607話 問題発覚
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岩塩を売る街を作る予定地に到着した。
「シュウ様、どの位の広さで街を作るんですか?」
土木組の子からそう質問を受けた。
「そうだね、広さ的にはバレルの街と同じくらいの広さかな? ここは水が足りないから、ディストピアに近い給水システムを作る予定だよ。
水生成の魔道具じゃなくて、ダンジョンの機能で湧き水を利用できないかって、考えている。掘ったらたまたま湧き水が大量に出たから、街を作ったみたいな感じにする予定だよ」
「バレルの街みたいにするのなら、水のわく場所は一番高い所ですか?」
「多分そうなるかな? バレルみたいにポンプを使うとなると、余計な労力が必要になるから、今回は湧き水をうまい事街で一番高い所から湧くようにして、そこに領主館を作ってって感じになると思う。
まだ計画段階だから、この位しか決まってないけど、土台を作るのが俺たち……違うな土木組の仕事だよ」
俺が土木組にそういうと、みんながキリッとした顔をして俺の事を見返してきた。
「暗くなるまでにあまり時間が無いから、まずは野営地を準備しようか。作業は明日から開始で、今日の夜に大体の大きさを決めよう。手が空いてる人は向こうを整地してきてくれ、広く整地する分には問題にならないからよろしく」
俺の指示でみんなが動き出す。
野営地はテントを含め、一時間もかからずに完成した。整地組は、今日はただならしているだけのようだったが、かなり広範囲の整地を行っていた。みんな頑張ったな、明日は土を盛り上げないといけないか。
あれって結構面倒だし、土を大量に準備しないとな~どこから持ってくるか? アースウォールで土を作って、崩して使うか? DPで出すか? そこらへんは夜にでも決めようか。
シルキーたちの作ってくれた食事を、みんなで食べてから明日の話を始める。
街の広さや排水関係の話が終わった後に、土をどうしようか話していると、誰かが「湧き水はずっと湧いてるんだよね? あふれた水はどうするの?」という疑問をつぶやいた。その疑問でみんなが固まってしまった。
慌ててマップ先生を広げて、周辺の地図を確認していく。
「やっぱり岩塩の取れる山を中心に、なだらかな傾斜になっている感じだな。そうなると、ここから沸いた水は、山と反対側に基本は流れていくわけか。
魔物の領域側だったら、それはそれで面倒な話だけど、逆側も近くに川がないから、これはこれで面倒だな。土の回収と同時にここにある川につなげようか」
マップ先生を指さして、ニ十キロメートル程先にある、ダギア近くを流れる川につなげる事を計画する。
「明日は、四組に分かれて両サイドから一組ずつ、中央から両サイドに向かって一組ずつ出発して、五キロメートル位ずつ穴を掘る事にしようか。
チームの能力的に、俺と姉御組のカエデ、ミリー、リンドが各班のリーダーで、年少組、年中組、年長組、土木組は各四組になるように分かれてくれ。人になる所もあるけど、土木組の子たちで調整するからよろしく」
四組の川堀り部隊が完成する。街側から、リンド、カエデ、ミリー、俺の順で掘り進めていく事が決まり、各組に収納の箱をつけた馬車が配備される。
収納の箱だけだと、中に入れるためには箱の口までもっていかなければならず、収納のカバンみたいな指輪を通して中に入れられる便利機能は無い。土を入れるために、指輪を使い収納のカバンに収めてから箱の上で取り出して、しまう方法をとる必要があった。
出す時は簡単で、箱をひっくり返せば出てくるので大して問題にならない。これは鉄鉱石などを運ぶ時に、使われている手法である。
鉱山では、収納の箱はトロッコに乗せて入れていくのだが、トロッコの横が開閉式になっており、開いた扉部分から、なだれ込ませるような形で入れているらしい。
出発して三十分程で、俺の目的地に到着する。時速一〇〇キロメートルを超すスピードで走れる、ウォーホースのひく馬車だが、いくら衝撃を吸収できるような作りだったとしても、舗装されていない道でスピードを出すと、馬車がシェイクされてしまう。
今回はのんびりと進んで、三十分で到着している。それでもある程度揺れたため、中には酔う子が出てしまった。森の中の方が全然揺れなかったのは、なんでなんだろうな? こういう更地だと通る人がいないから、デコボコになっちゃうとか?
「みんな、あっちの方向に向けて穴を掘ってくよ。幅三メートルのコの字型で、角をとったような丸みを帯びた形で掘ってくよ。まずは線を引こうか。四人で先に、一キロメートル位、線を引いてきてもらっていいかな? 従魔とウォーホースを使って先行して」
土木組と年少組の子たちが先行して、線を引いてきてくれる。
「俺たちは、あの子たちのひいてくれた線にそって、掘っていこうか。幅三メートル、深さニメートル位て掘って行くよ。掘った土は全部回収して、川底や横の部分は補強する。掘る役、回収役、補強役に分かれて、作業開始!」
黙々と作業を続けていると、一時間くらいして、線引きをしていた子たちが戻って来た……遅くない? と思ったら、熱中してやりすぎたようで、中央から向かってきているミリーの組の所まで、線を引いてしまったようだ。
線を引いた事はほめたが、やりすぎた事には注意しておく。
線を引いていた組が戻って来たので、俺たちの作業効率はあがり、かきこドンドンと掘り進めていく。
合流したのは大体五キロメートル付近だが、ミリーたちは大体六キロメートル位掘っていたようだ。掘り始めたのも向こうが速いし、序盤の一時間は、線を引く組と分かれていたから、しょうがないよね。
昼食をはさみ約六時間程で、五キロメートル程補強をしながら、掘り進める事が出来たのだ。現代の日本でもこれだけを六時間で掘るには、かなりの人員と機材を動員しないと無理だ。
魔法って本当に凄いな。一日かからずに、五十人弱でニ十キロメートル以上の川を作ったのだから、本当に凄いとしか言いようがない。
ミリーたちと合流して野営地に戻る途中で、カエデとリンドの組に追いつく事は無かったので、先に戻っていたようだ。一応魔導無線で連絡を取り合っていたから、当たり前なのだけどね。
野営地につくと、カエデとリンドの組は街の予定地に線を引いて、一番下になる段の水の通る溝を掘っていた。思ったより時間が余ってしまったみたいで、工事の下準備を始めていたそうだ。ゆっくり休んでればいいのに……働き者だね。
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