286話 謎の病気
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「シュウ殿、少し報告いいですか?」
栗を拾って帰ってきた後に庁舎へ顔を出した際に、グリエルから急に話をふられた。
「最近、ディストピアの衛星都市? といっていいのでしょうか、外の町との出入り口になっているあの砦で、毒か感染症か何かと思われる症状を発症している者がいます」
「どういうことだ?」
「症状としては、えっと……皮膚や粘膜から血が出たり、鼻血がでたり、歯ぐきから血が出たりしている人が増えています。あの砦にもディストピアの住人が出入りしていますが、その者たちには一切症状が出ていません。特に街の外から来てしばらく時間がたった人たちがこういった症状を発症しています」
「話を聞くだけだと壊血病の症状に似ているけど、街の中で宿や露店で食べ物を食べている人間が壊血病にかかるとは思えないしな。この世界特有の感染症か? 毒の可能性があるか?」
「シュウ殿、その壊血病とはどういった物でしょうか?」
「たいして詳しいわけじゃないけど、確か体内のビタミンCが不足して、グリエルが今さっき言ってたような症状を発症するんだよ。俺の世界では昔、船乗りがかかる病気として有名だったと認識してる。帆船の船乗りが長時間海の上で、生活して栄養不足になって起きてたって後になって分かったんだったかな?」
「症状が一緒でも地上で新鮮な野菜なんかを食べてれば、起きる事は普通ありえなそうですね。症状が似ているだけに無関係ではないと思いますが、同じような症状を発症する毒か感染病? ビタミンCですか? それを不足させるようなものか、後は寄生虫とかですかね?」
「とりあえず、原因は現状じゃ判断できないな。それで今までにそれで死んだ者がいるか?」
「今の所、ディストピアと砦で死者は出ていないと聞いています。ただ、この都市から離れて自分の街へ帰る際に死んだ者がいるとの事です」
「そうか、死んだ人がいるのか。もしかして、樹海特有の病気とか思われてたりするのかな?」
「ディストピアの外の人間からすれば、そういう風に見えているようで、そう言っている者たちがいるそうです。ですがディストピアの住人に誰一人として同じ症状を発症している者がいないので、妄言の類だと思われています。
もし本当に樹海特有の病気だったとしても、商人たちには何も関係はありませんね。ここで得られる利益を考えれば多少のリスクがあっても、関係なく来るのですから気にする必要もないかと思います」
「そうなんだろうけど、原因はどうにかして突き止めたいところだな。とはいえ、本当に壊血病なのか、感染症による何かなのか、毒による何かなのか、それ以外の原因があるのか全く分からない状況ではどこから手を付けたものかな?」
「そうですね、では症状が壊血病と酷似しているので、壊血病対策の薬か何かを作成してはいかがでしょうか? 魔法薬か何かで作れたら、今発症している人に与える事が出来ます。それで処置ができるのであれば、当面は何とかなるのでその間に原因を究明してはどうですか?」
「そうだな、壊血病と同じ症状ならもしかしたら何とかなるかもしれないな。原因と対処薬の研究をしようか。おそらく壊血病の対処薬は、そう難しい物ではないからな。ポーションというか栄養薬? 滋養強壮薬かな?
それをポーションみたいに速効性のある物にできれば完璧だろう。元となる物ならDPでいくらでも呼び出せるからな。というか、もしかしたらシルキーたちに本気で滋養強壮に効果のある料理作らしたら、問題が解決しそうな気がするけどな」
なんか不吉な考えを思いついてしまったが、シルキーたちの料理の件は破棄しよう。そういえば拉致してきたクイーンハニービーのハチミツって、栄養価的には今回の魔法薬の成分に持ってこいじゃねえか?
味も甘くてポーションのように、苦いような物が出来上がらないので十分だろう。コバルトに壊血病のための魔法薬用に巣蜜を一部譲ってもらおう。献上されるハニービーの巣も俺が1口食べて、評価をすれば俺以外にあげても問題ないらしいから、その献上された巣を分ける事を条件にすれば嫌がらないよな。
「という事でコバルト、ハニービーの巣を分けてほしいんだ」
「はぁ、もともとご主人様がとってきたものですし命令であれば嫌はないですが、クイーンから献上される巣を私に分けてくれるんですか?」
「命令って、そんな事は出来る限りしたくないな。献上される巣じゃダメか?」
「いえいえ、同じハニービーの巣でも献上される巣は極上の物と聞いていますので、本当に分けてもらってもいいかと思いまして」
「普通の巣と、献上される巣ってそんなに違うのか? どっちもただの巣だと思うんだけどな」
「ご主人様、クイーンの前でそれを言っちゃだめですよ。基本的に献上用の巣を作ることはあまりないんですが、上位者であったり恩のある者にしか献上しないそうなのです。献上用というだけあって、普通の物と段違いに風味が違うそうですよ。だから本当にいいのかとおもったのです」
「そこまで違うのか、多少なり味が変わるとは思ったけど段違いって言われるほど違うのか。迂闊に口を滑らせないようにしないとな。コバルトありがとな。それと献上されても一人で食べきれるわけないからそこらへんは問題ないよ」
問題ないと判断したコバルトは、俺たちがとってきた巣蜜の半分ほどを渡してきた。そこまで必要ないと思ったけど大きさを考えれば、使い切るのはどれだけ時間がかかるか分からないくらい大きいからな、でもコバルトの表情を見るとこれでも渡しすぎだと感じているようだ。
なんでこの量になったかはアマレロの苦言によるものだろう。コバルトよ、そんなに苦しそうな顔をしないでくれ……献上されたらいっぱい分けてあげるから我慢してくれよ。
「そだ、滋養強壮剤的な飲み物を作るから、コバルトも参加しないか? そうすればハチミツの研究にもつながるかもしれないぞ?」
苦し紛れに言ってみると、コバルトの表情が花を咲かせたかのような笑顔になった。提案したのが俺であったためか、スカーレットたちにも何の問題もなく許可されて、コバルトが壊血病のポーションづくりに参加することが決定した。
他には興味を持った妻のうち、レミーとジュリエット、キリエが参加することになった。
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