410話 三幼女の進化
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チビ神は放っておいて、目の前の模擬戦に集中しようか。日本にいた時は女子供を殴ることになるなんて、思ってもみなかったけど、これが訓練となるならあまり気にならないか?
「よし、みんな準備ができたかな? 着替えるのに時間がかかってたけど、何かあったのか?」
「何もないよ! ご主人様に勝つために、色々作戦を考えてただけなの! ご主人様覚悟なのです!」
「俺もタダで負けるつもりはないからな、勝つ気でやらせてもらうぞ」
「戦闘前の会話はこの辺で終わりにしてください。模擬戦を始めます、開始!」
シェリルが弓から弾かれた矢の如く、俺に突っ込んでくる。馬鹿正直に真正面からだ。突撃にカウンターを合わせるように、右足を振りぬく。
その流れを読んでいたシェリルは、両手をクロスにしてガードをしダメージを散らす……あれ? いつもの装備じゃない! シェリルのガントレットに、小盾なんてついてなかったはずだぞ。いつの間に準備したんだ?
キレイに俺の蹴りのダメージを、霧散させてしまった。
俺が驚いている間に、死角からネルが近寄ってきていた。
索敵スキルのおかげで、近寄って来た事には気付けたのだが、今まで感じていた気配より大分薄かったため反応が遅れてしまう。俺の左わき腹を後方から殴りつける形だ。
俺は慌てて体をひねり、左ひじを滑り込ませるがダメージを受け流せず、くらってしまった。どのくらいのダメージをくらったか、分からないが先手はとられてしまったな。
なんて考えていると、今度は火と土の矢が大量に飛んできた。
慌てずにアースランパートを使用する。ランパート系はウォール系の上位互換と言っていいだろう。より頑丈な壁を作れるイメージだ。
火と土の矢は全部アースランパートで防いだのだが、防いだ次の瞬間嫌な感じがしたため大きく距離をとった。
そうすると、不可視の何かが俺のいた場所で爆発する。イリアもえげつないことするな、目に見える火と土の矢の陰で、風の矢を生み出して誘導弾みたいに、壁を迂回するような形で放っていたのだ。
あれが当たってたら、下手しなくても二枚はシールが壊れた気がするな。もしかしたら、その時点で終わってたかもしれん。素手だからって言って、攻撃力に油断しちゃいけないな。
「イリアも危ないことしてくれるね。全くどこでこんな技術覚えたのやら?」
「シュリお姉ちゃんが倒せないから、頑張って色々考えてるの! それなのにご主人様、初見でかわすとかインチキ!」
シュリに勝つために手段は、選べないって事か……確かにな。
「イリアそれはインチキではない! 勘で距離をとったらその勘が正解だったってだけだ。分かっててかわしたわけじゃない。今度はこっちから行くぞ!」
俺は右足を少し上げて、地面を強く踏みつける。それと同時に【アースクエイク】の威力減少版を使用する。
本来のアースクエイクなら、地面が隆起したり地割れを起こす極悪な魔法なのだが、特定の条件下でしか使用ができないのだ。素手では極悪な威力で使用することはできず、現状で使用できるアースクエイクは、軽く地面を揺らす事しかできないのだ。
だけど、俺が強く地面を踏みつけた瞬間に地面が揺れれば、思考が一時停止してもおかしくない。
俺はその時間を使って、今回の戦闘で一番厄介なイリアを攻撃する選択肢を選ぶ。思考が停止している間に一気に距離を詰めて、無防備なお腹に攻撃を加える……がシェリルによって阻止されてしまう。
最初はどうやって阻止されたのか分からなかったが、シェリルがタンクの勇者から継承したスキルが反応して、チェインと同種の何かが発動され、俺はシェリルに引き寄せられて、完全な体制で防御しているシェリルの小盾に攻撃していた。
やばいな、勝てる気がしないぞ。ネルの気配が薄かったのも、斥候の勇者のスキルの影響か? しょうがない少し考え方を変えるか。
このまま殴り合っても、おそらくシェリルが止まらない限り、俺の攻撃はかなりの可能性で防がれることになるだろう。
予想以上にタンクのスキルも厄介なのだが、それ以上に俺が起こした地震で、思考停止に陥ってる時間が短すぎた、立ち直りが早い、どういうことだ?
戦闘後に話を聞いた所、ご主人様なら地震を起こしても不思議じゃない! と言われてしまって俺が思考停止した。俺ってそんな風に思われてたとはな!
「思ったより三人が勇者から継承したスキルが厄介みたいだから、攻め方を変えるぞ。イリア、魔法とはイメージだ。よく見ておけよ!」
俺は今さっきイリアが使った魔法をアレンジして再現する。火の矢を大量に俺の近くに生み出す。違うのは火の矢の魔法の中に、土の矢の魔法を隠している事だろう。俺はそのまま魔法を解き放つ。
「ご主人様、それだと私が使った魔法より、しょぼいのです!【ウォーターウォール】」
イリアは俺の狙い通り水の壁を唱えた。優位属性だと相殺するのに使う魔力が圧倒的に少なくて済むのだ。だからイリアは火に強い水属性をチョイスしたのだろう。俺はそうなる様に誘導したんだけどな。
火の矢を相殺した次の瞬間、水の壁を土の矢が越えてきたのだ。イリアは驚くしかなかったが、それでもイリアに俺の魔法が当たることは無かった。シェリルが普通は敵を自分に引き寄せるためのチェインを、イリアに使って自分の方に引っ張ったのだ。なんでこんな機転がきくんだシェリルよ。
「シェリルちゃん助かったの。ご主人様の魔法は、見た目に騙されちゃダメだったの。真正面から対応しちゃまずいね」
そうするとイリアが、大きな火球をいくつか生み出して、俺に向かって放ってくる。【アースランパート】俺は弱点属性での相殺ではなく、土の城壁でしのぐことにした。
俺と同じように土魔法が中に入ってたらヤバいからな。火球が土の城壁に当たり大爆発を起こす。しっかりと、火球の中に石つぶてを仕込んでいるあたり、魔法の才能が恐ろしくなってくるな。
爆発に紛れて弾かれて外に向かう、石つぶての威力にもびっくりしたけどな。俺の作った格上の土の城壁に、ヒビが入ったのだからびっくりだよ。やってることが手榴弾と同じ発想だしな。
少し様子をうかがっていると、不意に背中から衝撃が走った。それと同時にシールが二枚一気に吹き飛んだ。後ろを振り向くと、ネルが次の攻撃態勢に入っていた。慌ててガードをするが、態勢も悪く衝撃を殺しきれずに強打されてしまう。
三枚目のシールが吹き飛んだ。あ、負けた……
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