2497話 クソにもほどがある
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吹き飛ばされたとはいえ、転んだりしたわけではない。ダンジョンの床を削りながら、5メートル移動させられたよいう感じだ。もちろん、物理的にダンジョンの床を削ったわけではない、比喩である。
フォートレスを解除しないまま、前を見る。解除しないのは、動きの速いマナガルムの攻撃を、防御の薄い場所で受けたくないからだ。
前を見た俺は、唖然とする。
俺に衝突してきたマナガルムが……首の骨を折りながらも立ち上がり、こちらを見ていたからだ。
首が変な方向に曲がっているので、真正面を向いているわけではなく、位置を調整してこちらを見ている。首の骨が折れても動けるのは凄いけど、さすがにそれだと俺に勝ち目はないぞ。立っているのもやっとに見えるしな。
とはいえ、死んだふりのような可能性もある。俺が油断したところを狙って、高速移動で首を食らいつかれれば俺でも死ぬ可能性が高い。
速度はあげても勝負にならないことは、先程の突進で分かったので、反射神経の勝負と行きますかね……
意識を加速させるために、雷付与を行い認識できる時間を引き延ばしてマナガルムへ近付く。
意識が加速しているので実際には早く動いていても、認識ではかなりゆっくり動いている。
マナガルムの動きをしっかりと観察しながら距離を詰めている。手を伸ばせばすぐの距離まで近付いたのに、動く気配がない……後出しで俺の事を殺せると思っているのだろう。
武器で攻撃してしまうと隙ができる可能性があるので、そのまま全体重を乗せたシールドチャージを行い、躱して俺に反撃をしてきたところを狙って……
あれ? 盾に重さを感じ衝撃が体に走る……
マナガルムは吹っ飛ばされて、ダンジョンの壁に叩きつけられた後、消えた。
「死にかけていたふりではなく、本当に死にかけていたのか……それにしても、ドロップ品は出ないのか? 生活に必要な物は、全部DPで稼げってことか?」
ダンジョンマスターの能力を確認すると、NEWと書かれた項目がいくつかあり、その1つがDP獲得量1位だった。他にも補足ルールが追加され、1~5位まではマップにいる場所が表示されますので、DPが欲しい人はガンガン狙いましょう……だとさ。
マナガルム自体が俺へのトラップで、倒せたとしても2つ目のトラップで居場所がバレ、常に狙われる可能性があると……マジでダリいな! 強いやつに有利にならないようにするために仕組んだと、言い訳ができるようなやり方しやがって!
それでもDPを稼げたことには変わらんか。いったん戻って、生活環境を整えよう。
っとその前に、忘れていたことを思い出したので、収納の腕輪からあるものを取り出す。
全身アダマンタイトで作った、ダンジョンでしか動かせない欠陥品の、人造ゴーレムだ。何処かに置いておくにも重すぎるので、ずっと腕輪に入れっぱなしにしておいたものだ。
こいつは魔物じゃないから問題ないみたいだな。こいつが動けるなら、タンクとして使い倒してやろう。
人造ゴーレムはこの場に置いておいて、通ろうとしたモノがいたら倒すように命令を出しておく。
コアルームと呼んでいいのか分からんが、そう仮称しよう。
コアルームに戻ると、従魔たちがピクリと反応して俺もビビったが、俺だと分かると警戒を解いてくれた。
ブラウニーたちを呼んで、どういった部屋割りがいいか確認し、その通りに設備を整えていく。さすがSランクの魔物、貰えたDPが10万を超えており、必要な部屋や設備は整えることができた。後は、DPを溜めるだけだ。
可能ならメグちゃんを呼びたいけど、必要DPが12桁もあるので実質召喚は出来ないだろう。それならダゴンでもよかったのだが、こいつらでも10桁はDPが必要になるので、現実的ではなかった。
というかさ、俺の呼び出せる従魔たちって、軒並み8桁以上必要なんだが……俺に従魔を呼ばせる気がねえな神共は……生身で戦えってことか?
従魔たちは呼び出せないけど、人造ゴーレムが使えるのだけは感謝だな。
「おい、神共! 人造ゴーレム返しやがれ!」
俺が人造ゴーレムを置いてあった場所に戻ると、人造ゴーレムの姿はなかった。倒されたのならまだわかるが、破片も倒した相手もここにはいない。ならば、神共が回収した以外に考えられない。
キレていると、メールの着信音のようなものが頭に響く。
『君の人造ゴーレムは、ルール違反だから没収させてもらったよ。君は強過ぎるからいくつかの制限をかけさせてもらっている。それでも君が有利なことには変わりがないから、生身で戦うくらいがちょうどいい班で何だよ。そろそろ1度は痛い目を見てもらわないとね』
痛い目なら1度や2度は見ている。いや、そこじゃないな。何でここまで俺がひりな状況を良しとしているのかが分からん。創造神が関わっているなら、ここまで露骨な不公平は許可しないはずだ……
強ければ強いほど、ペナルティを重くして、可能な限りフラットの状態でバトルを行うとか企画書に書いて、ペナルティは後出しで、俺に不利になる様に仕掛けられたみたいな感じだったりしねえよな?
おい、禿爺見てるんだろ、反応しろや。
『相変わらず礼儀がなっておらんし、言葉遣いが荒い奴よのう』
やっぱり見てたか。この状況は、あんたが許可したものか? ここまであからさまに俺が不利になっているのだが、これもあんたの想定の範囲内か?
『1つ目も2つ目も、イエスでありノーじゃな』
謎かけみたいな答えはいらん。何がイエスで何がノーなのかを説明しろ。
『せっかちな奴じゃ。1つ目に関しては、このゲームの許可は出したという部分ではイエスじゃが、この状況はわしの望んだものでは無いという意味でノーじゃな。
2つ目に関しては、君に不利になるとは思っていたという意味でイエスじゃが、ここまでピンポイントに狙われている状況は望んでいなかったからノーじゃ』
俺がペナルティの1番だとして、2番目のやつのペナルティはどんなもんなんだ?
『ふ~む……本来なら話べきではないが、さすがに目に余るから教えておくが、2番目でお主の10分の1もペナルティがないな』
クソが! DPを持っている状況ならまだしも、持っていない状況で10倍以上の枷がハメられてるとか、さすがにやり過ぎだろうが! お前らの娯楽のためとはいえ、生贄のような扱いにしやがって! どうせ、ゲームが始まったから、中断できないしルールの改変もできないんだろ?
『まぁ、その通りじゃな』
勝った時の褒美として、何でも願いを叶えられるような特権みたいなのがあったが、あれはどこまで有効だ?
『ん? 死者の蘇生など不可能じゃな。姿形だけにせたナニカであれば可能じゃが、生前のままは無理という意味で不可能じゃ。地球に戻りたいとかいうのも不可能じゃな。それ以外では、パッと思いつくものはないの~。なんぞ、欲しい報酬でもあるのか?』
そうだな、今俺の思っているようなことが、実際にできるかの確認はしたい。
『ふむふむ……時間限定であれば、何の問題もないの。それにしても、あのアホ共もやり過ぎるなと注意したのに、お主の怒りを買うとはな。くわばわくわばわ。お主が優勝したら、その願い間違いなく叶えてやろう。そして1つヒントとして言うなら、お主が生身ですることなら反則は無いということじゃ。がんばれよ』
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