066話 緊急招集がかかった
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屋敷で新しいダンジョンを作ったり、ファンタジー式現代武器の試作をして過ごして六日ほど、シングル冒険者たちが獣道の森へ調査に向かってから一週間が経っていた。お昼を過ぎたあたりに緊急召集を告げる鐘が鳴った。
鐘が鳴ってから約二十分後、冒険者ギルドの周辺には冒険者ギルドに登録している七割程の人間が来ているようだ。ギルドの入り口に一人の男が現れる。あまり表には出てこないがギルドに登録している人間が一度は見たことある顔……ギルドマスターだ。
「冒険者ギルドの緊急招集に集まってくれて感謝する。これから話すことは全てが事実であることを理解して聞いてほしい」
言葉が浸透するのを待って再度口を開く。
「先日、シングル冒険者二名とAランクの冒険者パーティー二組十二人が獣道の森の調査へ赴いた。調査の五日目の夜間帯に、ある魔物に襲撃されてAランクの冒険者が瀕死の傷を受けた為撤退してきた。
夜に襲撃してきた魔物は、Sランクのフェンリルだったらしい。今回の獣道の森の異常に直接かかわっているかわからないが、Sランクの魔物がいること自体が危険なのだ。そこで緊急招集依頼を発動する。
Bランク以上の冒険者は、強制出動の義務が発生しCランク以下は任意での出動になるのでよろしく頼む。今から二時間後にSランク魔物のフェンリル討伐へ出発する。各自準備をするように」
まさかSランクの魔物が出ていたとは、俺たちの中でBランクなのは、俺とカエデだけだ。娘たちは連れて行かなくてすむのが幸いなんだが、果たして街に残るように言って聞いてくれるかは謎である。
娘達になんて言って残ってもらおうか考える間もなく屋敷についてしまった。扉を開けると、娘たちが慌ただしく動いて何かの準備を始めていた。お前たち何で食料や武器の準備を始めているんだ? 疑問に思い戸惑っていると、ピーチが俺を見つけて駆け寄ってくる。
「おかえりなさいませ、ご主人様。私たち二十二名とレイリーさんを合わせた二十三名、ご主人様についていくために準備を開始しています。ご主人様の武器の準備はカエデさんに頼んでいます。今回は、スカーレットさんたちがついていけないので馬車の中にエアーマットをひけるようにしてあります。
食事に関しては私たちが準備いたしますので、問題はないと思われます。何か気になる事がございましたら遠慮なくおっしゃってください」
「えっと、みんな行く気満々?」
「え? ご主人様が行かれるのに、護衛の私たちが行かないなんていう選択肢ないです」
太陽が東から上って西に沈むという当たり前のようなことを聞かないでください、と言わんばかりの口調でかえされ絶句してしまった。フェンリルも怖いが、娘たちがトラブルに巻き込まれないかが心配でしょうがない。
シルキーたちは、焼けるだけパンを必死に焼いてくれていた。その合間にスープストックを何種類も準備して、娘たちにしまうように指示していた。今回は収納の腕輪だけではなく、収納のカバンを3つ持っていくことになっている。
簡単に言えば、馬車を収納するためにもっていくようなものだ。空いたスペースに野菜や果物、小麦粉などを入れて、腕輪の方にはスープストックやお肉を入れている。
こういうときって、食事に差があると問題が出たりするんだよな……俺はそれでも問題はないんだが、娘たちがそれを許すかが疑問だ。
集合の時間まで後一時間位になったころには、食材以外の準備は完了していた。
そういえば馬車を持っていく予定だが、普通のパーティーは馬車なんて持っているんだろうか? 街の入り口に貸し出し所があるから、持っていないパーティーも多いのではないだろうか?
獣道の森の中に馬車は持ってけないから、Cランク以下のパーティーは馬車を守るために残るんかな? 戦力になるなら連れてかれるだろうな、娘たちとか。
不毛なことは考えても仕方がないので、安全を確保するためにP90のカスタムモデルを作り上げてしまいたいところだ。
薬莢を使わない速射機能は、俺のヘンテコな発想からカエデが実現できるレベルに落としこんでくれた。要は密閉して弾をはじき出す機構が出来れば問題がないので、火魔法の小爆発を利用したシステムを考え出したのだ。
薬莢を使わないので既存のP90とは、大分違う機構で作動するのだが問題なく連射することができるしろものになった。
カエデが「銃をゴーレムで作ったら?」の一言で、銃の形をしたゴーレムを作ったのだ。全てのパーツをクリエイトゴーレムで作成して、パーツの大半にアダマンタイトを使用し、連射機構の小爆発の部分にはオリハルコンとミスリルの合金を使用している。
銃の内側の空いた空間に魔核を設置してプログラムを組み、弾を撃ち出せる銃は完成している。
だけど、魔法を付与するためのカスタムパーツは思わしくなかった。一種類の属性付与は問題なくできたので使用するには問題ないのだが、攻撃力の観点を踏まえると威力が低く感じてしまうのだ。
時間がなかったので今回は、弾の回転はライフリングに任せ、弾速を上げる雷付与をできるカスタムパーツを使用することにした。作成できたのは一丁のみ。アダマンタイトの加工に使用する魔力の関係上、これ以上の作成は出来なかった。
火薬を使わないシステムなので、同じサイズのマガジンでも倍以上の弾を収納することができたから、継続戦闘能力は高いだろう。
ちなみに新型マガジンは、シルキーたちの作品だ。精霊だけあってモノづくりの能力は異常に高かった上に、俺が召喚した際にある程度の知識が焼き付いてるのでそのおかげともいえる。
準備したマガジンは、六個だ。弾丸に使った素材は、アダマンタイトのアーマーピアッシング(AP)弾が一、鉛がむき出しのソフトポイント弾が三、鋼鉄製のアーマーピアッシング(AP)弾二が準備してある。
鋼鉄と鉛は加工にあまり魔力を使わなかったので、弾だけは大量に準備している。これで倒せるとは思っていないが、牽制ににはなると俺は考えている。特にアダマンタイト製の弾丸は、おそらくSランクの魔物の皮を貫くことができる。移動中も魔力に余裕がある時は作成していこうと考えている。
ちなみにP90の弾丸の初速は、七一五メートル毎秒だが、俺の作ったゴーレムP90の弾丸の初速は、二二〇〇メートル毎秒だった。およそ三倍のスピードで飛ぶ銃弾、魔法付与によってスピードの上がった弾丸は物理法則を半分無視しているのか、重力にほとんどひかれずに本当の意味で弾丸が直進する軌道ですすむのだ。
付与魔法の効果が切れると、それまで無視した物理法則を巻き戻すかのように、目に見える速度にまで落ちたのだ。ちなみに効果が切れるのはおよそ五キロメートル先だ。確認した方法は、MAP先生を使いました。弾にマーキングをしてどこまで飛ぶか試したのだ。もちろんダンジョンの中でだ。
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