2288話 延長戦Part2
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妻たちの乱取りが始まるが、俺は手が空いているので、妻たちの乱取りに混ざる形になった。
さっき妻たちに使った投げ以外では、ほとんど足をかけたりしていなかったので、今回は俺ができる範囲での柔道の神髄とやらを見せてやろうじゃないか!
中学とこちらに呼び出されるまでの高校の間、授業でやっていた程度と、ここ最近訓練して覚えた物。最後に、スキルの恩恵で得た知識をフルに使って、相手をしてやろうじゃないか!
体を動かすスキルや、武術系のスキルを軒並み覚えている俺は、少し柔道をかじった程度の動きではない。
一流は何をしても一流と言われる。
その神髄を見せてやろうじゃないか!
勝手に熱をあげて戦う姿勢を見せる俺。若干妻たちがひいているが、ジャンルは違っても久々に真剣に戦ってくれると分かり、テンションが上がっているようにも見える。
いつもと同じように出せる範囲内での全力ではあるが、妻たちにとってはそれでも全力を出して戦ってくれることは、嬉しいみたいだ。俺には良く分からないが、子どもたちに母親をイジメているとか思われないかが心配になってくる。
「子どもたちの心配はしなくてもいいですよ。あの子たちはゲームに夢中ですから、こっちへ来ることがありません。万が一くるにしても、先にこちらに連絡が来ますので問題ないです」
だってさ。そう言ってきたのはエレノアで、その隣でサーシャがクスクスと笑っている。相変わらず俺の考えていることがバレバレなのはなんでなんだろう?
俺との場合は、乱取りというよりは、色々な投げを体験する形になるだろうな。でも装備が通常の戦闘用のものなので、柔道着のように掴む場所が無いのが、投げ技の範囲を狭める形になるな。その分柔道と違って、直接手首を掴んだり、鎧にしかない取っ掛かりを使って投げることになるんだけどね。
そして、柔道の技だけではなく、その他の攻撃方法も使うので、どちらかというと反則無しの総合格闘技に近い模擬戦となるだろう。もしくは、古武道の方が近いだろうか?
「さっき聞いたように、色々体験したいってことだから、柔道以外にも色々使うよ。武器は使わないけど、徒手格闘の技は使うから、しっかりとガードしないとすぐに保護シールが壊れるから注意してね」
エレノアとサーシャは、気を引き締め直したのか表情が一変した。
他の妻たちもそうだけど、ここまで見事にスイッチがオンオフするのは凄いよな。元々、戦闘のせの字も知らないような子たちだったのに、今では歴戦の冒険者たちでも裸足で逃げ出しそうな圧力を感じる。
俺の訓練も兼ねているので、2対1での戦闘になるが、向こうにも縛りがあるので問題は無いだろう。
まずは力自慢のエレノアが前に出て攻めてきた。その後ろにサーシャが隠れるようにして着いてくるのが分かる。
左右に避けて、サーシャに不意を突かれるのが一番嫌なパターンかな。
そう思った俺は、エレノアの攻撃を真正面から受けることにした。
柔道関係なしで、いきなり体術で一番力が乗る攻撃の1つであろうローリングソバットを躊躇なく仕掛けてきた。体重も移動速度も、蹴りの威力も乗るという、体術でもかなり破壊力のある技だろう。
少し面をくらったが、今の俺を前にして地面から足を離すとは、愚の骨頂である。
俺の顔面よりやや下。顎や喉を狙ってくるあたり、殺意が高い攻撃だ。攻撃を回避させるか、受け技を使わせたいのだろう。だけど、柔道ではないが、カウンター技って言うのも世の中にはあるんだぞっと。
俺の顔に向かって突き出される右足の機動を逸らすように、右手を足首に添えて掴むと同時に、
「しっかり受け身を取れよ」
足首を掴んだまま俺はエレノアの右足を巻き込むように体を回して、膝から太ももあたりを軸に畳へ投げ落とす。
上半身に対する蹴り技がない柔道ではありえない投げ技だが、支点力点作用点を理解していれば強引にできる投げ技を使った。
一瞬のスキができそこを逃さずにサーシャが、軸にしている足に思いっきり蹴りを入れようとしている。
視覚ではとらえられなかったが、スキルによる気配で察知はできていた。
サーシャの蹴りは、今から体重移動して受けても遅かった。両足が射程範囲に入っていて、薙ぎ払うこともできる軌道なので、受けが間に合わない状態で蹴られれば、俺の転倒は必至だ。
受けることができないなら躱すしかない。
エレノアを投げた時の回転を殺さずに、そのまま軸を変えて前宙するような形で宙に逃れる。
っと、失敗した。
エレノアは戦闘不能になったと思っていたが、まだ保護シールが壊れていなかった。無意識に手加減していたのだろうか?
俺が着地する前にエレノアが立ち上がっており、先ほどと同じように顎と喉狙いの蹴りが迫ってきていた。
慌てて腕をクロスにして、エレノアの重い一撃をガードする。
着地していない状態で蹴りを受けると、体がフワッと浮いた感じがして、すぐに後ろへすごい勢いで回転し、畳に背中を強く打ち付けた。
ヤバいと思ったが、畳だったおかげで呼吸が止まるほどのダメージは無かった。これが硬い地面だったら、勝負がついていただろう……って、エレノアが立てたのはそういう事か。
背中から叩きつけられる形にはなったが、勢いはまだ死んでいないので、そのままバク転をするように回転して2人から距離を取ろうとした。
が、それも失敗する。
バク転で着地をしようとしたときには、既に俺を挟む位置に2人がいて、申し合わせたかのように対象になる位置に攻撃を仕掛けてきていた。
連続で顔を狙われていたので咄嗟に頭をかばうように腕を動かしたが、ミスリードされたようで、今回の攻撃は腹部で、両わき腹を殴られる状況だったのだ。
さすがに対となる位置に、壁を砕く拳が当たれば俺も瀕死になるだろう。
少しでもダメージを減らすには、体を回して少しでもダメージを回避する以外になかった。
当たる瞬間に強引に体を捻り、少しでも体に与えるダメージを減らすためにもがいた。
俺の脇腹がえぐれたかと思うほどの衝撃と痛みを感じる……あ~ここまで強い痛みを感じるってことは、保護シールの効果が発動していないな。システムは、これは致命傷ではないと判断したってことになる。
正直戦闘不能と判定されると思ったけど、それは回避したようだ。
体を捻った時に左を向いたようで、視界に入ったサーシャの腕を左手で掴み右手を首に当て、対応できない状況のまま、強引に投げることにした。
その動きに合わせてエレノアも動き出しており、俺を止めるためにさらなる攻撃を繰り出す。
攻撃が届く前に、俺がサーシャをエレノアに向かって横からぶつかるような軌道で投げた。
無理な体勢で投げたのが功を奏したのか、サーシャはエレノアの攻撃が当たってしまいダウン判定が出た。
エレノアが呆けているところに、首に手を添えて模擬戦終了。
2人は悔しそうにしているが、両側から殴ったの時に浸透勁も使っていれば、間違いなく保護シールが仕事をしただろう。実質、俺の負けである。
神髄を見せてやるとか言っておいて、情けない結果になってしまった。
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