631話 壁完成
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キツイ態度をとるのはどうやら、年配のエルフなのだそうだが、正直ニ、三十代にしか見えないエルフを、どうやって見分ければいいのかが分からん!
守備隊長は、どちらかというと年配寄りにはなるが、頭が固いわけではなく、安全を優先できるなら多少の事は、目をつぶるとの事だ。憎い事は憎いようだが、優先順位をしっかりとつけられるようだ。
壁ができたら、態度が変わるのだろうか? 手のひらを返される可能性が、あるのだろうか? 注意しておかないとな。
「今日から作り始めるけどいいか? 一応作っている所を監視したいだろうから、妨害しない面子を集められるなら、監視しててもいいぞ」
「わかりました。ここまで考えてくれているのに、下手な物を作る事は無いだろうが、それだと納得しない奴らもいるから、納得していないメンバーと、それを抑えられるメンバーを準備させてもらおうと思う」
「妨害だけはやめてくれよ」
「了解しました」
「よし! まずは俺たちの野営地を作ろうか。場所は、街の中心から大体三キロメートル位でいいか? そこを起点に、円形の壁を作っていく。
土木組は半分に分かれて、壁を作る組とクリエイトゴーレムをかける組に。俺たちはまず、木を刈り取っていこうか。後でエルフたちが使うかもしれないから、どっかに貯木しておこうか」
俺の指示に従ってみんなが動き出す。一応昨日の夜に話していた通りの配置なので、滞りなく野営地の整備を行い、壁の作成に入っている。
俺は土木組の壁の作成の様子を見ている。一応壁の高さは七メートル、幅は三メートルで作るように伝えている。壁の両側に溝を作りながら、魔力を節約しているが、結構な魔力を使ってしまう。
土木組のメンバーで、次々と交代をしながら、休憩を挟んで魔力を回復して、作っていくというスタイルだ。
魔力の消費は、素材と体積と硬さによって変わってくるので、今回の壁は十六人で行うと、大体一日に四キロメートルちょっと作れるようだ。なので、一週間くらいで、作成できる予定である。
クリエイトゴーレムを使わない壁であれば、その倍は距離を稼げるが、今回の目的にそぐわないので、ゴーレム化して魔核を埋め込んで、頑丈に作る必要があるのだ。
土木組の場合はこういう風に作るが、俺の場合はクリエイトゴーレムで、土木組のしていることを同時に行うかたちで、壁を作ってしまうので、同じ距離作るのに必要な魔力は、六割位で済んでしまう。
それ以上に、土木組の子たちの使っている杖と、俺の使っている杖の魔力消費量を減らす機能や、規模を拡大する機能が違うので、実際にはニ割ほどで出来てしまうのが現状だ。
土木組の目下の目標は、俺と同じ杖をゲットする事だという事で、色々仕事を引き受けているそうだ。
土木組が俺の直属のような扱いでも、俺と同じ性能の杖を渡すのは、良くないとグリエルやリンドにも言われたので、泣く泣く性能の低い杖を渡しているのだ。
その杖も他の魔法使いが見れば、殺してでも奪おうとする奴が出る位、性能がいいらしい。だけどそんな事知った事ではない! オオカミたち! 危ない奴が近付いたら、噛み殺せ! 俺が許可する!
土木組の子たちが欲しいと言った時から、準備を始めているので、全員分の杖を準備しているのだが、ドワーフたちに査定してもらったところ、とんでもない額だったのだ。
でも土木組の子たちは、そこいらのAランク冒険者より高給取りなので、後半年もすれば買う事が出来るだけのお金が貯まるようだ。
ディストピアの関係者で、長者番付を作るとすれば、一位俺、ニ位ゼニス、三位土木組の子たち、次にグリエルとガリアが来ると思う。
俺の給料というか、俺のお金は、商会からのお金が大半だ。今は商会の純利益の半分くらいが、俺に入ってくるんだから、困るとしか言えない。一位とニ位は、天と地ほど違うのだ。
そんなことはどうでもいいか。
一日目の作業が終わった。壁を作る方は問題なかったのだが、木を切っていく妻たちの方の作業が、思った以上に進んでいなかった。
理由は、ディストピアの周りの木より、かなり硬く切り倒すのに時間がかかったためだ。みんなの武器を使えばと思ったが、武器では傷がほとんどつかず色々試しているうちに、斧かのこぎりであれば切る事が出来るとわかった。
伐採のスキルをとる事で、大分改善されたが時間が、かなりかかるとの事だった。
この状態では作業が遅れてしまうので、あまり使いたくなかったが、チェンソーを使う事にした。俺のニ日目は、魔導チェンソーを作るために時間を費やして、三日目からは、チェンソーを使って作業をすることができた。
安全のために年長組と姉御組にチェンソーを使ってもらい、他のメンバーは切り倒した木の枝落としをしてもらって、貯木場に設定した所へ運んでいる。大きいので半分に切ってから、収納のカバンに収めて運搬している。
それにしてもエルフって、こんな硬い木を加工してるのか? 世界樹は次元が違うけどそれ以外で考えると、スキルの補正がなければ……オリハルコンと同等レベルの硬さはある気がする、やばいな。
目標としていた一週間で、壁の作成は終了した。その後は、どこに入り口をつけるかの相談になった。壁と言っても城壁のように弓を撃つ凹凸も準備しているので、安全に攻撃できるだろう。
エルフの街に来てから十日で、壁と畑に使える土地の整備が終わった。壁の外のニ十メートル程は木を全部切り倒して、木材として使えるように貯木場に大量に放置してある。
これはサービスで行った事なので、特にお金の請求をする事は無い。これにはかなり感謝された。監視をしていたメンバーから、チェンソーの販売をお願いされたが、ドワーフが作れるか分からなかったので、保留にしている。
壁を作ったことにより、エルフたちは概ね好意的な雰囲気で迎えてくれている。例外があるとすれば、人間の欲望の対象になった、比較的高齢なエルフたちだろう。
俺もその憎しみを持つなとは言わないが、壁を作った俺たちと、欲望に駆られてエルフを奴隷にしていた人間を、一緒にするなと言いたい。だから、近付いてこないでほしい所だ。
人間がみんな、俺たちみたいなやつではないので、俺たち以外の人間は、自分たちで信頼を勝ち取ってくれ。エルフにはリンドから、何度も人間について説明をさせて、危機感を持ってもらっている。
高齢のエルフ程警戒しろとは言わないが、ちょっと危機感が薄いので、追加で門の内側に外から訪れた者たちを、泊められるように内壁を作っている。俺たちにできるのはここまで! 帰ったらドワーフに、チェンソーが作れるか確認しておかないとな。
今回の土木組の報酬は、この森でとれる希少な素材や魔物のドロップ品、特殊鉱石を結構な量払われたので、それを適正価格で買い、みんなに分配している。
この十日程でAランク冒険者の、半年から一年分のお金を手に入れている。レベルを上げないと効率のいい土木工事は行えないが、多少でも使えれば食うに困らないだけの、お金を稼げるはずなんだよな。土魔法には、もっと人気が出てほしいものだ。
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