653話 強敵キマイラ
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危機的状況で、第二ラウンド目の戦闘が開始される。
戦闘が始まる直前に準備の終わった妻たちが、一五一階の扉から声をかけてきた。
「ダークナイト、マンティコアを引き付けて、みんなの方で戦闘してくれ。みんなもダークナイトが戦いやすいように、支援をしてくれ。俺はファイアナイトと一緒に、離れて戦闘をするからそっちの足止めは頼んだ!」
ファイアナイトがキマイラの意識をひいている間に、側面へまわり一歩でトップスピードになり、シールドチャージをくらわせて、場所を強制的に移動させるために吹き飛ばす。
何度も使っていたせいか、新しいスキルが手に入った。名前は【神歩】。今まで使っていた、一歩でトップスピードになる技術が、スキルとして芽生えたようだ。
俺とファイアナイトは、吹っ飛ばしたキマイラを追いかけて、コロッセオを移動する。入って来た入り口から離れて、魔物が出てきた入り口の方へ移動する。何となく入り口が不吉に感じたので、土魔法で見える範囲すべてを埋めておいた。もし階段があるならどかせばいいからな。
シールドバッシュをした時に感じたが、予想以上に頑丈だった。
どうやらファイアナイトを動かしているのは、リリーっぽいな。盾捌きにレイリーの面影があるから、間違いないと思う。
俺が側面に移動をすると、キマイラは俺とファイアナイトが視界に入るように移動して、息を吸うと火炎のブレスを吐いてきた。ファイアナイトは、火に対する耐性が高いので、無視して眼前迄移動してメイスを叩きつけている。
俺は盾をかまえて、腰に下げていた杖に触れ【アクアヴェール】を発動して、ブレスのダメージを軽減している。
「あぶな。リリー、ダメージは有りそうか?」
『鎧たちに比べれば、問題なくダメージが通っているように思われます』
ファイアナイトから声が聞こえるが、誰の声か判別するのは難しい無機質な声だった。ダメージは通っている感じはあるらしい。どれだけ回復能力があるか……俺も攻撃を仕掛けるか。
ファイアナイトの後ろから、キマイラに向かっていく。ファイアナイトを飛び越えて、キマイラの顔の前に躍り出る。右前足による攻撃が来たが、盾で受け流して鼻を斬りつける。一番柔らかいと思われる鼻は、簡単に切る事が出来た。
前足による攻撃を続けて受け流したが、体が移動してしまったので、キマイラの側面を通るように移動したついでに、横っ腹を斬りつけてみたが、少しだけ毛を切り落としただけに終わった。
「思った以上に毛、身体は硬いな。鼻は簡単に切れるくらいだったから、攻撃がきかないって事は無いだろう。ちょっとスキルを使って攻撃してみるか」
リリーにタゲをとってもらい、タイミングを見計らって攻撃を仕掛けるようにした。キマイラに押され気味のリリーが、吹き飛ばされて追撃をされそうになったので、俺は攻撃を仕掛ける。
【ダブルスラッシュ】
不意打ちのタイミングで、尻尾の蛇をスキルで補助して、二度斬りつける。スキルの補正はやはり高く、毛より硬い尻尾でも、傷つけることができた。
さすがに切り落とすことはできなかったが、初級スキル【ダブルスラッシュ】でも傷つけれるという事は、一撃が強いスキルを使えば切り落とせる可能性が出てきた。さらに言えば、神歩を使った連携であれば、切り落とせるだろう。そのチャンスがあるかどうかだけどな。
そんなことを考えていると、尻尾の蛇が俺の方を向いて、緑色の霧を吐いてきた。
ヤバい! 尻尾のブレスと言えば毒が最有力、霧が届く前に大きく息を吸ってその場から離れる。
「この状況じゃ近寄れないよな……といっても火魔法で、燃やし尽くせるとは限らない。ならとる行動は、一つだな」
腰につけている杖に触れて、魔力を注ぎ込み風の球を作る要領で、霧の中心に風が吹き込むように風魔法を使用する。小さな台風ができた所で、その周りを岩で包み頑丈に固める。包んだ岩にオリハルコンでコーティングして、収納の腕輪に突っ込む。
念のため万能薬を飲み干した。万能薬は解毒ポーションの様に、飲んだ瞬間にしか効くタイプではなく、品質によって効果が出ている時間が変わるタイプだ。飲み終わった時に、少しだるく感じていた体から、だるさが無くなったので、これの効果中はキマイラの毒はきかないだろう。
それでも、限界がある可能性は捨てきれないので、早めに尻尾は切り落としておきたいところだ。
キマイラはリリーを吹っ飛ばした後、距離を詰めて追撃をしているが、俺への警戒は緩めていない。むしろ尻尾を傷つけたことが気に入らないのか、警戒度が上がっている気がする。
ファイアナイトの鎧の頑丈さを考えれば、この程度でやられる事は無いだろうが、攻撃され過ぎて動きが悪くなるのは困る。警戒しながら近付いていくと、リリーへの攻撃をやめて距離をとった。俺は回復魔法を唱えてリリーを回復する。
「大丈夫か?」
『痛みはないですが、普段の身体と勝手が違うので、少し戦いにくいです』
慣れない身体で戦闘するのは、大変だろうな。頑張ってほしいところだ。
「火炎ブレスより尻尾の毒攻撃が怖いから、早めに切り落としたいと思ってる。少しそっちに負担かけるけどよろしく。できるだけ全力で攻撃を仕掛けてくれ、隙をついて絶対にあの尻尾を切り落とすから」
『わかりました。気を付けてください』
そういうと、リリーはキマイラに向かって走り出す。リリーは鈍器スキルを使ったことがないので、盾スキルで対応するようだ。
ファイアナイトが持っていた盾も、俺と同じでカイトシールドのような形で先端が尖っているのだ。シールドチャージみたいに、盾の面を当てるスキルではたいした効果の違いは出ないが、シールドバッシュの様な殴りつけるスキルでは、ダメージが変わってくる。
メイスを上手く使って攻撃をして、隙をつくようにシールドバッシュが決まっている。
痛みがなく頑丈であっても、Sランクの魔物であろうキマイラを前に、慣れない身体のファイアナイトの鎧で戦っているリリーでは、完全に抑えきれるものではないので、俺は魔法で援護している。
この援護も後衛の立ち位置である場所からではなく、前衛と中衛間位の立ち位置で、魔法を撃つ場所としてはかなり近い位置になっている。
この位置から魔法で援護しながらキマイラを牽制して、隙を見て神歩を使って尻尾を切り飛ばす予定なのだ。
リリーが正面で、爪による攻撃をメイスで叩き落したり、ブレスの隙をついて顔面を叩いたりしている。リリーが不利にならないように、魔力を込めて拳大の礫を高速で撃ち出して、キマイラの攻撃を妨害している。
二十分も続けているとキマイラが焦れたのか、大ぶりな攻撃が増えてきた。リリーもチャンスだと思ったのか、俺がキマイラの視界から消えるように移動を始めた。
別の頭があるのか、尻尾の蛇は俺の方を見ている。杖を持っていた右手から杖を腰に戻すと、蛇からの毒ブレスが吐かれた。効果は無いだろうが一応息を止め、毒霧で視界が悪くなったのを利用して、左手に持っていた盾を地面に捨て、神歩を使い距離を詰め抜刀術を使う。
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