589話 夜になった
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野営地は夜になり、闇に包まれた……なんてことは無い。敵を発見しにくくする要因は、視界の悪さや明るさ、後はスキルが影響してくるので、道の真ん中に陣をとり、視界の悪さを可能な限り排除した。
それに光を確保するために、電柱のような魔道具を野営地の周りに配置している。野営地から約一〇〇メートル程は、昼間のように明るく見通しがいい。
ちなみに電柱のような魔道具と言ったが、棒の先に光を放つ魔道具を設置しただけのものだ。それを地面に突き刺して配置しているだけなのだ。
野営地の様子をながめていると、レイリーが中隊長を集めて何か指示を出しているようだった。冒険者は食事をとり休憩をしているようだ。この後の事を話しているのだろうか? 様子を見ていると、中隊長たちが冒険者たちに指示を出している。
野営地の外に向かう者、テントの中に入って行く者、お風呂へ向かう者と、別れて行動が始まったようだ。その後中隊長たちは、そのまま食事を開始した。
冒険者たちの後に、食事をとるんだな。それに、他の軍だと士官の人たちは、一般兵と同じ食事をとる事は無いだろうが……ディストピアの軍で、シルキーが食事を作っているのに、変える必要はない。
ディストピアの軍なら、まずい飯でもみんな同じ食事をとるのが当たり前だ。俺だったらそうするもん。
士官が美味い物を食うくらいなら、全員の食事の量を増やすだろう。俺がそういう考えなので、ディストピアの上層部がそういう風に行動するべきとしている。
士官が最前線で、一般兵の十倍以上活躍しながら指揮できるのなら、飯に差をつけていいと思うが、士官たちは指揮をするのが仕事で、前線で危険な目に合うのは一般の兵士なのだから、食事は同じで良いと思う。別に作るのは労力の無駄だしな!
指揮官たちが普通に食べれる状況なら、むしろ一般の兵士たちの食事の向上を図るな。指揮官たちは死ねと言って責任を取るのが仕事、兵士たちは指示に従い命をかけるのが仕事。
その辺りは、給料で差がついているので、士気向上や現場で率先して命をかける分、美味しいものを食べさせるべきだと考えている。
よく見るとドワーフたちが、炉の前で作業をしている。今の所酒を飲んでいる様子は無いので、メンテナンスが終わったら飲むのだろうか?
しっかりと作業をしてくれているので、俺に文句は無い。中隊長に限らず冒険者にも、お酒を出すことを伝えているが、今日は誰も飲もうとしなかった。戦闘の前に酒を飲んで、思考を鈍らせる必要なんてないから、との事だ。
時間が経ち、俺たちの野営地も静かになった。俺は一応探知結界を張っているので、マップ先生に頼らなくても、どのくらいの大きさのものが侵入してきたかは、わかるようにしている。
ちょこちょこと小動物が結界にかかるので面倒だと思い、大きさをある程度以上の物に反応するように、条件付けをした。
マップ先生や結界がなくても、クロやギン、オオカミ系の従魔の鼻はごまかせないだろう。それにダマの探知能力もかなり高いので、不意打ちは無理だろう。
無理なのに来てしまうのは、世の常だろう。だって相手は、従魔たちの存在を知らないんだから、しょうがないよな。従魔たちの前に、冒険者に見つかっているのだから、奇襲など成功するわけもなかった。
冒険者が敵を発見すると、警鐘が鳴らされた。鳴らされると、野営にあたっていたメンバーが、敵の発見された方に集まっていく。休んでいたメンバーが装備を片手に、野営のメンバーが抜けた場所を埋めるように集まってきている。
前線で警戒しているのは、警鐘が鳴らされてもその場に残っていた野営のメンバーだ。その後ろで、到着して休憩していた冒険者たちが、装備を身に着けている。それも全員ではなく、半分ずつ位で交代で身に着けているようだ。
何で俺がこんな事が分かるって? そんなの決まっている。俺の天幕の傍に十メートル程の物見櫓を立てて、そのに上って見ているからだ。
タイミングよくここにいたのは、マップ先生のおかげで近付いてきているのを発見したので、みんながどう対応するかを見るためだ。
それともう一つ、ここから狙撃をしてもいいかなって思っている。前手に入れたシューティングスターを持ち出している。他にも三幼女がついてきたいと言ったので、イリアの魔法が飛んでいく可能性もある。
他のメンバーは、冒険者の内側に待機して、怪我をした際の対応にあたるようだ。年少組は、姉御組の見守りの中という事になっているけどね。
大怪我をしても治せるはずだから、大丈夫だ。できるだけ大けがはしてほしくないけどね。
今回、ダギアから送り込まれた敵は、およそ五十人位からなる、動きの速そうな人たちだった。マップ先生で森? 林? を移動している速度を考えると、よく訓練された兵士だとは思う。なので、無駄にしないために、レイリーに一応お願いをしてみた。
「冒険者たちが大怪我しなさそうなら、生け捕りでお願い」
と伝えた。生け捕りと言った時点で、レイリーは大体の事を理解してくれたようで返事は、『回復魔法で治せる程度なら問題ないですね』と言って通信を切った。
俺はDPで召喚した魔改造した双眼鏡を使って、冒険者たちの活躍をながめてみる。
大体同じ数位だろうか? 見た感じ三個中隊の四十八人と、隊長のレイリーの合わせた四十九人がいる。その後ろに中型犬サイズのダマが、寝転がっている……お前は何をしたいんだ?
レイリーが何か言っているが、さすがに聞こえないのでどうにもならないが、戦いはしっかり見れているので問題ないだろう。
ダギアから来た兵士たちは、全員が黒色の軽装をしており、見つかったからといって撤退しようとしていない。
おそらくだが、俺の睨んだ通り使い捨て兵とか人質をとられてきている兵なのだろう。マップ先生で調べた時に、奴隷兵と言った情報がなかったので、おそらくそうじゃないかと思い、レイリーに生け捕りを指示していた。
戦闘が開始されると、レベル的なハンデを覆して、冒険者と健闘している。冒険者の平均が一〇〇超えているのに対して、今回攻めてきた兵士たちは平均七十ちょっとしかないのだ。
俺からすれば五十歩百歩なんだけど、レベル三十も離れていれば、ステータスは絶望とまではいかないが、かなりの開きが出てくる。それなのに健闘しているとか、後に引けない何かがあるのだろうか?
それに冒険者たちは、能力向上を覚えているので、ステータスでみると更にはなれているはずだ。やはり、おかしい。
「レイリー、生け捕りは難しそうか?」
『予想していたより強いので、手加減して倒せる相手ではなさそうですね』
「これから俺が介入するのは、冒険者に悪い印象を与えるかな?」
『シュウ様が何しようと、冒険者たちは何も思わないかと。行軍中話していましたが、奥さんや旦那、家族にお前は死んでもいいけど、シュウ様に怪我一つさせるな。ってほとんどの人間が言われたそうなので、シュウ様が怪我をしないのであれば、すべてを気にしないと思います』
「それって何かの宗教か? ライムを行かせるから、到着したら冒険者にいったん引くように伝えてくれ」
『了解です』
レイリーに連絡をとった後、ライムに簡単に状況を説明し、エリアスタンで行動不能にしてくれと頼んだ。
ライムが到着し冒険者たちが、何かを投げつけてから離脱している。投げつけられた側は煩わしそうにしている。そこに閃光のようなまぶしい光が瞬くと、ダギアの兵士たちが倒れる。
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