2375話 迷走脱出……できなかった
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俺たちは、馬車に欲しい機能を箇条書きで並べていく。
漠然とした意見も多かったが、やはり求められるのは、乗り心地だった。この世界の馬車の乗り心地って、かなりやばいんだよね。特に日本から来た人間からいうと、酔ってくださいと言わんばかりのシェイクぶりはかなりきつい。
なんというかね、細かくがたがた揺れる上に、座る場所が固いからダイレクトに振動が体に響くんだよな。本を読もうとしても、文字が揺れすぎて読めないだろう。
ディストピアやゴーストタウンの馬車には、サスペンションが標準装備されているので、かなり軽減されており、車輪にも魔物の素材を使って、ゴムタイヤのように使っているので、揺れはほとんどなく乗り心地はかなり良くなっている。
俺が所有する馬車は、ディストピア基準の物より高性能ではあるが、基本的なつくりは一緒だったりする。
「やっぱりさ、タイヤが細いから、ゴムタイヤにしててもちょっとした石ころでも、揺れたりすると思うから、タイヤを少し太くしない? 車ほどとは言わないけど、小石を踏んでもその部分だけがへこんで、揺れにつながらないような工夫はできないかな?」
馬車というと車輪が細いから、どうしてもちょっとした物が揺れの原因になるんだよな……タイヤを車みたいに太くすれば、サスペンション以外にも揺れを軽減してくれるから、さらに乗り心地が良くなりそうだな。
でも、魔物の素材だと、空気のように移動が少ないから、多少石ころが大きかったら厳しいんじゃないか? もう少し方法を考えないと、厳しくないか?
「それでござるが、こういうのはどうでござるか? もっと高ランクの魔物の素材を使って、タイヤを固くするのはどうでござろうか?」
「そうすると、細かい揺れが増えるんじゃないの?」
綾乃の意見はもっともだ。あまりランクが高いと固すぎてゴムみたいにへこんだりしなかったんだよな。かといってランクを下げすぎると、消耗が激しかったりして今使っているあたりが一番使いやすいってことになった気がする。
「この際、Sランク級の素材を使って、踏んだ小石を粉砕できるくらいの素材にしてみてはどうでござるか? ランクの高い素材なら、小石とかで中途半端に揺れることがなくなるでござる。全部粉砕するでござるからな」
なるほど、今より高ランクの素材を使って、小石は粉砕する方向か!
「でもさ、そうすると、地面に対する負担が大きくなるんじゃないか? 小石がつぶれるってことは、地面にも影響があるだろ?」
「それでござるが、シュウ殿の影響下にない道のことを見たことないでござるか? 幅の広くない馬車で走っているせいか、車輪による凹凸がかなりひどかったりするでござるよ」
自分の手の入っていない道だって通ったことあるぞ! 俺が手に入れる前の街に行くときとかさ……
そこまで考えて、首をひねった。確かに通ったことはあるが、その記憶はもうほとんどなかった。
そこでバザールはいくつかの写真を映し出すように、データを送ってきた。
「あ~確かにこれはひどいな……轍ができるよりかなり厄介なことになってるな」
「こういった所は、高ランクの素材を使えば、均すことができると思うでござるよ。タイヤを魔道具化して、地面を強化するような魔道具を仕込めば、反対にありがたがられるのではないかと思うでござるよ」
あ~、クリエイトゴーレムで、高ランクの素材をゴーレム化して、魔核を埋め込めば常に地面を強化しながら走れそうだな。
「一般に売り出すわけじゃないんだよね? シュウの関係者が対象なら、オーバースペックでも問題ないんじゃないかしら? 娘さんたちが冒険者になるときにプレゼントするなら、その時は改めて箱を載せる台を作り直せばいいんじゃない?」
「試作品だから、可能な限り技術を詰め込んでみるか。もし一般に出すのであれば、デチューンするなりなんなりすればいいからな。それにドワーフたちに見せて、暇しているじっちゃんたちに再現してもらうのもありかもしれないな」
よし、方針が決まった。
やっぱり椅子は、座り心地のいいものがいいよな。横向きの席よりは、進行方向に向いているほうがいい気がするけど、そこらへんはどうするか……
荷物に関しては、外せないように固定した収納の箱があれば、荷物は何とでもなるだろう。収納のカバンも使えば荷物の出し入れは簡単になるしな。
ん~、馬車を寝室に使うのであれば、椅子はフルフラットにできるほうがいいか。あとは、中は快適な温度で過ごせるといいな。エアコンの魔道具のようなものを設置できるだろうしな。
「あ、屋根の上に登れるようにして、見張りができるようにしたほうがいいと思うわ。あと、ジェノサイドキャラバンに採用したサイドタープもつけて、拠点のように使えるのもいいわね」
綾乃は、書かれていなかった詰め込みたい機能を上げてくれた。
夕食とかの調理ができるほどの物はともかく、簡単な調理ができるミニキッチンみたいなのも欲しいな。小腹のすいたときに、ちょっとしたものが作れたらいいよねってことだな。
いろいろ考えてみたが、意見を出せば出すほど、キャンピングカーのルームっぽいことになってるな。
進行方向の壁には、外を映し出すことができるように、有機ELディスプレイを備え付けている。中心の上側に75インチのディスプレイを置いて、周りに25インチのディスプレイを左右と下に合わせて8つ設置している。
中心のディスプレイは、遊ぶことを念頭に置いたものだ。周りのディスプレイと同期させれば、大きな画面にすることもできる形だ。
周りにディスプレイを設置している理由は、遊びながらも外の様子を確認できるように、周りの景色を映し出せるようにしている。もちろん、中心のディスプレイに任意の景色をピックアップできるようにしている。
高性能のカメラを周りからは確認できないように細工してあり、夜も見えるようにナイトビジョン機能も搭載している優れものだ。
中を見られたときように、ディスプレイたちを隠せるようにも工夫している。
カメラで周りを確認できるのに、屋根の上に乗れるようにしているのは、見張り役がいるぞ! と周りに見せつけるためだそうだ。見張りがいなければ、面倒な奴らがたくさん寄ってきそうだしな。
従魔たちも乗れるように、後ろを開けられるようにしている。
下にも余裕があるから、拠点として使えるように色々な道具を入れて置けるようにしておこう。ポールやタープをたくさんしまっておこう。
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