382話 半分捕縛終了
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慌てて作った土壁は、ライムの発動した【エアリペット】の余波で崩れ去ったが、ほとんど被害が無く済んでよかった。
ライムの今使用した【エアリペット】は、圧縮した空気を撃ち出す魔法で、簡単に言えば空気爆弾とでもいえばいいのだろうか? 何かに当たるか発動位置に到着すれば、圧縮された空気が一定方向に解放される。構造的には極めて単純ではあるが、込められた魔力のせいで余波がすごかったのだ。
対してターゲットにされていた敵魔法組は、何とかダメージは避けたようだが、城の外に放り出されていた。
「これで思う存分魔法の撃ち合いができますよ。建物の中だからとか、城の近くだからとか、言い訳できないですから全力でかかってきてくださいね」
珍しくライムが相手を挑発している。あの魔法をどうやって防いだんだろうな? 後でリプレイでも見てみるか。
「小娘がよく言いよるわ。だが言うだけあって危険な魔法を使うのぅ。じゃがまだまだ制御が甘いな。魔法っていうのはな、こうやって使うのじゃよ!」
爺魔法使いの魔力が一気に高まって、体の周りに蜃気楼が見えるときのようなモヤモヤが見える。
右手を突き出したとたんに魔力が収束していく。収束した魔力が火に変換されてさらに圧縮されていく。ここまでの魔法が使える人間って初めてみたな。見た目だけでいえば、ファイアバレットとファイアボールの中間的なサイズの魔法だな。
それに対抗するライムも、同じように魔力を高めて右手に魔力を収束させていく。こっちは何を使う気なんだろうな? 普通に考えれば相反属性の水かな? やっぱり水か。それにしても、かなり圧縮しているな。
両者から撃ち出された火と水の相反する魔法がぶつかると、あたり一帯が高温の水蒸気に包まれた。どれだけ広範囲にまき散らされたんだよ……少なくとも城が丸ごと水蒸気に包まれてるな。
「小娘が無茶しよる。魔法の規模は同じくらいかのぅ? それなら手数で勝負するかのぅ」
見えないので大体の事しかわからないが、爺の周りに五十個くらいの魔力の塊が浮いている。ファイアボールとかかな? それに対するライムの周りには、半分の二十五個くらいの魔力の塊が浮いているが、こっちは魔力の塊の中にさらに濃い魔力があるな……どういうことだ?
「所詮小娘、だがそれだけの数を同時にコントロールして見せた技術はほめてやろう、だが相手が悪かったな!」
相対している二人が同時に魔法を放つ。ライムは少ない数で相殺をしているが、弾数が違うので相殺しきれず、ライムの方に向かって魔力の塊が向かっている。ライムは慌てることなく結界を張って魔法の侵入を防いでいる。
それよりも、打ち消されたはずのライムの魔法の中にあった塊が、爺魔法使いの方に進んでいる方が気になっている。
「何じゃと! 魔法の中にさらに魔法を仕込みよったか! ちょこざいな!」
「年なんですからそんなに声をあげると倒れちゃいますよ。あ、いけませんね。声をあげなくても、私にやられて倒されてしまうのですから、一緒でしたね」
爺魔法使いがライムの魔法に対処を始めると同時に、ライムはさらに魔法を構築し始めた。今度は俺にも覚えのある魔法の使い方だ。
それに気付いた他の魔法使いと対峙していた、ジュリエットとレミーが防音結界と思われる結界を張っている。ジュリエットは魔法で戦っている六人を包むように結界を張り、レミーは自分たちを包むように結界を張っているようだ。
急に攻撃の手が止んだためか、爺魔法使い以外の二人は困惑していた感じだが、頭を切り替えて攻撃魔法を構築しているようだが、ライムの魔法が先に完成した。
キィィィン!
防音結界で減衰した音だったはずなのに、結構な音量で俺たちの耳に魔法で再現したスタングレネードの音が届いた。
霧が晴れてきたようだ。やはり初見であの魔法に対応する事は、まず無理だよな。分かっててもそれを防げる魔法を、この世界の人間が想像できるだろうか? 土魔法で全方位を囲うくらいではないか? 都合よく全方位に壁を作れる魔法使いがいるわけもないし、必殺の魔法の一つだな。
まともな判断をできなくなった、相手の魔法使いをライムたちが拘束していく。拘束の方法は簡単、裸にひん剥いて装備を全部取り上げてから、動けないように布団のような物で簀巻きにして、ミスリル合金で作ったワイヤーで縛り上げていた。自殺されないように猿轡をかませているな。
初めの印象を考えると、思ったより簡単に三人を捕らえてしまったな。
一方タンクの方は、シュリとリーダーっぽい人間の戦闘はもう終了していた。なんていうかね、腕や足が曲がっちゃいけない方向に曲がっていて、うーうーあーあー言っているように見える。大体何が起こったか分かる所が、シュリの戦闘能力の高さが知れるというものだ。
他のタンク組は、シュリが見守っている所を見ると、不利という事はなさそうだ。気になるのが軽戦士系とくくったメンバーの戦闘風景だ。
マリーは双剣の物理デバッファー、ライラはシーフ系のバッファー、マリアが遠近物理攻撃の全く違うタイプを当てたので、面白い事になっているようだ。
マリーは軽戦士とくくられた中で、一番レベルの高い敵を相手にしている。敵からの攻撃をかわしたりはじいたりして、翻弄しながら隙を見ては、無理をせずに浅く切り付けている。そのすべての斬撃に、付与魔法でデバフ効果のある氷魔法をまとわせていたのだ。
相手の体温を奪っていき、体が動きにくくするという、地味だが抜群の効果のあるデバフ攻撃だ。マリーの手数が増えれば増える程、相手の動きが悪くなっていき、行動可能限界を超えた敵はその場に倒れた。
ライラの戦闘は一方的という感じだった。敵も忠誠の首輪で強化していたが、それでもライラのステータスの方が高かったのだ。自己強化をしてステータスをさらに突き放したのだから、戦闘経験だけで埋められる限界を超えていたのだろう。
位置を変えて気配を消して攻め込み、マリーより早く倒していた。三人の敵の中で一番傷が少なかった。
マリアの戦闘は、なんて表現していいんだろうか、変幻自在という感じかな? 相手は威張っていた一番弱いと言われていた男だ。
距離をとってマリアの事をうかがっていた相手に、急に弓を取り出し矢をいくつも放っていた。
それに慌てた相手は距離を詰めようとするが、何本か矢をくらってからやっと接近できたのに、マリアがレイピアに持ち替えて、矢を受けて動きの鈍った敵の攻撃を華麗にかわしながら、レイピアを体に突き立てていき行動不能になった。
ちなみにこいつが、三人の軽戦士の中で一番重傷だった。
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