2274話 懲りない奴ら
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体を動かしたからか、太陽を浴びたからかは分からないが、昼食後という眠くなる時間帯でも、眠気はそこまで強くなっていない。むしろ昼食後よりは収まっている気がする。
子ども3人では広く感じるが、俺も手伝えばそんなこともないであろう畑の手入れをしていると、砂浴びの終わった猫たちが娘たちの周りに集まってきた。ライとランは、体が大きくて畑にはいれないが、畑の外枠で一番近い位置でテンションをあげている。
あいつらが畑にはいればいくらネコ科の動物でも、植物たちを倒してしまうので畑の枠の中に入らないようだ。でも、一番近くにいるあたり、他の従魔たちと一緒で子どもたちが好きなんだろうな。俺の従魔だけど!
砂浴びして少し毛艶が良くなっている気がするが、構わないとばかりに娘たちの手伝いを始める猫たち。
ミーシャたちと一緒に雑草取りを始めるのは、ケットシーたちだ。魔法を使い器用に雑草だけど抜いていく。その抜いた雑草は、ライとラン以外の猫たちが手分けをして畑の枠の外に運ぶ。たまった雑草たちをライとランが、コンポスターへ運んでいる。
この流れ作業を見るに、いつも手伝いをしているんだろうな。すぐに来ない理由は分からんが、猫は気まぐれだからな。まぁ分かっていたことだが、俺の近くには猫が来ていない。俺は助ける対象ではないようだ。
でも、土魔法で雑草を抜くというのは、いい方法だと思う。邪魔する猫もいないし、俺もやってみるかな。
この魔法で肝となるのは、雑草の一の把握だろう。しっかりとそれができなければ、間違ってメインの野菜たちを抜いてしまうことになる。ケットシーたちはそこまで広い範囲ではなく、目に見える近場だけを魔法で抜いているのも、把握が難しいからかもしれない。
3匹もいるから……って4匹いるな。ウルのケットシーもこっちに来ているみたいだ。シンラたちのケットシーは、近くでいつものように寝ているだろう。
ん? そう言えば、こいつらシンラたちの周りで寝てなかったか? こんなにすぐに目を覚ますなんて、珍しい気がするのだが……
気にしてもしょうがないな。
俺は改めて集中して、まずは把握するための土魔法でアースソナーを使ってみる。本来は鉱物や地面の中の魔物を探したりする魔法だが、それを応用して何があるか把握できないか使ってみた。
おぅおぅ、土がいいせいかミミズがうようよいるな。それ以外にも蜘蛛がいるようだな……って蜘蛛!?
俺の知っている蜘蛛なら袋状の巣を作る蜘蛛だけど、袋状の巣はなさそうだ。モリモリと畑の中を掘り進んでいる。ミミズと遭遇するが、雰囲気的にどうもどうもと、日本人が会釈しながら道を譲り合っている姿に見えてしまう。
ミミズって蜘蛛の捕食対象でもありそうだけど、ここでは違うようだな。それにこの蜘蛛なんだかモコモコしてるんだよな。俺のアースソナーには、毛の生えた蜘蛛というには少しフォルムの丸い気がする。蜘蛛に似た何かだろうか?
その1匹が娘たちの足元に……お前ちょっと待てや! 子どもたちに近付くんじゃn……
「おぉ、蜘蛛隊員、今日も見回りご苦労であります」
ミーシャが蜘蛛を見つけると叫ぶのではなく、フレンドリーに接し始めた。ビシッと敬礼をすると、蜘蛛も器用に敬礼を決める。マジでなんだこれ?
ミーシャたち3人がフンフンと何か頷いているが、君たちは蜘蛛とも話せるようになったのかね?
近くで様子を見ると、蜘蛛が器用に糸で文字を作っていた。これで昨日の報告や土の中の様子を聞いているみたいだな。この蜘蛛、猫たちより頭がいいんじゃないか?
そんなことを思った瞬間に、俺は全身猫まみれになる。
ニャーニャー言われているのは、抗議の声だと分かるが、俺は猫たちにまで考えていることがバレるみたいだな。鬼ごっこの時は逃げれるのに、何でこういう時は簡単にバレるんだろうな……
ミーシャたちはこちらを見るが、いつもの事だと安心して蜘蛛たちからの報告を……蜘蛛たち? いつの間にか、蜘蛛が複数に増えており、手分けをして文字を作っている。おぉ。マジですげえな。猫たちとは大違いだ。
って、痛いんじゃボケ!
爪を立てている猫が、更に抗議の意味を込めてか、体を許し始めたため爪が皮膚に刺さっていたいのだ。普通なら猫の爪なんて俺には刺さらないけど、こいつらは学習して、身体強化の応用で爪を強化して、わざわざ爪を立てるのだ。
子どもたちを守る兵士としてはその努力は買うけど、その努力を俺に向けるのは止めなさい。歯も強化して噛み付くんじゃありません!
さすがに許容しがたいレベルにまで攻撃が及んできたので、久々に戦いと行きますか……
「あなたたち、何をしているのですか?」
戦いを始めようとした瞬間に、鋭い声が耳に届いた。そして怒っていることが分かる威圧感がある。
オレナニモシテナイヨ
「家の主人であるお方に、爪を立て刃を突き立てていいのですか?」
サビたブリキ人形みたいに、ギギギギギッと音を立てているかのように猫たちが振り返る。
そこにいたのは、猫たちのヒエラルキーの中で最上位にいるシルキーたちの1人、ミドリがいた。
普段温厚でポヤポヤしているミドリだが、怒ると一番怖いのがミドリだ。普段の緩いしゃべり方とは違い、威厳があり誰でも跪いてしまいそうな空気を出している。
俺の怒りというか何かは行く場を失い、ミドリがこの場にいるなら何処かへ捨ててしまう方がいいな。シルキーたちの怒った後に俺も怒ると、反対に俺が怒られるという現象が起きるからな。
自分で行っていても混乱しそうな文字列だが、モヤモヤした感情はゴミ箱へクリックアンドドロップだ!
猫たちの事は放置して、俺はもう一度畑と向き合う。
アースソナーを再び使い、雑草の位置を把握する。それを土魔法で自分から出てきたかのように、土の上に押し出す。
魔法感覚では分かっていたが、目視でも取りこぼしがないか確認していく。狙った範囲の雑草は大方抜けているな。自分でもビックリするくらいの完璧さだ。
抜いたはいいけど、結局手で集めないといけないとなれば、あまり手間は変わらないな。
そんなことを考えていると、土が盛り上がり、蜘蛛たちが現れた。俺に向かって右手? をあげて、俺が抜いた雑草を集めて、畑の外へ運んでくれている……お前ら、優秀だな!
雑草を運ぶ流れ作業が蜘蛛たちに変わった。ランとライは、俺に爪を立てていないので、畑の外で待機していた。テトも混ざっていないのに、何故かあっちは一緒に怒られている。しかも、ミドリの一番近くで……
さすがにこれはダメだろと思い、ミドリに声をかけてテトだけは救出する。
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