259話 勇者たちの末路
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地下牢に連れていかれた勇者たちは、ギャーギャー騒いでいるらしい。世界を救うためにダンジョンマスターと戦っているとかなんとか、正直聞くに堪えない内容らしく地下牢の番の鬼人がげんなりしていた。
そもそもこの世界の勇者って世界を救うとか関係無いはずだよな。誰に何をふきこまれたのやら?
この世界の勇者はダンジョンマスターと対になる存在。簡単な話、神たちの娯楽による駒に過ぎないのだ。
ダンジョンマスターはDPによってダンジョンを作ったり魔物を呼び出したりできるようになっていて、対となる勇者はダンジョンマスターや魔物に強くなるのだ。その倍率はよくわからないが、一人でAランクの魔物に無双できるような存在との事だ。
ダンジョンを攻略させるための恩恵というべきだろうか? まさにダンマス殺しの恩恵ではあるが、あくまで強くなるのは魔物とダンジョンマスター限定なのだ。人にはその影響が出ない。ってことは俺には、正確には、ディストピアではただの勇者に怖れるに値しない存在という事だ。
まぁ勇者と対面をしようか。地下牢に入っていくと牢屋の前にいすが置かれていた。どうやらそこに座れという事らしい。
「勇者たちでいいのかな? このディストピアに何の用だい?」
「勇者は俺だ。お前ダンジョンマスターだろ? 勇者とダンジョンマスターがすることといえば一つ、殺し合いだ。だから俺と勝負しろ!」
「ふざけた事を言うなよ屑が、勝手に俺たちの街に攻めてきやがって。勝負をするも何もすでに勝負に負けているのが分からないのか? 地下牢に入れられた時点でそのくらい分かれよ」
「それは人間たちに、俺の崇高なる行為を阻まれたせいだ! お前に負けたわけじゃない!」
「その人間たちも俺の力の一部だよ。俺は虐げられていた種族の人間を集めてこの街を作ったんだよ。そして今回お前たちを捕らえた鬼人たちは、聖国で行われた人体実験の被害者たちだよ。彼らは自分の意思でお前らを撃退したんだよ、自分たちの街を守るためにな」
「嘘をつくな! どうせ魔法か何かで洗脳して戦闘をさせていたのだろ? 分かっているんだ。お前たちダンジョンマスターは、人間を食い物にして成長していくってな。
人を集めてDPとやらに変えるんだろ? それとも人間牧場か? 絶滅しないように繁殖させて殺してDPに変えるんだろ? どうだ当たってるから何も言えないくせに」
「まぁ魔法でも洗脳でもどうでもいいわ。勇者が俺を殺そうとするなら、それに対する備えをしただけだしな。お前はそれに敗れた、この結果は何も変わらん。それより気になる事を叫んでいたな。世界を守るためにとかなんとか」
「ダンジョンマスターはこの世界の人間を食い物にして成長する。ダンジョンがあるから人々が危険にさらされる。その危険を取り除くために勇者の俺がいる。俺は世界を守るためにダンジョンマスターを殺さなきゃいけないんだよ!」
「お前ってバカか? おそらく召喚されてこの世界に来た勇者だろ? お前がどんな説明を聞いたか知らないけど、ダンジョンマスターは確かに人間を食い物にしているが、どちらかといえば共生関係にあるんだよ。
冒険者はレベル上げや魔物のドロップ品を欲しがってダンジョンに入る、俺たちダンジョンマスターはその見返りにDPをもらう。シンプルな関係だろ?」
「それはお前らの言い分だ! 実際に人は死んでいる!」
「お前らだってダンジョンの魔物殺してるだろ、お互い様だ」
「魔物は死んでも、また生まれてくるからいいだろうが!」
「そういったら人間だって生まれてくるだろ? 何が違うんだ? 人間か魔物かの違い以外で何があるんだ? 確かに魔物の中には女をさらって苗床にするような奴らもいる。だけどな、同じ人間のくせに獣人は亜人だ!魔物の仲間だと言って人体実験するような国があるんだぜ?
お前はそういった国をどうするんだ? ダンジョンより有害な国だぞ。俺たちはまだドロップ品を生み出すが、あの国は拷問して殺して人体実験してるんだぞ。どうする?」
「…………」
勇者は何も言えないのか黙ってしまった。
「最後に一つ真実を教えておこう。この世界の勇者とダンジョンマスターの関係だ。信じるか信じないかはお前次第だ」
前置きをして、神について話し俺らが駒として神たちのおもちゃになっていることを話した。
「今話したことは全部事実だ。誰がお前に偏った知識を与えたか知らないが、自分で考えようともしなかった自分を恨め。そして考えもしなかったお前の結末が今の現状だ。まぁ今から死ぬ奴にこんなこと話しても意味ないんだけどな」
「はぁ? 何で俺が殺されるんだよ! ふざけんな! 早くここから出せ! さっきから魔法を使ってるのに発動しやがらねえ! クソクソクソが~~!」
「だってお前だって俺を殺そうとしただろ? 殺される覚悟もないのに攻めてきたのか? お前のせいで連れてきた仲間三十四人の内生き残った者は、奴隷に落とされるんだけどな」
「お前は俺に殺されればいいんだよ! 俺が死ぬ必要なんてどこにもない! それに仲間は関係ないだろ! 解放しろよ!」
「お前に賛同してこの街攻めたからには同罪だろ。本当はお前も奴隷の首輪をつけたいところなんだけど、神の加護とでもいうべき勇者って称号があるせいか効果がないからな、重傷を負っている仲間の治療費をお前の命で支払ってくれ。じゃぁ処刑されるまで楽しんでくれ」
聞くに堪えなくなったので地下牢から出ていく。
「ご主人様、あの者何かおかしくありませんでしたか?」
「あ、ピーチもそう思った?」
「ご主人様と比べるのも失礼ですが、何かが決定的に足りない印象でした」
「俺もそう思うな。なんか言ってることがめちゃくちゃだったもんな。何か思い込まされているような感じだった。あれが神のせいなのか、ダンジョンマスターを殺したい何者かの洗脳なのか、ただ単にあいつがバカなだけだったのか、多分どれにしたって証拠は出てこないよ。
神ならいくら娯楽とはいえあからさまな証拠は残さないだろうし、洗脳されてたとしてもそれを証明する方法がないしね。これからは勇者にも気を配らないといけない事が判明したね。他の勇者がこいつみたいに愚かじゃない事を祈るばかりだよ」
『そんなこと祈っても私じゃ何もできないわよ』
また出てきやがったか! それより今回も見てたんだろ? あの勇者なんだ?
『なんだって聞かれてもねえ、勇者は勇者でしょ? それ以外に何かあるの?』
あーお前に聞いて俺がバカだった。
『私の事、バカにしないでよ!』
お前の事はバカにしてないって、俺がお前を頼ったのがバカだったって言っただけだ。
『ん? 結局私がバカにされてるじゃない! ムキー!」
バナナでも食って落ち着け! ただ勇者ってダンジョンマスターを殺すための存在だろ? 世界を平和にするだのなんちゃら言ってたから、誰が仕込んだのかって考えてたんだよ。
『そんなの決まってるじゃない! 知ってても教えないわよ!』
だから聞いたのが間違いだったって言っただろ。その言い方だと知らないって自白してるぞ。まぁどこに原因があっても、全部叩き潰せばいいだけの話だ。国を挙げて潰しに来るなら反対に潰してやるさ。
『うぐっ! 知らないのは事実だけど、ヒントになりそうな事くらいは教えてあげるわ。神たちにも派閥があるのよ、ダンマスと勇者のね。どっちが優秀な駒を召喚できるかみたいな些細な事だけどね。ダンマス側は基本召喚して後は本人任せなのに対して、勇者側は召喚した勇者を使って何かしてるみたいだね』
ダンマスって同じダンマスも敵なのに対して、勇者って徒党を組む感じか? なんか聞いてるとダンマスって理不尽じゃないか?
『そんなあなたが一番理不尽だけどね。あんたのダンジョンコアにたどり着ける人なんていないわよ? ダンジョンの中にコアがないんだから見つけられるわけないわよ』
そういわれてもな、掌握したエリア内に設置してるから違反じゃないだろ? まぁ情報ありがとな、勇者側は何か企んでることが分かっただけでも御の字だな。
ちょっくら対策をしっかりしておかないとな。
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