547話 ここまで来て野営だと……
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メギドを出発してから十日目の夕方、目的地はすぐそこだ。
魔物の領域である森に到達したのが、メギドを出発して六日目の昼だった。そこから約三日半かけて、ドーンボーンに到着したことになる。
帝国側からの道がなかったので、自分たちで切り開きながら入る事になった。本来ドーンボーンへの道は、二通りしかないとの事だ。帝国と王国の領土をそのまま広げていくと、ちょうど境界線になるような位置に道があるそうだ。
何でそんな位置に作ったか分からないが、ドーンボーンに行こうとする行商人たちは、その道を通るしかないのだが、俺たちは自前で整備できるので何の問題も無い。もともとドーンボーンに通じている道は、馬車が二台通れる幅で、森に接している面には三メートル程の壁があるそうだ。
行商人たちが行き来するってことは、ある程度安全じゃないと無理だと思っていたが、壁があるのなら納得だ。魔物の領域を行商人が突っ切る、という行動をとるのは不思議に思っていたので、一つ悩みが解決した。
自分たちで道を切り開かなくても、元々ある道を使えばよかったのでは? と言われたが、野営の時に面倒なことになりそうだったので、自分たちだけでのんびりと進める道を作る事にしたのだ。俺たちは一回、もしくは帰り道に使って二回しか使わないだろうけどな。
整地は、斥候やアタッカーに周りの敵を排除してもらいながら、タンクのメンバーが馬車が3台程通れる道を武器で切り開いていく。
年少組のタンクは切り倒された木の中で、木材として使える物の枝を落としていく。ここで集めた木材は、野営地になる場所に運んで簡単な雨をしのげるような建築物を作る予定だ。ログハウスの壁無しバージョンみたいな感じだ。柱を立てて屋根をつける。
最後に魔法組が道を作っていく。タンクが切り開いてくれた道に残っている切り株を覆うように土魔法で平らにならす。この時にはいつも使っているアースウォールではなく、魔力を多く込めてLvの高いストーンウォールを使用している。
そして同じように壁もストーンウォールで作成している。高さはもともとある道と同じで三メートル位で作っている。補強するために二十メートル毎に、支えみたいなものも作成している。
もし馬車にトラブルがあった際には、その間に移動して他の馬車の通行を妨げないようにできる工夫もしてある。自分で使うわけじゃないのに、ここまでする必要あったかな?
作業して進んでいるのに、普通の馬車が一日で移動する距離と同じくらい道を、切り開いている。おかげで色々考えずに、野営を出来る空間を作成に入れた。馬車が三十台程入っても、問題ないサイズで野営地を作っている。
馬五台くらいの商隊六個と考えれば、ちょうどいいだろうか? そもそもどのくらいの人数が使うか分からんから、あまり大きく作りたくない。足りなかったらあきらめろ! 通路も多少広いから一晩過ごすくらいは、問題ないだろう。
野営地は、外周に馬車が停められるようにして、内側に人間が過ごせるようにしてあり、テントが建てられるように屋根はつけていない。壁で野営地を囲ってあったら、煮炊きもある程度するだろうから、こういったところには屋根がない方がいい。
馬車の止められる外縁部は、屋根がつけてある。馬や馬車が雨ざらしにならないように配慮である。後は夜番が楽になるように、馬車置き場は見通しを良くしてある。
今回は俺たちしかいなので、自重しないでテント等を大きく建てている。綺麗に晴れていたので、久々の出番のスクリーンシアターをセットして、映画を見ることにした。
火を焚いていないと、明かりが月明りしかないので映画館のように、大迫力な映画を楽しめる。ちなみに見た映画は、めちゃくちゃ早いタクシーの運転手と言っていいのだろうか? それと刑事が繰り広げるドタバタコメディー映画だ。
音は漏れないように遮音結界を張って、臭いを遮断する結界の二種を張っている。
二日目は雨が急に降ってきて大変だったが、一日目と同じ距離を進むために大分無理をしてしまっている。大変だったこともあり、雨も降っていたのでその夜は、大きく作ったお風呂でのんびりくつろいでから寝る事になった。
三日目、まぁ今日だな。昨日の無理が影響して、起きる時間が全員遅かったが、特に何もなく整地を進めて現在に至る。
という事で、ドーンボーンの城壁近くまで到着したのだが……
「門が見当たらないな。おまけに城壁がかなり高いせいか、監視もいないから呼びかけようがない。暗くなってないから見えるはずなんだけど、人がいなければ見つけてもらいようもないな。
せめて呼び鈴みたいなのがあればいいのにな、気付いてもらえないみたいだから、銅鑼でもならそうか? そうすれば気付いてもらえるかな?」
「シュウ様、それはさすがに拙いかと、なのでここは魔法を撃ちあげてみてはどうですか? 銅鑼だと魔物が寄ってくると思いますが、魔法なら力の差を感じて近付いてこないと思うのですが」
「よし、それを採用しよう。周りに影響が出ない事を考えると、ドラゴンの形をした水魔法とか良さそうだな。誰か見に来るだろ?」
周りからドラゴンはやめた方がいいのでは? と突っ込まれたが俺はそれを無視して、水魔法で作ったドラゴンを真上に打ち上げる。その場にとどまらせた後に、森側に向かって落ちるようにした。
中からザワザワと声が聞こえてきているので、水のドラゴンには気付いてもらえたようだ。
十分しても城壁の上に人が現れないので、のんびりとお茶を飲む事にした。三十分過ぎても誰も来ず、そのうち日が暮れてしまった。たまに松明や光る魔道具を持って歩いている兵士っぽいのが見えるが、曇っており魔物の領域は、城壁の上からでは真っ暗に見えているのだろう。
日が暮れる前に今日遭遇することはあきらめていたので、城壁沿いにテントを建てて休んでいる。ドーンボーンは魔物の森を抜けてきた軍隊がいる時は、どうするつもりなんだろうな? 城壁を壊せるだけの何かがあったら、なすがまま蹂躙されるんじゃねえか?
どうでもいい事を考えながら街の外での時間を過ごしていた。
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