560話 暗黒トラップの先
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七十三階が、前の二階と変わらない事を伝えに、みんなの所へ戻る。
「みんな、お疲れ。やっぱり明るくなったね。七十三階は、今までの階と同じで真っ暗だったよ。仮説を立てたから、夕食の後にでも聞いてほしいんだけどよろしくね。お腹すいたから準備が終わったら食べよう!」
みんなお腹がすいているようで、黙々と準備を行った。準備が終わると食事の前にみんなで挨拶をして、そのまま食事になる。無言で黙々と食事を食べている姿を見ると、俺を含めてお腹がかなりすいていたのだと感じた。結界を張っている。
「お腹いっぱいになった~、じゃぁみんな、俺の仮説を聞いてもらっていいかな」
周りを見るとみんなが、俺の方を見ているので問題なさそうだ。
「前の二つ階を踏破して気付いた事を元に、予想を立ててみたから聞いてほしい。階段を降りようとしたら、ダンジョン内が明るくなった。おそらくだけど、降りるだけじゃなくて、ある境界線を越えたらそのフロアの暗黒トラップが解除されると思うんだ」
「シュウ君、それってどういうこと?」
「よく考えてみてほしいんだけど、このダンジョンって五階毎にエレベーターがあるでしょ? 境界を越えた際に明るくなるなら、下から登って来た時も解除されると思うんだ。上から下じゃないとだめとなると、どういう基準で判定しているかも謎だから、センサーみたいなのがあって反応していると考えてる」
「だからどういうこと?」
「一度七十五階まで行けば、エレベーターの近くにある階段を降りれば、七十五階が明るくなるよね? そしたら七十五階を探索できるよね。今度は七十四階へ移って同じことをする、七十一階までそれの繰り返して、暗闇じゃないフロアを探索できるってことになると思うんだ」
「あ! そういう事なんだ。ずっと暗闇のままじゃ探索できないし。上から進んでくとなると、一度階段にたどり着いてから、そのフロアを探索って……道が分かってても大変だよね。踏破したパーティーに手伝ってもらえれば、簡単に踏破も出来て探索もできるってことになるよね」
「そうだね、時間でまた暗闇になると思うんだ、どのくらいの時間明るくなっているのかは、きちんと調べた方がいいと思うけど、おそらくこんな感じじゃないかと思う」
みんなも俺の言いたいことを理解してくれたようで、自分の中でかみ砕いている様子だ。
「ご主人様、態々下の階から登ってきて、探索する意味なんてあるの?」
「そればっかりは、調査してみないと分からないけど、特産になる何かがあるはず。このダンジョンを作った人間の事を考えれば、無駄な事は無いと思う。本当に嫌がらせのためのフロアの可能性もあるから、絶対とは言えないかな」
俺の仮説だからあってるとは限らないと言い含めておく。少なくとも俺のゲーマーとしての勘が、このフロアに無駄な事は無いと訴えてきているので、何かしらのメリットが存在していると思う。
俺と似た思考の持ち主が作ったダンジョンだと思うので、ただ真っ暗闇で階段を超えるとフロアが明るくなるのは、何かを探せという事だと思う。それがお宝なのか、何なのか俺には分からないけど、何かしらの理由があるはずだ。今すぐに探索するのは、何かが違うと思うので後回しにする。
一日で二階分の階段を探せたのは、運が良かった。この後俺たちは、三日をかけて七十五階まで降りた。特に変わった事も無かったので特筆する事も無かった。七十五階を攻略してエレベーターで地上へ戻り一夜が明けた。
「次は七十六階だな。どんなフロアか楽しみだ!」
七十五階を攻略して、何故七十六階をのぞかないのか、不思議に思っていた妻たちもいたが「何も分からない状態での攻略の方が面白いじゃん!」と言い切り、反論を一切受け付けなかった。
七十六階への階段を降りて行くと……
「Oh……」
何故か外人風に言ってしまった。この光景を見たらしょうがないよね。いわゆる一フロアの壁ぶち抜きの階層なのだが、今俺たちが立っている所は、壁付近なのだが七十六階の地面までは、まだ十メートル以上はある位置で崖の途中にある踊り場みたいなところだ。
下には森が広がっており、昆虫系が明らかにいるよな。黒い悪魔が出てこないか心配になってくる。もし出てくるようなら、森を焼き尽くして進む所存である! ダンジョンの中の森なら、一週間もすれば元に戻るし、環境破壊にすらならないよな。
「宣言しとくわ、黒い悪魔がいたら森を焼き払ったり、押し流したりしながら進むのでよろしく。いなければ普通に進んでいくつもりだから、黒い悪魔がいたら報告をしてくれ!」
若干怯えながら階段を降りて行く。蜘蛛やムカデは平気だったのに、何で黒い悪魔はダメなんだろうな? 生理的な拒否反応だからかな?
進んでいくと、昆虫パラダイスだという事が判明した。でかいカマキリも蜘蛛もムカデも不気味だとは思うが、黒い悪魔程の嫌悪感は無いし倒すことにためらいはないけど、黒い悪魔は近付くのも全力で拒否したいからな。出てこない事を祈るばかりだ。
「それにしても昆虫も一メートル位まででかくなって、Lvが八十前後で低いとは言っても、一種の装甲車みたいなものだよな。それがキレイな流曲線を描いているのだから、こいつに向かってピースとか撃っても跳弾みたいになって、跳ね返りそうだ。
隙間を狙って剣を振るのも面倒だな。いっそのこと鈍器みたいなもので、圧殺する方が簡単かな? リンド、こいつらなら近付いても大丈夫か?」
「あいつじゃなければ問題ないわ! 前に作ったウォーハンマーを使ってみようかしら。重量級の武器だから、当てられるか微妙な所だけど……」
「それなら、バインド系の魔法を使うから、そいつにとどめをさす方向で行こう!」
リンドのというより、鈍器による圧殺は剣を用いた斬撃より圧倒的に楽だった。問題だったのは、打撃系の攻撃である素手や手甲の効果が、いまいちだったことだろう。効いていないわけじゃないんだけど、浸透勁などの内部破壊を目的とした打撃技がほとんど効かないため、シェリルとネルがめっちゃ怒っていた。
最初は純粋なバインド系移動阻害魔法を使っていたのだが、七十一階から七十五階とちがい、敵の数がやたらと多いうえに、1フロアぶち抜きの階層なだけあって、ワラワラと魔物が寄ってきてめんどくさいのだ。
火魔法で焼き尽くそうかとも考えたが、森の中で火事に囲まれても面倒なので、昆虫系なら冷気に弱いと判断して、広域冷凍魔法で行動阻害を兼たブリザードのような魔法を使っている。冷気に予想以上に弱かった昆虫系の魔物は、斬撃でも簡単に対処できるようになっていた。
それでも広範囲に魔法を使うため、魔法組の負担がかなり増えてしまった。
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