599話 思ったよりあっさり
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俺らが駆け出してから、まだ三十秒も経っていないだろう。その時間で俺たちは、敵の親玉を射程圏内に収めている。
騎士団長も狙われていることが分かっているため、前に出てこない。シュリは騎士団長にあてる予定なので、動きを見て状況に合わせて、前に出るように指示している。
魔法組と俺は、周囲に魔法で牽制しながら、前衛組の援護を行う。俺は現状でも、エアプレッシャーとエアボールを使いながら魔法行使のため、ゴリゴリと魔力を消費している。
MPポーションを準備しているものの、魔核をつけた特製の杖のおかげで、大分消費量を抑えられている。どんなに抑えられても、俺が魔法を発動しているので、ゼロというわけにはいかない。まぁ、エアプレッシャーの中にいる敵の牽制位は、問題なく行えている。
俺たちが攻め込もうとした時から、マークしていた冒険者七人も、前に出てきて隊列を組んでいるので、ある程度連携の訓練をしたのだろうか? とはいえ、俺たちのやる事はかわらない!
「シュリ! 膠着状態はこっちに不利だ。タイミングを見て、誰でもいいからチェインで引っ張れ! みんなは敵からのチェインに注意しろ!【陽炎】」
火魔法で拳大のサイズの局部的な気温をあげ、その塊を大量に発生させ、目くらましを行った。相手はよくわかっていなかったが、魔法使いが冷静に強い風を作り出し、俺の魔法を消し去った。
しかし俺が陽炎を使った瞬間に、シュリが反応してチェインを相手の前衛に絡めていた。そのまま力任せに引っ張られ、敵の冒険者側のタンクが俺たちの前に引きずり出される。すかさず、ネルが意識を刈り取った……え!? ネルがっ!?
どうやら回復魔法の応用で、過剰回復で気絶させたようだ。しかも影響を残さないように首に、短時間に強い回復魔法をかけていた。そうすることによって、意識がなくなるようだ。
戦闘後にそれを聞いた時には、ちょっとビビってしまった。本来のように回復するつもりで、魔法を使ってもオーバーヒールは起こらないが、意識的に行う事によって発生させることが可能なようだ。うん、こわひ。
敵の冒険者より、兵士たちの方がこういった戦いを知っているのか、隊列を変える指示を出していた。三人一組のスリーマンセルになっただけだけどな。
周囲を魔法で牽制しながら対応を考えていると、弓使いのメアリーとマリアが、雷付与魔法を使った神速の矢による攻撃を行っていた。あまりにも速いので敵もすべてを防ぐ事は出来ていない。小さい傷とはいえ、傷がつけば有利になるものだ。
攻撃して離れてを繰り返していると、騎士団長を含めた三人が後ろに位置して、他の三組は真ん中の組がトップに、他の2組が斜め後ろに位置していた。スリーマンセルで無理やり作った、ダイヤモンド形の陣形だ。
「そろそろ良さそうか……ピーチ、前の三人いけると思うか?」
「そういう事ですか、問題ないです。シュリ、リリー、シャル、合図で前三人を引きますよ。誰かリリーとシャルのフォローを! イリア、敵に範囲魔法で牽制!」
今更だが、シャルロットはみんなにシャルと呼ばれているので、俺もそう呼ぶようになっている。
ピーチから指示を受けたイリアは、火精霊を呼びだして先程俺がつかった、マルチプルフレアを協力して再現しようとしていた。イメージ不足を精霊が補い、目くらましとしては上々の効果を表した。
敵のタンクも魔法使いも、魔法を防ぐ事に必死になり注意がそれてしまう。その隙を見逃ず、シュリたちは手分けをして、前にいた三人をチェインで強引に引き寄せる。
シュリは一人でも問題ないが、リリーとシャルはスリーマンセルを組んでいたメンバーに、手伝ってもらい引き寄せている。
引き寄せられた敵は、一人ずつばらけてしまったため、抵抗らしい抵抗も出来ずに、意識を刈り取られている。無茶な抵抗しようとしたためか、ニ人は膝や肘が曲がってはいけない方に曲がっていた。、痛そうだ。
戦闘が始まっておよそ五分。その間に主力が四人も倒されれば、部隊の士気も駄々下がりだ。それを見ていられなかった騎士団長は、副官と思われるニ人を連れて前に出てきて、俺たちを攻撃し始めた。
「盗賊風情がここまで強いとはな! だが私と対峙した事を後悔するがいい」
「カッコいいこと言ってるけど、初めにも言った通り皇帝から依頼されて、ラディッツの領主の蛮行を止めるために派遣されてるんだ。それに歯向かうって事は、どういうことか理解してるよな? 最悪、国家反逆罪にも問われるぞ?」
「盗賊が一度ならずニ度までも、皇帝陛下の名をかたるなど……無礼にもほどがある! ここで屍を晒していけ!」
「こいつ聞く耳持たないから、実力で黙らせる以外なさそうだな。シュリは団長、アリスは右、おっ! 来たか……ダマは左の奴を黙らせろ!」
『獣使いのあらいご主人様だニャー。でも頼られるのは悪くないニゃー! 全力で相手するニャー!』
ダマよ、お前のキャラがよくわからん。五分ちょっとで、森の中の別動隊を行動不能にして、もうこっちに合流したか。でもな、お前が全力を出すと、大丈夫なのか?
シュリには、いつの間にか現れたハクが、フォローをするように側を飛んでいる。アリスにはライムがついている。スリーマンセルのはずが、いつの間にかそうじゃなくなってるけど、実力的には問題ないから大丈夫か?
でもな、手伝う気があるのか不明だが、ダマの背中に乗っているニコは何がしたいんだ?
「魔物を手先として使うとは、やはり魔のモノか! 帝国から出ていけ! 違うな、ここで屍をさらせ!」
「それしか言えんのか? あんまり時間をかける意味はないから、さっさと終わらせよう」
そういうと、一番初めに動いたのはダマだった。俺たちが複数で止めた事を考えれば、いくら強い騎士とはいえ、一人に止められるわけがない。初撃は盾で抑えたが、吹き飛ばされ追撃で地面にたたき伏せられていた。
アリスの方もあまり変わりはなかった。ライムの魔法援護の隙に懐へ入り込み、切りかかると思えば蹴り飛ばして、追撃をかけ鞘に入ったままの剣で、顎を強打をして意識を刈り取っていた。
最後の相手は別格とはいえ、シュリが相手をするので無力化されるまでにそう時間はかかっていない。かかっていないが、他のニに人に比べるとやはり長くなっている。
盾の使い方が上手く、シュリの攻撃を受け流しており、残っていたマークしてある六人からの援護もあり、攻めづらそうにしてはいたが、ハクのブレスによって援護の手が弱まった所で、団長が受け流し切れなくなりそのまま倒れた。
残りの六人もすぐに無力化され、エアプレッシャーを受けている残りの後衛の敵は、そのまま何もできずに十分ほどで、全員無力化されてしまった。
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