435話 領主館攻防戦 前編
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うん、話してみたけどダメでした。怒りのボルテージがMAXなので、俺の話が全く入っていかない。分かってはいたけど、ここまで聞く耳を持たない状況っていうのは初めてだな。
このまま攻め入ると領主館にいる人間を、皆殺しにするんじゃねえかな? 事後処理を考えるとやめてもらいたいんだが……やっぱりそれは許容できないので、強く言うしかないよな。
「キリエ、一〇〇歩譲って殺すのは許すけど、隊長格と上級文官、家臣、領主とその家族を殺すのは絶対にダメだ! これは命令だ。事後処理の事を考えたら、生かしておかないと面倒な事になる。俺の命令がきけないなら作戦への参加はさせない。
事後処理した後に不要になったら、煮るなり焼くなり好きにしていいから今回殺すのは無しだ」
「…………了解しました」
長い沈黙だな、みんなここまで怒る理由が分からんな。確かに非道な行いをしていたが、大なり小なりこういったことは、この世界ではままある事だよな?
「他のみんなもだぞ。絶対に領主と家族は殺すなよ」
他のメンバーにも釘をさしておいた。
準備を始めて十五分、すでに妻たちは準備ができているようで、全員並んで待機していた。装備を見てびっくりした。念のために作っていたパワードスーツを、全員が着用していた。
動きに誤差があるから使いたくない、と言っていたはずなのに。この装備なら、スカルズと一緒で顔を隠すこともできるから、悪くないチョイスかな?
「さて、あんまり時間をかけるわけにもいかないし、スカルズの話では地下に、まだ生きている奴隷たちがいるので、さっさと助けに行こう」
俺の宣言とともに全員で移動する。移動しているメンバーの中で、俺だけが顔をさらしだしている。一応皇帝からもらった印章を使って、強制捜査をする予定だ。念のためにもらっておいたものが、役に立つなんてな。領主館の門地つくと、
「そこの怪し奴ら止まれ! ここをどこだと思っている! さっさと帰れ」
「門番じゃ話にならんけど一応、これを見ても通せないというのか?」
「なんだ? そのダサいバッチは? 馬鹿にしているのなら殺すぞ?」
「やっぱり話にならん、さっさと上司を呼んで来い!」
「さっきから偉そうに、領主の門を守る人間を馬鹿にするなら、奴隷落ちにしてやるぞ!」
「この印章を持っているのに中に入れないとはな。分かってたことだけど、面倒だから押しとおるか」
進み始めた俺を見て、四人いた門番が武器を抜いたが、次の瞬間に地面に突き刺さっていた。文字通り地面に頭から埋まっていた。たぶんあれは、頭蓋骨や首の骨がつぶれてるだろうな、即死だろう。
門番のいなくなった門を、そのまま進んでいく。門から屋敷までは、一〇〇メートル程なのだが、半分程進んでも他の兵士が出てくる様子がない。
マップ先生で確認しても、兵士達はいるのだがこの状況に気付いていないのだ。家まで二〇メートル程になった時、屋敷の廊下を歩いていた文官らしき人間が俺たちを見つけ、何やら笛らしきものを吹いた。
しばらくすると、ワラワラと兵士達が集まってきた。他にも文官もちらほら見える。
「貴様ら、ここを領主様の家だとわかっての狼藉か?」
「これだけいれば、誰か知ってるだろう。これを見ろ! 俺は皇帝から身分を保証されている者だ。この街の領主が不法行為を行っている情報を得たから、調査しに来た。やましい事がないならそこをどけ」
俺のセリフに少し騒がしくなる。文官らしき人間は俺の持っている印章が、何かわかっているためか、若干震えている。中には隠れて逃げようとしているものまでいた。この印章が分からない兵士はポカンとした顔で俺の方を見ていた。皇帝、この印章知ってる人少なすぎるだろ。
「そんなものを見せられても意味はないぞ。はったりをかまして、領主を殺そうとでもしているのだろう? 残念だったな。俺たちにそんな嘘は通じないぞ。全員隊列を組め!」
おそらく隊長らしき人間の命令を受け、兵士たちが隊列を組んでいく。前衛に重戦士の盾持ち、中衛に槍持ち、後衛に魔法と弓使いが並んだ。二十名ずつだろうか?
文官の中には、よくやった殺してしまえ! みたいな顔や、さらに青い顔をして震えあがるものもいた。
「突撃!」
兵士たちが攻撃を仕掛けてきた。重戦士が盾を構えて俺たちに近寄り、後ろから魔法と矢が飛んできた。実力をわからせてやるか、
「【ウィンドウォール】」
壁の能力としては最下級に分類される風の壁だが、矢に対しては軌道をそらせられるので使えない魔法ではない。
これで矢は防げるのだが、魔法隊から放たれた火や土の魔法は、普通ならウィンドウォールで防ぐ事はできない。が、魔力の違いによる理不尽な威力の差で、俺が使った風の壁はすべての魔法をはじいた。
これを見た魔法隊は、すぐに実力差を感じたようだが、攻め方を変えて対応してきた。直接攻撃が無理なら間接的にとの事で魔法を行使してきた。その間も前衛と中衛は進んできている。
土魔法によるピットフォールを使用してきたが、それより先に俺が土魔法でフラットロードという、ただ地面を滑らかにするという魔法だが、それで先に干渉してピットフォールの効果を防ぐ。
こんなことをしているのは無駄なので、
「指示を出した奴以外は殺していい、文官は一応捕えろ。この印章の意味を知っている者がいる気がする」
俺の指示を受けた妻たちは、無手のまま盾持ちの前衛に突っ込んでいく。二十人いた盾持ちの盾が凹んだり穴が開いていて、持っていた手は曲がってはいけない方に曲がっていた。
うめき声がうるさかったのか、全員が足を踏み抜かれて痛みで気絶している。
次のターゲットは槍持ちの中衛だ。槍は接近戦を想定されていない事が多いため、近付かれると何もできない人間が多い。達人なら超近距離でも、色々な対応をしてくるのだが……
中衛の兵士は、槍を折られてその槍で命を落とす者、胸の付近のブレストプレートが陥没し、心臓がつぶれて絶命する者、手足のどこかが千切れかかっている者と、様々な状態だった。
最後に残った後衛は、全員投降の意志を見せたが問答無用で攻撃してきた相手、さらには犯罪行為で手に入れた女性を奴隷に落とし、性処理の道具として壊れるまで弄んでから捨てた人間たちに、妻たちが投降を許すわけもなく、全員が攻撃対象になった。
六十人近くいた兵士の内生き残ったのは、四十四人だった。一瞬で三割近い兵士が死んだ。文官は膝をついて泣き崩れたり、失禁をしている者もいた。
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