605話 話し合いが始まったと思ったら終わった
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帝国の使者が来たとはいえ、今は夜なので帰るのは面倒だから、明日の朝一で帰ることにした。
多少遅れた所で文句を言ってくる奴を、あの皇帝が派遣してくるわけもないし、今回は皇帝の依頼でニつの街を落としているのだから、文句を言われるはずも無いだろう。
俺たちは時間をかけるために、ラディッツを出て来た部隊を倒すっていう方法をとったんだしな。それでも時間が余って、湖に足を延ばしていたくらいだし。
今日もバーベキューを楽しんでから、風呂に入り就寝した。
朝起きて出発してから気付いた。どっちの街に行けばいいのか、聞くのを忘れていた。ゼニスに連絡をとると何度も謝られたが、こっちも悪いので謝るのは無し! と強引に謝罪を打ち切った。
進んでいくと、シェリルからマップ先生でゼニスの居場所を調べれば、問題なかったのでは? という話が出て、みんな何故気付かなかったのか? と首をかしげてしまった。マップ先生を活用はしているけど、本当の意味で有効利用ができていない感じだ。
ゼニスは俺たちが出発する時は、ラディッツにいたから、そっちだと思っていたが今はダギアにいたのだ。呼ばれたのもダギアの街だったので、今はそちらに向かっている。
ダギアにつくと、門から離れた場所に天幕が建てられていた。俺の持っているのとは違うタイプなので、おそらく帝国か、この周辺の国の物だと思うのだが、何で門の外に野営してるんだ?
到着時間をゼニスに伝えておいたので、出迎えてくれたゼニスが答えてくれた。
「あの天幕は、帝国の近衛騎士団の天幕ですよ。さすがに帝国の街でもない所に、帝国の最高戦力が入るのよろしくないとの事で、外で野営をしています。持ってこれる食材や資材はそう多くないので、足りない分は多少高値で買ってもらっています」
さすが商人、売りどころをきちんと理解して、高く売れる時は高く売っているな。ここで帝国の近衛騎士団に安く売るとなると、それはそれで問題になるので、多少高い位がいいだろう。これでも融通を聞かせてるんだからな。
「で、段取りとか決まってるか?」
「段取りと言いますか、状況報告みたいなもので終わりだと思われます。肝心な部分は皇帝とお話になっているので、近衛の人たちは何も言わないはずです。皇帝の命令だけを忠実に実行する騎士団ですからね」
「何か機械、ゴーレムみたいな騎士団なんだな」
「ん~、言い得て妙な表現ですな。人格や知識がある無しの違いはありますが、帝国の近衛騎士団は命令を忠実にこなす、ゴーレムそのものですね。状況報告はすぐにでも始められるそうなので、こっちの準備が整い次第という事になりますね」
「ちゃっちゃと準備しようか。みんな、向こうの天幕と門の間位に、会談場みたいなのをサクッと準備しよう。
ピーチとライムはダマを連れて、先行して地面をならしておいてくれ、俺たちは机なんかを準備していくからよろしく。従魔たちも念のため半分程、ピーチについてってくれ」
「シュウ君、私も向こうについていきますね」
ミリーがピーチたちについていく、という事でお願いしている。
「俺たちも準備を始めよう。ゼニス、こういった会談で使うような机や椅子って、この街にあるか?」
「探せばあるかもしれないですけど、今のところ知りませんね」
「時間がないから作るのは無しとして、DPで召喚しようか。ゼニス、リンド、どういった机や椅子がいいかアドバイスをしてくれ」
ゼニスとリンド監修の下、今回の会談に必要なものを整えていく。三十分程で荷物がそろったので、ライムが整地をしている所へ向かい机と椅子を並べていく。
太陽がカンカン照りの中遮るものもない所で、というわけにはいかないので、天幕の天井の布だけつけて、太陽を遮るものにしている。
向こうから豪華な鎧を着た騎士が、こっちに向かってきた。
「失礼します。私は、帝国近衛騎士団団長エーリッヒ・ディアボと言います。皇帝の命により、メギドを取り巻く状況が一段落致しましたので、報告をさせていただきたく参りました。会談の場を設けさせていただきまして、ありがとうございます」
うん、礼儀正しいと言っていいのだろう。皇帝の命令を忠実に守るゴーレムというのは、間違っていない評価の様だ。
「わざわざありがとう。簡易的な会談の場で失礼するが、報告をしてもらってもいいだろうか?」
騎士団長のエーリッヒが、肯定で首を縦に振ったため、会談の場の机に誘導する。
「では報告させていただきます」
内容は、メギドの周りにある街、ラディッツとダギアを除いた五つの街の反乱を鎮めてきて、皇帝直轄の街にした事。今回の事についての謝罪、今後も帝国と良好な関係を続けてほしいとお願いされた。
メギドの周りの領主たちが動いた理由はよくわかるし、実質何の被害も無く……街をニつ落とすめんどうな事はあったが……別にいいかと思っていたが、ゼニスがなめられるので、おとがめなしはやめてほしいと耳打ちしてきた。
実質被害は出ていないが、皇帝にお願いされた分の手間賃は、しっかりと報酬としていただくと宣言した。
初めは、街ニつと岩塩・湖が俺への報酬だと思っていたが、ゼニスが言うにはあれは副賞なような物で、俺がそれでいいと言えば、それだけで済ませる可能性が高いとの事だ。
街にしてみても、そもそも俺たちを違法に攻めようとしていたので、皇帝に言われるまでも無く勝てば俺の物になっていたはずで、岩塩や湖はその街の支配下の中にあるので、どっちにしても俺の物になるはずだからとの事だ。
言われてみればそうだな。日本人の俺としては、知識は乏しいのに、こういった事ばっかに頭が働くのは何故なんだろう、と思わなくもない。その無駄な頭の使い方を、技術革新に半分でも向けてくれたら、もっといい生活ができるだろうに。
エーリッヒは、元々準備してあった本を俺に出してきた。
何かと思い中を眺めてみると、お中元のカタログギフトみたいに、色々なものが文字で書かれており、目録のような形になっていた。
「皇帝陛下は、この中から十個程の品を、シュウ殿に報酬としてお渡しする準備ができていますので、ほしいものが決まりましたら、皇帝へ直接ご連絡ください」
帰りの準備を始めたので、俺の方の報告はいらないのかと聞いた所、
『シュウ殿が無意味やたらに住人を殺すことなどないとわかっているので、特に聞かなくても問題は無い』
と皇帝が言われてたとの事で、本当に俺からの報告は何も聞かずに、帰ってしまった。これでいいのだろうか?
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