５１４話 貯まったお金の使い道
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「シュウ様、申し訳ございません」
スタッフルームに戻るや否やゼニスが俺に対して謝ってくる。
「気にするなって、実際絡まれたわけじゃないのに謝られても困る。それより、こういう時こそお前の出番じゃないか？ 面倒な事を押し付ける様で悪いけど、受付の人間に任せるのはかわいそうじゃないか？」
「そうですね。貴族でも王族でも大商人でも、お金を積んでも予約の順番は変わらないと書いてあるのに……シュウ様が来られている時にこの失態」
「おぃおぃ、その表情はちょっと物騒じゃないか？ どうしてもダメそうなら、俺が出るから気楽にやってきてくれ」
俺にそういわれると、足早に四階にあるオーダーメイドの受付に向かっていく。
「どうなるんだろうな？ ゼニスは有能そうだし、貴族の方が大馬鹿でない限り大丈夫かな？」
「そうですね。自分としては煽るだけ煽って、向こうが手を出して来たら切り捨てるのが、楽でいいのですけど」
「おぃおぃ、俺の妻の顔をして物騒な事を言うなよ。今度からそう言う発言は無しな！ それにしてもこの状態じゃ、商会を見て回れな……ってもう回った後だったな。今そこにいるんだから、少し街に出ても問題ないか？」
「それはフラグというものです。なのでやめましょう」
「そっかフラグは怖いな。領主館付きのブラウニーたちに、今日の商会の食事を準備してもらうお願いしようか」
領主館に戻ってブラウニーたちに、今日の商会の状況を教えてスペシャルメニューを作ってくれるように、お願いしておく。いきなりお願いしたのは悪い気がしたが、やる気にみなぎった目をしていたブラウニーをみて気にすることをやめた。
領主館に戻ってすることが無くなったので、ちょっとくつろいでいるとゼニスが走って、俺のいる部屋に入って来た。
「シュウ様。やはりあの貴族は面倒ですね。本音と建前ですか？ 本音では順番を無視することが、できないのはわかっていましたが、従者のいる前で建前として言わないわけにはいかないとかなんとかでした。
それでも建前でも言われるのは迷惑なので、ペナルティーをおってもらいました。受付と私、そしてシュウ様を煩わせたので、注文は受け付けましたが半年先にしました。本来なら三ヵ月で大丈夫だったんですけど、馬鹿ですよね」
「一番面倒なタイプだな。そう言う奴は保身の能力が高いから面倒だよ。今までの屑貴族とは違う意味で、厄介なんだな。とにかく面倒なだけで、時間をかけて対応するしかないか。あのアホ貴族がいる間は、俺から資金を出すから、対応にあたった従業員に金一封を渡しておいてくれ」
「商会のお金は全部シュウ様の物なのですから、シュウ様からお金を受け取らなくても問題ありません。必要経費ですが、シュウ様が許可さえ出していただければ、問題は何もありません！ 商会の売り上げの純利益の五割をシュウ様に届けてもらっていますが、受け取ってくださってますか？」
「あぁ、あれか……金額がでかすぎるから、とりあえず商会が困ったときのために積み立ててるよ」
「へ？ 商会でもきちんともしものために積み立ててますけど、何か使う予定は無いのですか？」
「参考までに、ゼニスだったらあのお金どうやって使う？」
「そうですね、どこかに大きな屋敷を立ててみたり、貴重な物を買い集めてみたりしますかね？」
「大きな屋敷をいくつも持っているし、貴重な物はお金を積んでも買えないようなものが手に入るよ？ つかう方法がなくない？」
「そういわれると、シュウ様が今更お金で買えるもので、必要なものなんてなさそうですね。後は慈善活動や福祉活動ですかね？ あれは、財源がないとできませんから、お金を使うのにはもってこいだと思いますが」
「そっか、ディストピアには孤児院みたいなのはあるけど、他の街にはなかったな。ゼニス、この商会って今、他の街にどのくらいあるんだ？」
「シュウ様が管理している全部の街にありますね。後はそこから周囲一、二個分の街にも支店はありますね。シュウ様の準備してくださった、魔導無線でしたか？ あれは便利ですね！ 情報がすぐに入ってくるので、買いや売りが迅速にできて売り上げが右肩上がりですよ」
そうなんだ。この世界だと情報のやりとりって早馬？ 伝書バト？ 的な何かかな？ どっちにしても文章でのやり取りになるからな。戻ってくるのにも時間がかかるし、一瞬で話の通じる魔導無線は、時間の短縮だけじゃなく、早馬で走らせる人の人件費もカットできる。いいことだらけだな。
「俺の管理している街にある商会の店舗の隣に孤児院を作ろうか。金はいくらかかってもいいから話を進めてもらっていいか？」
「了解いたしました。孤児院の建物はどんな形になさいますか？」
「それは、ドワーフたちを派遣して作ってもらうから、場所だけ確保しておいてくれ。孤児院っていっても、ディストピアでやっている劣化版みたいな感じでやるつもりだから、商会の売り上げで俺に流れてくる分を使っていいかな。
近くの母親に対して、食事の準備をしてくれたら給金を出すし、子供がいるなら一緒に勉強もできるように話を広めてくれ。あと、主人を亡くした奥さんを優先してくれ。あの人たちは苦労してるからな。街を探して、ろくでもない奴以外は全部雇い入れろ」
「わかりました。まずは土地の確保ですね！ 後、同時にシングルマザーの困窮している人たちを探します！」
おっと、シングルマザーって言葉があるのか？ わざわざ、遠回しに言ったのが無駄になったわ！ なんて思っている間に、ゼニスが部屋を出て行って隣の部屋に駆け込んだようだ。隣でドタドタしているので間違いない。大きな声で指示している。内容が酷かった……
『シュウ様からの勅命である！ 全支店に通達！ 各支店の隣に孤児院を建てる事ができるスペースを準備するように！ かかる資金はシュウ様が出してくださるが、無駄なお金は使わない事！ 脅しなどは絶対に使うな！ 使った際には犯罪奴隷落ちにする！
土地の確保と同時に、街にいるシングルマザーの中でまともで生活に困窮している親子を保護せよ。保護した母親には孤児院の管理をしてもらう予定である。どこかの建物を借り入れ、そこで教育をほどこすように！ これは勅命である！』
勅命じゃないから、そして俺が話していないシングルマザーの話が進展してるんだが……孤児院を任せるのはいい案だと思う。
しっかり勉強をしてくれ！ そろそろ元の身体に戻るか！ っとその前にゼニスに今回の作戦にかかわる一切の費用は俺のお金から出すように厳命して、商会のお金は一切使わせないことにした。足りなかったら、絶対に連絡するように言っておいた。
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