2395話 迷走するが決めることは決めた
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監視網の完成は……って、ダゴンの性能評価をしていないから、完成したとは言えないな。2人との話が終わったら、ダンジョンに行って確認してこないとな。
グリエルとガリアには、1つお願いをした。
ゼニスと協力して、戦後の対策をしておいてもらうことだ。ゼニスと協力するのは、お金の面で最大限の補償できるようにガイドラインを考えてもらう予定だ。
兵士の中には男性も女性もいるが、色々な立ち位置がある。それに家族の構成も違う。
全く同じということはありえないが、どんな場合でもお金は必要となってくる。
一家の大黒柱かそうでないかで、家族が生活するうえでどれだけ依存しているのかがわかる。俺の管理下にある街では、兵士はかなりの高給取りになる。他の街は知らん。でも、不正に手を染めやすいことを考えるとそこまで高くないか、上層部に問題があるのだと思う。
その点、管理下にある街では、横領・賄賂などの不正は一切許さない。発覚すれば、家族ごと追放にすると明言している。法律にもきちんと書かれているので、言い逃れなどは一切不可能だ。
その対価として、高い給料を払っているので、そこらへんはきちんと守ってもらいたい。樹海周辺の街では一切そういうことはないのだが、ちょっと離れた王国や帝国の飛び地のような街では、たまに不正が発覚し追い出したという報告が上がるんだよな。
兵士たちより、文官のほうがお金に近いせいか、その部分で不正をする輩が後を絶たない。
誠実に働いていれば生活できるのに、わざわざ罪を犯してまで不正をするのはなんでなんだろうな? 意味は違うけど、一種の職業病なんじゃないかと思ってくる。
どこかの街で付き合いのあった人から、貴族の子弟を雇ってほしいといわれ、問題なさそうだったため雇ったその人物が、誰かに貢いだり悪さをするためではなく、当然の権利として不正をしていた話を聞いたときは、驚きのあまりあきれたっけな。
どういう思考でそうなって、当然の権利なのかはわからない。お前の給料は街の人たちの税金で賄われているのに、さらに街の金に手を付ける理由が、権利というのだからこちらも混乱するよな。
誠実に働いてくれている兵士たちなのだから、もし何かあったときには残った人たちの補償も考える必要がある。
例えば、父・母・子ども3人が幼いと、母親は働きに出るのも大変になる。兵士である父親がいるのであれば何の問題もないが、戦争などで死んでしまった場合、この家族は路頭に迷ってしまうだろう。
実際に、管理下にある街以外では、街のために戦ってくれた家族にかけるお金はないということで、貧民街に流れ着いたり、犯罪に手を染めてしまったり、稼ぐために母親が一生懸命働いて体を壊してしまい、子どもたちが飢え死にする……という話は、この世界ではよくある話だ。
街のために戦ってくれた兵士の家族は、手厚く保証されるべきだと思うが、この世界では切り捨てる対象となってしまうのだから、前線で戦う兵士は報われないだろう。
前線に出るのは、平民だけで貴族や商人の子弟たちは、後ろで贅沢をしながら的外れな指示をして、戦った気になっているんだよな。それで成功すれば自分の功績、失敗すれば現場の人間が指示に従わなかったからだ、とか理不尽なことを言うのだからやりたい放題だな。
この世界の平民に学がないから、指揮するのには向いていないのは分かるが、学があるはずの人間が理想と現実の違いも判らずに、指揮を執るのだからそれはそれで救いようがない。
どんなに偉い人間でも、ある程度現場の動きを理解するために、泥臭く働く必要があるだろう。
そう考えると、俺って現場で働いていないけど、指揮を執ることがあるよな……この世界の貴族よりは、戦について知っているかもしれないけど、しょせん漫画やアニメ、小説、映画などから得た知識で、すべてがあっているとは限らないしな。
一応、勉強もしたけど、それが正しいのかもよくわかってない。地球の戦争であれば正しいであろうことは勉強したけど、この世界に当てはめられない知識が大半なんだよな。
っと、いつもみたいに連鎖的に違うことを考えてしまっていた。
「シュウ様は、知識があってもなくても、対した違いはないと思います。自分で判断できないと分かれば、分かる人に指示を出させていますし、シュウ様と奥様方が、戦況をひっくり返すだけの力を持っていますので、そういう人は余計な知識をつける必要は、ないと思います」
あれ? 勉強しろって言ったのは、グリエルたちじゃなかったっけ? それとも、レイリーだったか?
「グリエルの言う通りですね。知識でしか知らないので見当はずれかもしれませんが、シュウ様たちは戦術核兵器のようなものだと思います。使用されれば、戦争が終了するくらいには強力な力ですね。力で解決できるのですから、余計な知識はなくても何とかなります。でも、知識があるに越したことはないですが、自分でできなければ、出来る人に丸投げすればいいと思います」
それが許される立場と力を持っているのですから……と最後に付け加えていた。
2人は丸投げ推奨のようだな。だけどいざという時に、俺たちの力は抑止力にもなるので、必要に応じて力を行使するのが望ましいのだとか。
「だからと言って、領主を丸投げはダメですからね。私たちでは絶対に務まりません。だからと言って、シンラ様に代替わりと言って押し付けるのは、やめてください」
先回りして、領主の件についてくぎを刺されたな。
子どもたちに任せることも考えたけど、ミーシャたちは冒険者になるらしいので、領主になることはおそらくないだろう。ウルは、領主を支える立場を希望しており、俺を支えられるようになりたいって言ってるんだよな。
シンラが領主になるのは、早くても20年はかかるだろう。いろいろなことを考えれば、30~40年は先かもしれない。
俺にもっと子どもができて、シンラが引き継がなくても、その下の子たちが引き継ぐ可能性はあるだろうな。
跡継ぎのことはいいとして、問題は戦後の補償についてだぞ。
今は俺のお金と商会のお金があるので、補償についても問題なくできるが、代替わりしても問題がないように、この街のシステムの1つとして、兵士たちの家族への福利厚生はしっかりするようにしてくれ。
今回は突然のことだから間に合わせでもかまわないが、戦争が終わって落ち着いたらしっかりと決めてほしい。必要なら俺も話し合いに参加するから、その時は呼んでくれ。
終わりのような空気感だったが、この後も使う戦力について明確にする話をしておいた。リバイアサンたちやダゴン、サハギンだけではなく、そのほかにも色々と使う予定だ。
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