650話 151階のボス……
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指示を受けたゴブ蔵が、階段を進んでいく。
俺たちは、ゴブ蔵に付けたカメラを見ながら、様子をうかがうが……人型の物にカメラをつけて移動させると、自分たちの意思とは関係なく、画面が動くため若干気持ち悪い。これならまだ、憑依の方が良かったかな?
多分俺と同じことを、みんなが思っている。でも自分の身を危険にさらさずに済むのだから、多少の不快さは受け入れるのが筋というものだろう。
「お? 階段の終わりが見えてきたな、この先が一五一階か」
自分たちで下りている時にも感じたが、この階段は今までの階段よりかなり長かった。何かの理由があるのか分からないが。
「ゴブ蔵、階段の下についたら止まれ。止まったら周りを見渡すんだ」
階段の下についたゴブ蔵は、周囲を確認するように頭を動かして様子を確認する。洞窟型ダンジョンの定番ともいえる、薄暗い通路しか視界に入ってこない。十五メートル先も、映像では見にくい位暗かった。
「ここに光があまりないって事は、扉が閉まってるのか? それともこのフロア自体が、暗いのか? ゴブ蔵、持ってる松明に火をつけろ」
指示を受けたゴブ蔵が、背負っていた荷物の中から松明を取り出す。松明と言っても、木に布が巻いてあるだけなので、そこに別に準備していた油を滲みこませ、火をつける形だ。視界が少し明るくなると、何とか先が見えるようになった。
「扉があるな。って事は、通路には罠がない可能性が高いか? ゴブ蔵、進んで扉を確認しろ」
ゴブ蔵が慎重に進んでいく。到着するまで特に何も起こらなかった。
複雑な模様のある扉の前に立ち、ゴブ蔵が扉を押したり引っ張ったりしているが、特に反応がない。
「ゴブ蔵、扉の両側の壁に松明をセットしてくれ」
セットと言っても、色々持って行ったわけではないので、出来る事は限られている。ゴブ蔵の力ではダンジョンの壁に穴はあけれない。
松明用にたくさん持たせていた木の棒を、篝火みたいな形で両側の壁側にセットする。欲をかけばもっと高い位置に火が欲しかったが、今回はしょうがないだろう。
「扉の模様を調べるから、近付いてくれ。きちんと松明も持ってけよ」
松明を持たずに進み始めるため、持っていくように注意する。
扉の前に立ち、色々な角度からゴブ蔵に見てもらっている。複雑な模様だけど、何となく綺麗な模様だと思わせるものがあった。しばらく、色んな所を見てもらっていると、変な穴を発見した。
「鍵を使って開ける感じかな? となると鎧が落とした鍵か? 見た感じ、穴は一ヵ所しかないけど、他にないのかな?」
ゴブ蔵にしばらく探させてみたが、それらしき穴は1つしか見当たらなかった。ゴブ蔵に戻ってくるように命令した。俺は戻ってくる間に、Fランクの魔石を使った、光を発する魔核を作成する。それを乗せる道具を鉄で作成する。
戻って来たゴブ蔵に、鍵をニつ渡して、カバンに作った魔核と乗せる台座を突っ込んで、戻らせる。
「ゴブ蔵って、かなり体力あるよな。今の俺なら問題ないけど、こっちに来たばかりの時なら、こんなに長い階段を上り下りできなかったよな」
ゴブ蔵の軽快な足取りの画面を見ていると、そんなことを口にしてしまった。ゴブ蔵が到着して、俺の作った魔道具を設置して明かりを灯す。松明の火の光と違って明るさも強く、綺麗に全体の模様が見えるようになった。
「全体的に見ると、何かの絵みたいに見えるけど、よくわからんな。ゴブ蔵、鍵を使ってみてくれ」
ゴブ蔵は命令に従って、扉の穴に鍵を差し込み回す。ファイアナイトが落とした鍵があったようで、カチャリと音がした。鍵は消える事もなく、そのまま取り出すことができた。
しばらく悩んだが、そのまま扉を押すように命令を出す。その指示に従って、扉を押すと開いた。そのまま中を覗かせると巨大な空間だったが、見た目がコロッセオみたいな作りになっていた。
そう思ったのは、入り口からニメートル先くらいに、剣闘士が出てくるような、金属の柵のある入り口が見え、その先が観客が座る、すり鉢状の客席が見えるのだ。そう判断してもおかしくない。
「ボスらしき魔物というか、何もいないな、進ませるべきか?」
「ゴブ蔵には悪いですが、中に入らせて様子を確認するべきだと思います」
ピーチからそう助言がある。もともと使い捨てるつもりで呼んだのだ、ここでためらう必要はない。
「ゴブ蔵を中に入れるか。っとその前に、今持ってるカバンに鍵をしまって光の魔道具の所にひっかけておいてくれ。頼んだぞ!」
ゴブ蔵はそのまま進んでいく。ゴブ蔵が柵に近付くと自然に持ち上がり、入ってくるように促していた。部屋の入口の扉は空いている。ゆっくりと進ませていくと、コロッセオの四分の一程進んだ所で、ガチャン! と音を立てて金属の柵が閉まった。
ゴブ蔵はキョロキョロするが、何も起こらない。五分位だろうか? ゴブ蔵が入って来た入り口とは別の入り口から、ライオンの様なネコ科の迫力のある顔、山羊というより馬の体躯に近いごっつい身体、緑色の蛇の尻尾、まるでキマイラの様な魔物が出てきた。
遠くから見ているため、大きさが良く分からないが、明らかなのは、人のサイズなら丸呑みできるくらいには、でかいと思われる。獣道の森であった、フェンリルを思わせる大きな身体だ。
ゆっくりと歩いてきて、コロッセオの四分の一程進んだ所で止まり、雄叫びをあげる。その音が消えたと同時にキマイラの様な魔物が、ゴブ蔵に襲い掛かる。装備を何もしていないゴブ蔵は、なすすべもなく前足で攻撃されて、カメラも壊され映像が途切れた。
「ゴブ蔵が相手だから強さをはかり辛いけど、ファイアナイトやダークナイトを考えると、このキマイラのような……もうキマイラでいいな。
名前が判明すると呼びやすいから、楽だけどしょうがないな。で、このキマイラはSランク以上の魔物とみて間違いないだろう。あの大きさを見ると、フェンリルを思い出すな」
俺のセリフに同意するように、頷いているメンバーが複数いた。一応伝承として伝わっている、キマイラの情報をほじくり出す。
「この本によると、口からは火炎を吐いて、その火炎によってしばしば山が、火事になるくらいの惨事が起きたらしい。
それと、尻尾の蛇は猛毒を持っていて、噛まれるとすぐに体が動かなくなり、五分もしないうちに死に至るみたいだ。万能薬や解毒剤のランクの高い物が必要だな。今ある薬で足りるか?」
もし効果が足りない事があったら困るので、全員にニ本ずつSランクの万能薬と、解毒ポーションを持たせよう。DPを結構使うが、DP錬金でちょこちょこ稼いでいるから、懐にダメージが入る事もなかった。
「準備は念入りにしよう。最大一週間を目途に準備時間をかけるぞ。リンドとカエデは大変かもしれないけど、みんなの武具のメンテ頼む。他は魔物を使って、キマイラの情報を手に入れてくれ」
みんなに指示を出して、準備に時間をかけることにした。
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