393話 和三盆!
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同行するメンバーは! 引き続き年少組の八人です! 『監視』といいながら、俺に群がって抱き着いてくるので、若干歩きにくいが三幼女以外が、こういった行動をとるのは珍しいな。
妻なのに、子供の引率している気分になるのは、なぜだろう? この世界の子たちは、日本に比べて年齢の割に大人びているんだけど、この娘たちは親から引き離されたのが早かったためか、こういった時は全力で甘えてくるんだよな。可愛いからどんとこい!
さてさて、ダンジョン農園の一角に到着!
「ほ~、ここが砂糖を作ってる場所か、甘いにおいがするな」
俺のセリフに合わせたように、みんなが『甘いにおいがする』と声をあげていた。
「長い間使っていたわけじゃないのに、こうなんていうか……風格があるのだが」
「それは私から説明させていただきます。砂糖の工房を作ろうとした時に見た映像資料が、和三盆のものでした。言葉は悪いですが、少し古ぼけたような建物でして、この世界ではあまり見ないタイプの建物だったのです。
ノーマン様に相談した所、建物を召喚するのに中古物件と呼ばれる、格安で作れる似たような建物がありまして、それをいくつか並べて召喚してもらった後に、ドワーフの方に頼んで壁を抜いて一つの建物にしてもらいました」
一緒についてきたブラウニーの一人が、俺の前に来てそう説明してくれた。
「まさかの中古物件? あぁ、本当にあるじゃん。元の世界のだけじゃなくて、この世界のものもあるな。どういうことだこれ? 昔見た時はこんな項目無かったのにな……えっ? アニメやゲームの中の建物まであるってどういう事? ここまでくるとさらに意味が分からん」
若干頭が痛くなってきた。
「いや、ダンマスのスキルを気にしてもしょうがない。考えたって分からない事なんだから考える意味がないな! 気持ちを入れ替えて、和三盆の体験をしよう!」
ブラウニーに連れられて砂糖工房の中に入っていく。見たことないような器具がいくつか並んでいた。長方形の箱があって、その中心に丸太が入るようになっているような器具だ。絞るという工程で梃子の原理を使って絞り出す道具だろう。
みんなも興味津々でキョロキョロしている。
あれ? 砂糖工房の中に入ったのに、そのまま工房を通り抜けてサトウキビ畑に来てしまった。
「ご主人様、変な顔をされてどうしましたか? まさか和三盆作りの体験というのに、サトウキビの収穫をしないつもりでしたか?」
おっと、これはテレビ番組でよくあるパターンの全工程体験型の感じだな。普通に考えて和三盆の要の研ぐ工程だけしてもつまらないよね? そこをしっかり考えてくれていたようだ。わざわざ工房を通り抜けたのだろうか? 謎は深まる。
色々考えている間に、サトウキビの収穫が始まった。あれ? サトウキビの収穫に使う道具ってハサミなのか? 枝切ばさみの様な、太い物でも切断できるタイプのハサミだ。この無駄に技術力の高いハサミは、おそらくだが老ドワーフたちの誰かの作品か?
ステータスが高くなっても、中腰や前かがみをすると腰が疲れるのは変わらんな。一〇〇本くらい切り取って運んで、サトウキビの収穫体験が終わった。ふと隣のサトウキビ畑を見ると、
「ゴーレムがおるやんけ! 手収穫は基本しないって事か!」
それを見たブラウニーはニヤニヤしていた。こいつらって基本的に、いたずら好きって事か! 貴重な体験ができたんだし良しとしよう!
収穫した大量のサトウキビを、今度は絞る作業をする場所へ運ぶことになった。リヤカーを使っての、物資輸送といっていいのだろうか?
リヤカー……小学生の時を思い出すな。学校の授業で作物を育てる授業があって、その時に土などを運ぶ際に使ったんだよな。
「サトウキビを絞る機械って、思ったよりゴッツくないんだな。そりゃ搾るだけだから、極端な話はさんで潰して、転がせれば搾りだせるんだもんな。ドンドン絞っていこうか」
年少組のみんなと協力して刈り取ったサトウキビを、機械に通して絞っていく。一度に搾れるのは、二本だけど、一本を絞るのにかかる時間は、およそ十秒なのでドンドン絞っていける。結構な量を刈り取ったので、四台の機械を使って三十分位同じ作業をした。
今度は絞った原液を煮詰める工程に入るのだが、ちょっと奥を見るとゴーレムがサトウキビを絞っていた。すかさずブラウニーを見ると、視線をそらして口笛を吹いているが、口元がにやけている。こいつめ!
気を取り直すか、煮詰める工程の場所は絞る機械のある隣の部屋だ。ここだけは熱くなるので風通りがよくなっているようだ。
部屋に入るとサウナのように熱い……その中で、塩を作る際に使われている窯がいくつも並んでいた。そこで原液が煮詰められながら灰汁取りをされている。
さすがにこの工程は、熟練の方が行った方が無駄がないとの事で、見学をするだけになった。
きちんと処理された液は瓶に入れられて冷やされていく。これが白下糖ってことか、白ってついてるけど本に書いてあった通り、これだと茶色いんだな。このまま砂糖に精製したら、茶色い三温糖ってことか? なんか違う気がするな。今度調べよ。
今度は冷えた白下糖を木綿の袋に詰めて、初めに見た木箱に重ねていきある高さまでいったら、板を置き丸太を上に乗せ、丸太の先に重石をいくつも重ねていく。岩を使ってるんだ、何か昔っぽいな。
「ご主人様、お待たせしました。これから研ぎの作業に入ります。お手本はここの主任のを見てください」
そういうと結構ごっついおばちゃんが出てきて、絞った白下糖を木綿の袋から取り出す。
ガコッ
「思ったより硬い音がするんだな」
ガンッガンッガンッ
木槌に持ち替えたおばちゃんが、絞った白下糖を力いっぱい叩いて砕いていた。
ボロボロになった絞った白下糖に少しずつ水を加えて、混ぜながら練っているような感じだ。この工程が研ぎと呼ばれるものらしい。
一見簡単にやっているように滑らかな動きだが、後でやらせてもらったところ、なんていえばいいんだろうな? 濡らした砂で遊んでいるような状態といえばいいのだろうか? そんな感じになってしまったのだ。おばちゃんも苦笑していたが、始めた頃は似たような状況だったよと慰めてくれた。
絞りと研ぎを何回か繰り返すことによって、砂糖が真っ白になりきちんと精製すると和三盆のようにフワフワな細かい粒子になるそうだ。
「思ってた以上に大変な作業があるんだな。みんな頑張ってくれ! 今日は体験させてくれてありがとね。後でシルキーたちに何か持ってこさせるから、みんなで楽しんでくれ。お酒が欲しかったら、その時に言ってくれれば、何か持ってこさせるから!」
職人さんたちに頭を下げられながら、工房を後にする。いい体験ができたので後でご褒美になるのだろうか、それをシルキーたちに届けてもらう事にした。
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