2376話 迷走の終着点?
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「うん、ディスプレイを隠しているけど、それ以外の部分もかなりこの世界の基準から大きくかけ離れているわね。椅子なんか、王様が使っているのより上等な椅子だと思うわ。それが馬車の椅子で、複数取り付けられていることを考えると、どこかの貴族が見れば強引に奪いそうね」
この世界の貴族もピンキリで、本当にこういった行動をとるクソもいれば、ジャルジャンの領主みたいに一生懸命住人のために頑張っているやつもいるんだよな。
「まぁ、これに乗ることがあるとすれば、俺や妻たちだから身分的には問題ないだろう。もし取り上げようとするなら、ボッコボコにしてやれば……って、俺の関係者なら大半は、力こそパワーで抜けられるな」
「脳筋みたいなこと言ってんじゃないわよ。でもまぁ、確かに下の子たち以外なら実力で排除できるだけの力はあるよね。下の子たちだって、あんたの従魔がいるから排除してくれるだろうしね」
「わざわざトラブルを引き起こすような馬車は、シュウ殿だけでいいでござるよ。ミーシャ殿たちに乗せさせるのであれば、椅子も格納できるようにするでござるか、あえて椅子を設置せずにスライムたちで代用もありでござる」
「多少制限をしていたけど、思うがままに作ってたからな。誰かに作るってことを考えた時に、そのメンバーにあっているものを作れれば、問題ないだろうから……1つ試しに、誰かを想定して作ってみるか?」
バザールも綾乃も、問題ないようでこのまま誰を想定するか話し合うことにした。
誰でもいいのだが、そうなると誰にするかすごく迷うことになってしまった。
「思ったんだけど、よく馬車を使って移動している人って、誰がいるの? どうせ作るなら使ってもらいたいと思うんだけど、あんたの関係者って馬車使っているイメージが全くないんだけど……」
そういわれて、考えてみた。
俺も一応使うが、俺は関係ないのでパス。次に俺の妻たちは……俺がどこかに移動する際に使うときに同乗はするけど、個人で使っているとは聞いていないな。俺の従魔たちに騎乗して移動するとは聞いている。
じゃぁ、子どもたちは……ミーシャたちがいずれ使うだろうけど、今作る必要はあるだろうか?
グリエルとガリアは……使っているのだろうか? 連絡して確認してみよう。
『馬車ですか? 他の街へ行くときに使いますが、他の街へ行くこと自体がほとんどないので、実質使っていないようなものですね。息子たちのほうが使っていると思いますね。使うときも、ドワーフの方たちが改造してくださった物を使っていますので、十分にオーバースペックなんですよね』
だってさ。使ってはいるけど、他の街へ行くことがほとんどないから、使っていないのと同じらしい。
その息子たちは……
『馬車ですか? しばらく使っていませんね。私たちは、シュウ様の管理下にある街以外に行きません。街の移動は魔導列車を使えますので、馬車を使うとしても街の中だけですので、職員の使える馬車があれば十分ですね』
各街に備え付けている馬車だけで十分らしい。
じゃぁ次は、ゼニスか?
『馬車ですか? 私はシュウ様の管理下以外の街へは行きませんので、使うことはなくなりましたね。息子は、ジェノサイドキャラバンに乗って、新しい街へ下見へ行くこともあるので、使っているとは思いますが、個人で使うことはないと思いますね』
ゼニスはネットワークを使えるので、現地へ行って色々指示する必要がなくなり、基本的には中立地帯の街で仕事をしているようだな。ディストピア・ゴーストタウン・ヴローツマイン・ジャルジャンの4つが基本みたいだな。
その息子は……
『シュウ様!? えっと、馬車ですか? 街から街へ移動する際に使用しますが、護衛を雇うのも大変ですし、馬車の維持費も馬鹿になりませんからね。ジェノサイドキャラバンと一緒に行動するようにしています』
だとさ。でも、ジェノサイドキャラバンと一緒に移動するなら、専用の馬車があってもいいんじゃないだろうか?
『えぇ!? ほとんど使うことがないのに、専用の馬車なんてもらえませんよ。ジェノサイドキャラバンの馬車だって、シュウ様たちが改造してくださっているので、他の商隊に比べれば天と地ほどの差がありますので、同行で十分すぎます』
断られてしまった。後は……レイリーか?
『シュウ様、いかがなさいましたか? 報告は毎日挙げていると思いますが、何か気になる点でもありましたか? 状況が動いてきてはいますが、まだちょっかいをかけてくる者たちが減りませんので、管理下に置くのにはもう少し時間がかかります。
……え? そのことではないのですか? 馬車……職業柄使いますが、ディストピア基準の馬車ですので、ずいぶん快適に移動できています。必要なものはそろっていますし、新しい馬車は必要ないかと思います』
でも、レイリーは軍のトップなんだから、専用の馬車を持っていてもいいんじゃないか?
『そんなことを考えるのは、わざわざ専用の馬車を欲しがるのは能無しの指揮官だけだと思います。シュウ様のおかげで苦労することはないですが、軍は本来金食い虫なのです。だからと言って、無くすわけにもいかない重要な組織です。
だから、無駄にお金を使うようなことは避けるべきです。1つだけ専用にしてしまうと、馬車の整備も苦労することになりますし無駄が増えてしまうので、軍の備品は統一するべきだと進言します』
でもさ、俺が作ればメンテナンスフリーなんだが、それでも専用馬車はいらないか?
『シュウ様が一緒に移動する際の囮としての馬車ならいりますが、私が使うためだけの馬車であれば、メンテナンスをしなくてよくても、必要ありませんね』
やはり必要ないか……囮とかいうけど、俺が一緒に行く場合は従魔たちもついてくるから、囮なんて必要なかったりするんだよな。スプリガンたちの監視も強化されて、以上があればすぐに連絡が来るので、軍には必要ないか……
「レイリーさん、ちょっといいですか? 軍は統一された備品がいいとのことですが、新しく馬車のシステムを考えてまして、軍で採用するかはともかく、運用試験を行っていただけないでしょうか? まだ少し先の話になりますが……」
綾乃が何やららしくない口調になり、レイリーに話し始めた。
迷走に迷走をしたが最終地点として、馬車の規格化をしようという話になっていたので、その部分を前面に押し出して、運用試験の名のもとに軍で使ってもらえないか交渉が始まった。
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