2353話 俺の価値観
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小奇麗になったドワーフたちを見て、少し驚きを隠せなかった。例えるなら、小奇麗になる前の老ドワーフたちは、髪の毛も服装も浮浪者みたいな感じだったのが、今はオシャレなバーで働いていてもおかしくないような見た目になっている。
こいつらは、仕事終わりに必ず風呂に入るように命令しているのだが、髭や髪の毛を整えないので、本当に浮浪者みたいに見えたりするんだよな。後、人間より発汗するのか、すぐに酸っぱい匂いになるから子どもたちに近付けたくないんだよね。
で、この汗が酸っぱい匂いになる特徴があるのが、揃って古典的なドワーフである、ビア樽姿の男のドワーフたちなんだよな。
古典的なドワーフの女性は、見た目では判断しにくかったが、ある時を境に男と違い身だしなみに気をつけていることに気付き、匂いのきつくないドワーフが女性だと分かるようになった。髭とかも整えたりしているので、今まで同じだと思ってたことに謝ったくらいだ。
古典的なドワーフの女性も汗を良くかくようだが、お風呂にしっかりと入るので、普通の人と変わらないんだよな。
後は、ロリとショタのドワーフたちだが、これらも汗を良くかく。問題なのは、身だしなみに無頓着なショタのドワーフは、正直に言うと古典的なドワーフの男より臭く感じる。見た目がショタなのに匂いが同じくらい強ければ、頭がバグって臭く感じるというマジックだな。
ロリの方は……というか、女性はどちらも綺麗好きということだ。だから臭さとは無縁である。ヴローツマインでも、身だしなみを気にしていたようで、お風呂は無かったが、サウナと水風呂はあったみたいで、そこでキレイにしてたりするみたいだな。
そんな身だしなみが俺より壊滅的なドワーフたちが、小奇麗になってると、自分がやった事でも驚いてしまったのだ。
まぁこれで、ブラウニーたちの検査は問題ないかな?
ちらりと横を見ると、今日の御付きのブラウニーが頷いているので、問題ないようだ。
屠殺場に入る前に、全身の消毒をされて、良く伸びるゴムの手袋をつけ、エプロンをつけ、マスクをつけ、眼鏡をつける。
ブラウニーたちは精霊なので、魔力で常時清潔に保つことができるらしい。四大精霊もドリアードたちも、そういわれたらキレイだったな。
俺1人ならそのままでもよかったらしいのだが、ドワーフたちも一緒に来ているので、普通の衛星対策をさせてもらうと言っていた。しかも、ドワーフたちの前で堂々と……
要は、ドワーフたちは小奇麗にしても汚いと思われているから、こういう対応になるんだぞ! と、暗に言っているのだが、そんなことお構いなしのドワーフたちは、あっけらかんとしていた。
俺だけだったら、いちいちしなくてもいい理由は良く分からんが、衛生管理は大切だから、きちんと身につけるんだが?
白ソーセージは、まだ準備ができていないので、始めはドワーフたちの希望に合った、解体所へ行きナイフの様子を確認しに行くことになった。
解体エリアでは、複数のブラウニーたちが解体をしている。1人1匹という感じではなく、大きな部位ごとに解体する班、解体した大きな部位をある程度分類ごとにする班、細かく分けた部位を食事に合わせたカットをする班に分かれて作業をしていた。
最後の班はいるのか? って思ったけど、時間経過の無い収納のアイテムにしまうので、切ってあった方が使いやすいってことらしい。
部位ごとに最低限確保しておくべき量を決めてあり、その分を毎日補充していく形だとさ。合理的と言えばいいのだろうか?
近くで見るのは、ドワーフたちがいるので遠慮してほしいと言われたため、解体している姿が直接見える少し離れた位置で、リアルタイムのダンジョン内の映像を流せるスキルを使い、色々な角度からナイフの出来を確認させてもらうことになった。
解体しているブラウニーたちも、色々試しているのだろう。昨日のエリアから持ってきた複数のナイフを解体に使っている。
やはり、老ドワーフ謹製というべきか普通の鋼のはずなのに、切れ味がえぐい事になってる。肋骨に沿って肉を切り離そうとしているのに、肋骨まで削ってしまっているナイフがある。切れ味は良いのだが、これでは切れすぎだと、ブラウニーたちに言われた。
切れ味必要だけど、切れすぎは解体に必要ないんだってさ。
皮剥ぎ用のナイフは、先端が特殊な形をしているので、多少切れ味が良くても困らないのだが、切れすぎると皮まで削ってしまうので、やはりほどほどがいいらしい。
それに対して、骨自体を切る必要のある場所は、切れ味を求められていた。ナイフとかで切るよりは巨大なハサミの様な物の方が楽なので、背骨なんかに刃を入れるような使い方をする時に、切れ味の良いのが使われるようだ。
老ドワーフたちの基準からすれば、切れ味を多少犠牲にして、耐久力を高くする方が有用なのではないか? と、御付きのブラウニーが言っていた。
ドワーフたちの武器やナイフは、どちらも高水準にあるのだが、どちらかに寄せるとどちらかが疎かになってしまうため、ちょうどバランスの良い所を作るのが一般的らしい。
武器によっても、切れ味か耐久度で調整するが、武器に合ったバランスが各人にあるんだとさ。
できないことはないけど、邪道だからあまりやらないということらしいが、
「要求された物が作れるのに、作らないのは、作り手、職人としては失格なんじゃないか?」
と、ぼそっと言ってしまったところ、火が付いたのか、やってやら! と、全員がいき込んでしまった。今日の見学が終わったら、全力で作ったる! だってさ。
チョロ爺たちやな。
矜持を地って作っている人たちもいるだろうけど、要求されるスペックの物を作れるのに作らないのは、職人ではなくただの道楽としか言いようがない気がするから、ぼそっと口に出てしまったんだよな。
職人は作りたい物を作るのが仕事ではなく、要求された物を作るべきだと俺は思っている。違う意見もあるだろうけど、職人ならそうあるべきだと俺は考えている。お金をもらって物を作るプロフェッショナルなんだからな。
これが既製品しか売らないし、買い手に考慮しないのであれば、職人ではなく商売人というだろう。
商売人というとちょっと違うが、仕入れたモノ(作ったもの)を売って生計をたてているので、要望に応えられないのは、職人じゃないと俺は考えていたりするんだよね。
完全にたきつけた状態だが、ブラウニーたちの欲しいものが手に入るなら、このくらいは当たり前にやるぞ!
御付きのブラウニーに視線を向けると、サムズアップしていた。
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