642話 90階での一幕
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溶岩フロアも無事に五日間、ダンジョン突入から十五日目で踏破することができた。次のフロアは森タイプと同じで、一フロア一部屋のフィールドタイプの様だ。
次の三十階の間にも、ガーディアンみたいな存在がいるのだろうか? いてもいなくても、いるという前提で動くべきだよな。油断は良くない。いる時に慌てるより、いなくて苦労に終わる方がまだましだ。
食事も終わったので、これからの事を話す。
「みんな、お疲れ様。マップ先生で分かってる通りだけど、明日から違うタイプのフロア、上の階にあった森の様に一フロア一部屋タイプのダンジョンになるから、気を引き締めてくれ。
三十から六十、六十から九十とニ回続けて、ガーディアンみたいなのが出てきたから、次の三十階にもいるという前提で動くよ。
でも、今日も気を張り詰めるのは良くないので、久しぶりにお風呂に入れるように、コンテナを改造したから湯船にもつかれるよ。他にもサウナも用意してあるから、ゆっくりとお風呂に入ってくれ」
俺がお風呂につかれる事を話すと、みんなが喜んでいた。俺と生活しているためか、お風呂に入るという習慣ができて、お風呂の持っている魔力には、逆らえなくなっているようだ。
他にも、ダンジョンに入ってからは、湯船は無くシャワーだけだったので、より一層嬉しかったと思う。
そもそもの話、ダンジョンでシャワーを浴びれるだけでも、他の冒険者に知られれば、贅沢極まりないと言われることは必至なのだが、お風呂の良さを覚えたら、シャワーだけじゃ物足りなく感じる事もあるよね。
俺がお風呂に入れると宣言したら、みんなが慌てて準備をしてお風呂に入りに行った。こうなると思っていたので、俺はこの時間を使って、グリエルやゼニスと通信をする事にした。
『おぉっ! シュウ様、どうなされましたか?』
初めに連絡したのはグリエルだ。様子を聞きたい旨を伝えると、最近あった事を報告してくれる。特に大きな問題も無く、俺に判断を仰ぐことも無かったようで、本当に報告で終わった。
次にゼニスへ連絡をする。
『シュウ様! よかったです。少し困ったことがありまして、シュウ様からの連絡をお待ちしていました』
面倒事のような気がする……俺の判断を有するなら、面倒事じゃないわけないよな。内容を聞いてみる事にする。
『問題になっているのは、いろんな街に作った商会の支店に付属して、治療院と孤児院を作っているのは、知っていますよね? その治療院の治療師や、孤児院の孤児を街の領主、貴族が強引に話を進め、引き渡せと言ってきているんです。
もちろん断固として断っていますが、こういった強引に引き渡せという貴族は、大体評判が良くないんですよね。
評判が良くて、問題ないと判断した貴族に対しては、子だもたちが自分の意志で、行くと言った上で、条件付けで孤児を引き取りを許可していますが、治療師は治療院の要なので、断固として断っています』
孤児を引き抜こうとする理由が、よくわからなかったが、商会付属の孤児院の子どもたちは、孤児院で行われている学習のためか、そこら辺の商家の子息より優秀で、即戦力になる子までいるらしく、引っ張りだこの様だ。
でも、誘われた大半の子どもたちは孤児院に残って、俺の商会で下働きでもいいから、働きたいと言っているらしい。
この世界で学校と呼ばれるものは、上流階級の家の子供だけがいく所で、ほとんどの人間は学校に通うことなく、家の仕事を手伝ったり、下働きとして奉公をしたりとの事だ。効率的な学習方法が無いから、こんな感じなのだろうか?
「何となく理解した。俺の意見も聞きたいと言っていたけど、ゼニスの事だから、何か案を考えているんだよな? それを聞かせてもらっていいか?」
『あくまでも、私の考えなのでシュウ様に修正していただいた方がいいと思いました。もちろん草案ですので、忌憚のない意見をお聞かせください』
ゼニスが話してくれた内容を要約すると、
一、引き続き強引な引き抜きは、断固として拒否する。
ニ、商会はディストピアの領主の私的な組織であると公言する。
三、実力行使をしてくるようなら、警告を行う。
四、戦争行為も辞さない事を告知する。
五、それでも止まらないのであれば、戦争によって街を乗っ取る。
正直、五番の街を乗っ取るっていうのは、勘弁してもらいたいな。
「ゼニスの言いたいことはわかった。街を積極的に欲しいとは思わないけど、俺の名前というか立場が前面に出れば、ちょっかいが減ると考えているんだよな?」
『その通りです。五番に関しては実績もあり脅しで、本当に最終手段なので、実際に行うかはシュウ様の判断になりますが……
他にも、街から追放をほのめかされた場合は、商会の全面バックアップで、商会関係者を他の街へ送って、新しい生活ができるように、すぐに手配できるようにしています』
「そこまで準備できてるのか。それと、もしそうなった場合は、俺の資金から上限なしで、使っていいぞ。いや違うな、上限なしでいいから、使ってくれ。このままだと無駄に金が集まるから、経済活動的に良くない。
余裕があったら商会で、街の食料で炊き出しとかも行ってもらえたら助かる。近くの奥様方を雇って、食事に困っている層の人たちへの支援として、食事を出してほしい。できるだけ金を使ってくれ、頼む」
明らかに引きつったような顔をしている声だったので、帰ったらうまい酒でも出してやるか。苦労かけるけど頑張ってくれ。
話の終わった俺は、風呂から上がり始めた妻たちを見て、お風呂の準備をして風呂場へ向かう。後ろからは当然と言わんばかりの顔……は無いけど、態度で俺の後をついてくるスライムたち、風呂で相手をしろってことか。
従魔たちもお風呂が好きで、ハクとスライム以外の従魔は妻たちと一緒に向かったので、俺はハクとスライムの相手をしなきゃいけないな。
十分程頑張ってハクを綺麗にしてやる。泡塗れになったハクにシャワーでお湯をかけてやると、スライムたちまで寄ってきて、カオスな状態になったので、近くにいたスライムを湯船に投げ込む。
そうすると遊びだと思いよって来たスライムを、鷲づかみにして湯船に投げ込む。全スライムを退場させてからハクの泡を流してやると、ピョンピョンはねながら、湯船に突撃した。
スライムの中にハクが浮かんでいるが、いつもの光景なので違和感は特になかった。俺の入るスペースを確保して、ゆっくりとつかる。ダンジョンでの疲れをとるように、体をもみほぐす。
のんびりとした夜を過ごして、次の日の朝をむかえる。
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