは大分かけ離れている。
本当に、どうしようもない奴らはいるけどな。
そろそろ授業が始まるようで、みんなが席に着き始めた。これ以上は邪魔になると思い、教室を出て下の階へ降りていく。
冒険者ギルドの喧騒は落ち着いていた。それもそのはず、この街ではクエストで一、二週間街を離れるということは、戦争時の傭兵や他の街への派遣以外ではないので、朝情報を確認してダンジョンに潜り目当ての物をとって、夕方には冒険者ギルドに戻ってきて換金する、というのが一般的なのだ。
例外もあるそうだ。ある程度実力が付いてきた者たちは、三十一階以下にある、希少な物をとるために移動に時間をかけて、一日程滞在して戻ってくるという事はあるそうだ。どちらにしても、自分たちで持てる量が決まっているので、滞在時間に限界があるのだ。
残念ながら、収納系の魔道具は作れる人がおらず、手に入れるためには俺が召喚するか、ダンジョンの宝箱から入手するか、ゴーストタウンに持ち込まれ、オークションなどで競り落とす以外は困難だろう。いや、競り落とすのも困難だな。宝箱も確実に収納の魔道具が入っているわけではないので、入手は難しい。
俺のダンジョンでも出そうかと考えたが、それはやりすぎだと、ミリーに言われたので自重している。
することが終わったので、ブラブラとディストピアを歩いてみることにした。
こうやって、ゆっくりと街を見るのは、久しぶりだったから新鮮だ。人口が増えてきたことを聞いていたから、建物が増えてきたのは当たり前だよな。でも、その当たり前に違和感があるんだよな。現代建築ばりに、早く建物ができるんだから恐ろしい。魔法って本当に凄いな。
お店も増えてきて、色々なものがあふれてるな。所々に作った公園では、赤ちゃんを抱いたお母さま方が、色々な話をしているようだ。気にしてなかったが、この世界にも抱っこ紐のようなものがあるようで、みんながつかっているようだ。
子どもたちも、元気に育っているようで何よりだ。
街はまだまだ家を建てるスペースはたくさんあるから、これからも人が増えていくだろう。対応は全部行政府、グリエルとガリアにまかせるんだけどな。俺は何かあった時のための要因だから、ずっしりと座っていよう。今は歩いているけどね!
そのまま街を抜けて畑のエリアへ来ている。何かカオスな状況になってるな。よくわからないが、いつの間にかピクシーが住み着いていた。そのピクシーが、ワームたちの頭に乗って、何かを指示しているようなのだ。
その指示を聞いていないのか、違う方向へ進んでいる。その頭でペチペチ叩いている様子を見ると、慣れている感じがするので問題ないだろう。
それ以外にもカオスな状況になっている。果樹園だったと思われる場所が、半分ジャングルみたいになっており、その中で農業に携わる人が作業をしていた。その近くにはハニービーがいて、収穫の手伝いをしているのだ……ハニービーたちは、何してるんだ?
襲われるといったこともなく、共生できているみたいだから気にしたらいけないな。ここはアクアとノーマンが監修しているので、問題ないだろう。あれ? ダンジョン農園にいるドリアードたちが、ここにいるんだが……俺の姿を見つけると、木の陰に隠れてこっちを見ている。遅いし隠れきれてないぞお前ら。
話を聞いてみると、ダンジョン農園の中以外にも、心地良さそうな土の香りがしたから、ここまで出張して来ているらしい。別に隠れなくても、ここに来てることは怒らんのに。そもそも、初めの頃は連れてきたと思うけど、忘れたのか?
疑問に思ったので聞いてみると、初めの時に召喚したドリアードではなく、手が足りなくなったので追加で召喚されたものや、近くにいたドリアードが仲間に入れてもらったりしているそうだ。そのメンバーだった為俺の姿を見て隠れたらしい……せめて俺に見つかる前に、隠れればいいのに。
これからも頑張ってくれと声をかけて、畑のエリアを後にする。畑エリアから出ている馬車に乗って、湖のエリアに向かう。
「ここは相変わらず、潮の臭いが強いな。でも海岸みたいな感じじゃないんだよな・・・不思議だな」
俺のセリフにクロとギンが、スンスンと鼻を動かすが問題はなさそうだ。
塩を作っている所見てみると、釜の数が増えている気がする。それに、かつお節を作っている場所も広くなってるな。他にも色んな乾物を作っているみたいだ。見える範囲では、ホタテ、アワビ、小さいエビ、ワカメ等々がある様だ。
「いつの間にかここも人が増えて、設備も大きくなったのか。問題無いようで良かった。美味しいものがたくさん増えると言うのは良い事だな」
そんなことをつぶやいていると、クロとギンがワフワフ吠えている。そうすると気付いたおばちゃんたちが、かまいに来た。乾物を持ってきて、与え始めた。どうやら、商品にならず自分たちも、持ち帰れない端物を、クロたちに食べさせていたようだ。可愛がられているんだな。
従魔たちの人気を、改めて知った一日だった……
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