643話 雪山っぽいエリア
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「みんな、おはよ! 今日から九十一階を進んでいくぞ! フィールドタイプの一部屋だから、全方位の警戒が必要だから気を付けてくれ。従魔たちも、そろそろ気合を入れろよ! みんなで協力して進んでいくぞ!
スケルトンには悪いが、カナリアになってもらう。必要な事だから、許してくれとは言わない! 何かあったら俺のために死んでくれ。死んでくれって言うのは、アンデッドにはおかしいか? そんな細かい事はいいか、降りたら敵の強さをはかるぞ」
九十一階に降りると……
「寒い! みんな引き返して!」
俺たちは慌てて引き返す。
「まさか溶岩エリアを抜けたら、全く逆の雪山みたいなエリアだったな。これはエグイ」
みんなが持っていた、熱さを和らげる魔道具に、追加で魔石を埋め込んでいく。これは熱さだけじゃなく、寒さにも対応できるようなシステムを、組み込んだものだ。
「ちょっと予定がずれたけど、降りたら設定を変えるように! それじゃあ、気を取り直して出発!」
雪や氷から出ている冷気みたいなものは防げないが、活動するには十分な環境を作ってくれている。問題は滑りやすいエリアなので、そこをどう対処するかだな。
進んでいくと、風を切るような音が聞こえてきた。全方位からの襲撃だ。
「数は目視で八!」
「隠れている可能性に注意して迎撃!」
斥候からの報告を受け、ピーチが指示を出す。前衛のメンバーが前に出て、奇襲を防ぐ。
雪男? 俺のゲームの知識では、巨人タイプか、デカい卵型に手足がついているタイプの、イメージだったのだが、今目の前にいるのは、体長ニメートルほどの、ちょっとマッシブな雪男が、四足獣の獣人として生まれた感じとだろうか?
俺も言っていて意味が分からないが、白い体毛に獣人っぽい顔、そして高速移動時は四足歩行で、戦闘時は二足歩行のようだ……訳が分からん。
見た目の分析をしていても、意味がないので戦闘の様子を観察する。実力的には九十階の魔物と同じくらいな気がするが、フロアの特性というべきか、こちら側は雪や氷で、上手く踏ん張れていない。
スパイクみたいなものはつけていないが、多少の凹凸はあるので普段通りとはいかないが、それなりに動けると踏んでいたが、そうでもなかったようだ。
それに対して、スノーマンでいいか? こいつは地形や特性を無視しているかのように、自由に動き回りこちらを翻弄している。ステータスの差でこっちが不利になる事は無いが、それでも地形や特性を無視できるという、アドバンテージは大きいと感じた。
前衛だけでは、時間がかかると思ったピーチが、後衛のメンバーに指示を出して攻撃を行う様だ。
通常、燃え広がる物がある場合は、火魔法を使わないのだが、俺たちが普通という枠に収まるわけも無く、遠慮なく火魔法の攻撃が放たれる。
広範囲にダメージを与えるのではなく、魔法を圧縮してピンポイントでダメージを与えている。燃え広がったところで、魔法で消せばいいのだから、本当に遠慮がない攻撃にスノーマンが晒されている。
ピーチの指示は牽制ではなく、一点集中で確実に一匹事屠っていく事だったので、時間が経つにつれて数が減っていき、最後の一匹は弓による脳天直撃の攻撃で絶命した。
魔法が飛び交う中で、見えにくい加工のされた矢を、認識することは難しいだろう。メアリーとマリアの弓使い二人は、印象に残りやすい矢と、見にくい矢を使い分けており、さらに見分けるのが難しくなっている。
「みんな、どうだった?」
周りの様子を警戒しながら、みんなに意見を求める。
大体は俺と同じ意見を持っていたようだ。まだまだ余裕のある相手だが、フロアの地形や特性で、こちらにデバフがかかったような状態で、戦闘になるので厄介だとの事。
攻めにくいだけであって、守りを固めるなら大きな問題は無いので、守っている間に後衛に、攻撃してもらえば排除は簡単だろうとの判断だ。
俺と違う意見というか追加の意見で、実際に戦っていた前衛陣は、もっと自由に動きたいという意見が多かった。雪の上や氷の上は慣れていても、動きが悪くなるのはしょうがないのだが……今すぐに対策は出来ないので、今日はそのまま進むことにした。
俺はファイアナイトやデカいワーム以外は、あまり戦闘に参加していないので、移動時は全部この雪や氷の上を、移動するための対策にあてていた。実際に戦いにくそうにしている前衛陣の様子を見ながら、考えをまとめていく。
ウィスプの活躍でダンジョンは進みやすいが、このフロアの移動のしにくさと、敵の倒し難さが合わさって、今までの階に比べて移動距離が短くなってしまっている。と言っても、五階は降りれたので、十分と言えば十分か。
今回このエリアでの対策として俺が考えたのは、スノーマンがドロップで落とした肉球を加工して、みんなの靴の裏につけるタイプの物を、準備しようと思う。
問題があると言えば加工なのだが、スキルが足りていないので、十分に効果のある物を準備できなかった。素材を裁断してそのまま使い、クリエイトゴーレムでミスリル合金を使い、強引にくっつける形にする。これなら、皮の能力を損なうことなく使えるので大丈夫だろう。
夜準備ができたので、みんなのシューズを出してもらおうと思ったら、なかなか出してもらえなくて苦労した。
どうやら臭いが気になるようで、出したくなかったとの事だったので、水魔法と風魔法の合成魔法で、ミストバブルというオリジナル魔法を使って、靴を洗浄したので妻たちの靴を回収できた。
せっせと肉球の皮の部分を靴のサイズに裁断して、ミスリル合金をクリエイトゴーレムで操りながら、靴の裏へと固定していく。全員分には、肉球の数が足りなかったので、前衛陣の靴だけに肉球の皮をつけている。
後衛陣などには、靴の裏に細かい突起を作りスパイクのような物にしている。スパイクでは軽減できるか分からないけど、少なくとも滑る事は減らせるはずなので、これで良しとしよう。
全員の靴の加工が終わったので、みんなで外に出て履き心地を試す。
「スパイクは、思ったより良さそうだな。肉球の皮の方はどうだ?」
「そうですね、とても動きやすいですが、もう少し頑丈につけてもらえると、違和感が減ると思います」
シュリから出た意見を聞いて、前衛陣の靴の裏の改良を行う。肉球が柔らかいので、違和感があるようだ。
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