528話 フレデリクの中!
アクセスありがとうございます。
「おっと、領主館に行く前にしなきゃいけない事があったな。冒険者のみんなと土木組、カエデ・ミリー・リンドは、ここに残って魔物を引き続き処理してくれ。新入りのオオカミとスライムたちは、土木組の護衛任せたぞ!」
「「「「ワフンッ!」」」」
オオカミたちが一斉に声をあげた。その背中でスライムたちも任せろと言わんばかりに、体を高速でプルプル震わせていた。
「出発するけど、初めに行くのは試験農場の皆さんの所に行って、食料の買い占めの実態を再度確認して、書面にしてから商会に向かおうか。だいたいどの位の量を、不法な値段で買い取られたか知っておかないとな。後、騎士団長と地位の高そうなやつを二、三人連れてくわ」
騎士団長と偉そうな奴の両手両足を、ミスリル合金で作った手錠で固定して。その上から、ロープでグルグル巻きにして、ギンとクロに咥えさせて、ハクに一人捕まえて飛んでもらっている。
「農民の方、ちょっと来てもらっていいですか?」
なんだなんだと言って集まってきてくれた。細かい事情を話して事情聴取を行っていく。隊長と偉そうな奴ら三人を前に出すと、口々に「こいつらに脅されて、はした金で食料を持っていかれた!」と言い出したので、ちょっと治療して色々聞いてみる。
初めは知らないとか言っていたが、シェリルとネルが指をポキポキならして、笑顔で三人に近付いていくと顔面が蒼白になり、聞いた事聞いてない事を洗いざらい吐き出してくれた。
領主は真っ黒だった。近衛ともいえる騎士団長と、側近がしゃべったのだ間違いないだろう。録音もしたし文章にも書き起こした、商会の方に行こうか。持っていかれた分で足りない分の代金は、俺が色を付けてお金を渡している。このお金は領主からむしり取るから、問題ないだろう。
門をくぐろうとしたら兵士に止められたが、魔物を退治していたら騎士団長に襲われて捕えたから、領主に抗議しに行くことを伝える。
もちろん騎士団長たちはしゃべれないようにしているので、話を聞かせてほしいと言われたが、同じ組織の人間に本当のことを言うかも分からないので、話はさせられないと門番のお願いを突っぱねる。
まぁ、はいそうですかと食い下がるわけもなく、話しをさせてくれないなら中には入れられない、という事になってしまった。俺でも同じ対応するわな。
「えっと、俺たちの邪魔をするってことだな? 俺たちを襲ってきた騎士団長を庇って、俺らを通さないってことは、同罪でいいってことか? 実力行使をしてもいいか?」
「ふざけるな! 私は団長と話をさせてくれと、言っているだけだろうが!」
「で、その団長が濡れ衣だとか言ったら、そっちを信じるんだろ? それで俺たちをフレデリクの中に、いれようとしないんだろ? どっちにしても敵だな。そもそも、ここの本当の領主は俺なはずなんだが? 今いる領主は、俺がいない間の代わりなはずだぞ。
国が俺に濡れ衣をかけて、国家反逆罪に仕立てあげた上に、整備の進んだ街を取り上げたんだからな。それも間違いだったと正式声明が出ているから、俺がここに戻ってきたら、俺の街になるはずなんだけどな」
「そんなこと信じられるわけないだろ! 団長と話をさせろ!」
「話をさせてもいいけど、その前に奴隷の首輪を付けさせてもらうわ。こいつが嘘を言わないようにしておかないと、お前たちにまで濡れ衣を着せられそうだしな」
「なっ! そんなこと了承できるわけないだろうが!」
「そろそろ邪魔なんだが、どいてくれないか?」
「だから団長と話をさせろと言っているだろうが!」
「団長と話す事を許可するけど、何を言ってもここを通してもらうがいいか?」
「団長から話された内容次第では、入れる事は出来ない。現状では入れる事は、了承できない状況なのだ!」
「一つ聞くが、自分が悪かったとして、相手に捕えられたとしよう。そこで目の前に仲間がいるとしよう。仲間からお前は悪いことしたのかと聞かれて、お前は『はい』って答えるか?
自分を捕えている者を、悪者に仕立てあげて自分が助かろうとするかもしれないだろ? それを今、お前は俺に了承しろって言ってるんだぞ?」
「団長と話をさせないのであれば、お前らを盗賊として処理する。痛い目にあいたくなければ団長を解放しろ!」
「はい、みんな! 敵意確認、殺さない程度にやっちゃって」
「なっ! 俺たちがフレデリクの門番だと知っての狼藉か? また犯罪を犯すのか!」
「またってどういうことだよハゲ! 俺たちは濡れ衣を被せてきた団長とやらを捕えただけで、犯罪は犯してはいない!」
「団長に従っていれば、問題なかっただろうが!」
「だって濡れ衣を着せられた上に、切りかかられたら撃退するしかないじゃん。それともお前らは、俺に死ねって言うのか? くだらん、【エリアスタン】」
個人に限定した【スタンガン】と違い、多少魔力を多く使うが、範囲を指定してその範囲に、気絶を目的とした魔法が【エリアスタン】だ。
「お? これでも意識保ってられるのか? 動けないだろうけど、頑丈なんだな。職務に忠実な事は悪くないが、俺が領主だったと聞いた時に、きちんと確認するべきだったな。ここの新しい領主が来る前に、一時領主になっていた人間がいたのを、確認しておけばこんな感じにはならなかっただろうな。
俺が領主に戻っても職務を果たした君たちは、有能だと思うから継続して雇わせてもらうよ。君たちが辞めると言わない限りだけどな。ここに寝転がしてたら万が一のことがあるから、門の中に入れておこう。門を閉めておけば、居残り組がそのうち殲滅してくれるだろう」
門番たいを門の中に運び込んで放置しておく。
久しぶりのフレデリクだな。ミリーを向こうに残してきたけど、今戻るより落ち着いてからの方がいいよな。商会に向かって歩いていくと、俺がきているのを誰かが知らせたのか、商会の前で俺の事を待っているメンバーがいた。
ナイスミドルなおじさんだ! なんだろうな、見た目は有能な執事みたいなのに、雰囲気が百戦錬磨の商人みたいな空気を醸し出している。とてもアンバランスだ!
「シュウ様、ゼニス様よりお話は聞いております。こちらで集めた情報を準備していますので、中でご確認ください」
「グリエルが手を回してくれたのかな? どうでもいい領主の事を知る前に聞きたいことがある。この街の食料は問題ないか?」
「五日ほど外から入ってきていないので、住民の食糧事情は良くないと思われます。二日目に領主が買い占めをして、高値で売っているので仕方がなく一日分ずつ位買っているか、ここでは以前と変わらない値段で売り出しているので、何とかなっている感じかと。街の反対から買いに来る人もいますね」
「商会の食料在庫は?」
「心もとない感じです」
「ここにはまだ線路をひいてないからしょうがないか。今回準備してきた分があるから、しばらくはそれを使ってくれ。収納のカバン四個分くらいあったと思うから置いていく。それで対応してくれ。
問題があったらゼニスに連絡を入れて指示を仰いでくれ、俺たちが近くにいるなら俺たちでもいいけどな。領主の情報を確認させてもらうか」
ここの店員が集めてくれたと思っていたら、ここにたまたま来ていた元シングルとスカルズのメンバーが集めてきてくれたそうだ。
読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。




