527話 久しぶりに見た奴
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オーガキングを処理して、拠点に戻ってからマップ先生を見ると、睡眠の必要としない魔物やランクの高い魔物が森に向かっているので、今回のモンスターパレードの中心は、オーガキングで間違いなかったのだろう。これでフレデリクに大きな被害はないだろう。
「みんな、一部の魔物が森に戻り始めたから、今回のモンスターパレードは収束に向かうと思うよ。どのくらいここに留まらないといけないか分からないけど、早めに処理を終えてからディストピアに戻ろう。チビ神の話だと、ディストピアも狙われているようなことを、言っていたからな。今日は風呂入って寝ようか」
俺が作った拠点には、もちろんお風呂が存在している。お風呂の部分だけクリエイトゴーレムを使い魔核まで使用して、いつでもお風呂に入れる状態にしているのだ! さすがに二十人も入れないので、十人ずつ位に分かれて入浴していく。
日が昇り朝食を取りマップ先生で様子を確認すると、冒険者組が外に出て処理にあたっているようだ。サイレントアサシンは、拠点の一角の暗い部屋に集まって、何やらしているようだ。
「朝食が終わったら、俺たちも周りの魔物を退治しに行こうか」
シルキーお手製の朝食はやっぱり美味かった!
半日ほど周りの魔物を倒していると、フレデリクから騎士団が拠点に向かってきたようで呼び戻された。
「ここの責任者に話がある。門をあけよ!」
争う意味は無いので門を開けて中に呼び込む。
「お前は!」
「ん? 何か見覚えのある顔だな、どこであったっけ?」
「今回の騒動はお前の仕業だったのか! 今度は見逃されないぞ!」
「黙れ屑!」
「な、なんだと! 騎士団長の私に向かって、その口のきき方はなんだ!」
「そもそも、魔物なんて俺が操れるわけないだろうが! 常識で考えろハゲ! って俺が毛根殺したんだっけ? そこまでしてないから俺のせいではないな。また的にされたいのか?」
騎士団長と言われてやっとこいつが誰か分かった。豚領主の腰ぎんちゃくみたいなやつだったな。
「何でお前らはここにいるんだ! この魔物が現れたのはつい最近だぞ! そこに国家反逆罪になった人間が現れれば、関係を疑いたくもなるだろう。
いや違うな、お前が犯人だ! フレデリク騎士団長の名において、お前を捕えさせてもらう。大人しくついてこい! 女共はこの悪党に騙されていただけだから、領主から温情がいただけるだろう」
周りに圧力にも似た殺気が辺りを埋め尽くした。妻たちだけでなく、土木組も新しい従魔も冒険者たちまでもが、切り殺さんばかりの殺気を放っていたのだ。
「お前、何を言ってるか分かってるんだろうな? 俺たちの国家反逆罪は、国王が直々に無かったことにしているのに、濡れ衣を被せるのか?」
「どうせ大量の金を渡して、取り消させたのだろう? 俺は誤魔化されんぞ! お前らにうけた屈辱をかえすために、どれだけの訓練をしてきたと思ってるんだ! それに門の破壊だってしているお前が、無罪であるはずがない!」
「お前の私怨も含まれてんじゃねえか! 話にならんな。俺は、近々この付近でモンスターパレードが起きると、予言があったから近くにいただけだ。場所がお世話になっていたフレデリクじゃなければ、俺だってここまで来なかったさ。
そんな俺を犯罪者扱いか……覚悟はできてるんだろうな? また領主を巻き込んでの大騒動になるぞ? 今回も明らかにお前らの方が悪いんだから、また街の権利を俺がもらう事になるな……
ってそもそも、国家反逆罪じゃなくなったんだから、フレデリクって俺の物だろ? それを国から派遣されてきた屑貴族が、我が物顔で治めてるのか? 何かムカついてきた!」
「みなさん、まずはこの人たちを無力化して、街に攻め込みましょう」
ピーチさんや、攻め込むって言っちゃってるよ! 一応俺の街なはずなのに! 国王にちょっと連絡飛ばしとくか? 街を二つ返せって! グリエル任せた! さすがに冒険者に騎士団長を相手にさせるには、レベル的な問題で危険なので、妻の誰かに任せようとしたら。
シェリルがピョンッと前に出てしまったので、他のメンバーは何も言えない様子だった。ネルはシェリルが怪我をしないように、バフ魔法をかけている。全体的な能力向上とダメージ軽減のバフをかけているようだ。
ここまでお膳立てされたら、シェリルも下がらないだろうな。それにシェリルなら即死攻撃は、武器使う組より可能性が下がるだろう。それでもゼロとは言えないのは、妻たちの怒りを一身に背負ってる感じがするから、可能性も捨てきれない。
「本性を現したか下郎共が! お前らを全員捕えて捌いてやる!」
あれ? 腰ぎんちゃくの時なら、「可愛がってから奴隷として売り飛ばしてやる」みたいな事言う奴じゃなかったっけ? 若干矯正されたかもしれないけど、思い込みが激しすぎるし、私怨で目を曇らせているからアウトだけどな。
騎士団長が連れてきた兵士たちと、ディストピアの冒険者はレベル的には同じくらいなので、能力向上を持っているディストピアの冒険者の方が有利だろう。
あ、ちなみにディストピアの冒険者にだけ、能力向上の宝珠を使ったわけじゃないよ! スキルがある事を教えて、使い方を意識しながら狩りをするようにさせてたら、ほとんどの冒険者が覚えたのだ。
冒険者と騎士との勝負は大体が一瞬だった。フルプレートを着れるまで鍛えたはずなのに、矢が狙ったようにつなぎ目の関節に綺麗に入り込んだり、膝を蹴飛ばされて曲がっちゃいけない方に曲がったりしていて、うめき声しか聞こえてこない。
シェリルと騎士団長は、瞬殺ではなかったが一方的な戦闘だった。騎士団長のふるう剣はことごとく空を切っていた。シェリルは華麗にかわしながら、騎士団長をフルプレートの上から殴りつけている。
殴るたびに重低音の鈍い音がしており、騎士団長の顔が歪む。十回ほど重低音が聞こえると、騎士団長のフルプレートはボコボコにへこんでおり、中の騎士団長を圧迫している。呼吸がし辛くなり、十五回目の重低音が聞こえると、その場にパタリと倒れた。
倒れた騎士団長を前に、シェリルがシャドーボクシングのように、シュッシュと口で言いながら拳を突き出している。ウィナー、シェリル! って違うな。自分より三十センチメートル以上低いシェリルに、ノックダウンさせられた騎士団長、哀れなり!
「ここのトップはろくでもない奴なので、叩かなくても色々出てくるだろうから、商会に寄ってから情報をもらって領主館制圧しようか」
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