2170話 訓練Part12
アクセスありがとうございます。
投稿されていないのに、今気付きました。
今までは持久戦の想定で動いていたが、短期決戦の動きに変わった。
『なお、軍が負けた場合は、特殊訓練を追加で検討しているので、無様な姿を見せないように』
ピーチのセリフの後に、レイリーがさらに爆弾を落とし、顔が青かった兵士たちの顔が今度は、憤怒の色に染まっている。滅茶苦茶怒っているんだけど、レイリーお前なにしたんだ?
この時俺たちは知らなかったが、特殊訓練とは寝る暇を与えない、俺たちの精神的訓練とは別で、肉体的な訓練をさすそうだ。この肉体的な訓練は、筋トレなどで筋肉をイジメるタイプではなく、物理的な負荷をかけて耐える訓練をするというものだ。
想像しやすいものと言えば、拷問をされても耐えられるようにする訓練だ。本来なら、隊長クラスになる時にする訓練の1つなのだが、それを一般兵にやらせると言っているのだ。
これを突破できずに、隊長クラスになれないものがかなりの数いるのだが、それを知っている兵士たちがそんなことをさせるな! と、切れてあのような表情になっているらしい。
その時は本当に理解できていないから、なぜこんなに必死になるのか分からなかった。そのせいで、土木組をかばったシェリルが怪我をしてしまい、更に苛烈な攻撃が開始されたのは兵士たちには単なる不幸だろう。
正面からの攻撃で防ぎきれなかったというなら、兵士を褒めるべきだったのだが、やられた振りをして奇襲を複数人で仕掛けてきたため、さすがに妻たちが怒ったのだ。訓練でやられた振りをしての奇襲は、兵士としての資質が疑われる。
これが本当の戦場なら文句は言わないが、訓練の不意打ちでこちらが怪我したので、みんなキレてしまったのだ。
この不意打ちがあったのは、全力戦闘が始まって30分ほど経った頃だった。
魔法組の範囲魔法で吹き飛ばされ倒れていた所で、マーキングもしていなかったため、倒れている奴らは一律で戦闘不能判定をしていたので無視していたが、気絶が戦闘不能の条件だったので、機会をうかがって一番倒しやすい土木組を狙ったのだ。
ルールには反していないが、さすがにその行いには怒った妻たちが、戦闘不能判定を自身が決めるなら、倒れても追撃を止めなくなったのは、無理もない事だろう。そのせいで、不意打ちをした兵士たちは、しばらくの間白い目で見られることとなったらしい。
普段なら差別的なことをするなと注意するだろうが、レイリーにも訓練であれは無いといわれ、しばらくの間訓練のメニューがヘルモードになったとかならかなったとか……
不意打ちを許してしまった自分たちに怒っていた俺たちは、魔法の威力を上げ追撃も問答無用になり、戦闘が終わる時に余力がないレベルまで振り絞って戦っている。
ある部隊では、シールドバッシュで吹き飛ばされ、巻き込まれて意識が混濁している状況で、追撃をくらい骨折や関節の骨を外されている。
他にも、武器を手放して降参の意思を見せているが、戦闘不能判定を受けれないため、浸透勁などの攻撃をくらって、意識を強制的に飛ばされていた。道徳的にどうかとも思ったのだが、怒っている妻たちを止めることは出来なかったので、兵士たちには両手を合わせておいた。
残り30分ほどになって、こちら側にトラブルが発生する。
ここまで実践的な訓練をしたのが初めてだった土木組が、魔力配分を間違ってしまったようで、息切れを起こしてしまったのだ。
陣形を小さくして結界を張ることで魔力消費を抑えた。
「普段の訓練ならここで離脱させていたのですが、さすがに今回は離脱させられませんね……シュウ様、大部屋1つ小部屋1つを地下に作れませんか? できれば、この子たちを休ませてあげたいです」
ピーチからお願いがある。少し考えて、
「ちょっと待ってくれ」
そういって、レイリーに連絡を入れる。
「レイリー、地下に部屋を作ろうと思うんだけど、ダンジョンマスターのスキルを使うのはありか? それと、守りに入っても問題は無いか?」
『ダンジョンマスターのスキルは、止めていただきたいですが、休憩をする場所をダンジョンマスターのスキルで作るのは問題ないでしょう。守りに入るのはかまいませんが、入り口は最低でも4人は並んで通れる広さでお願いします』
全部をダンジョンマスターのスキルで作るのはダメだが、安心して休める場所として使う分には問題ないと……守りに入って、狭い通路を使うのは無しってことか。
兵士たちはこちらを倒したいから、狭くても入らないといけないが、入れば俺たちからフルボッコ……入るには入れない状況になるってことだな。
しょうがない。多少手間と魔力を消費するが、大部屋に入る通路は部屋の幅と同じにして階段状に作り、300人は入って戦闘ができるだろう大部屋を作り、俺たちを通り越した先に土木組の休むエリアを作った。
大部屋はサッカーコートの2倍ほどの面積のある広さだ。
そこへ逃げ込んだ俺たちは、全方位を敵に囲まれる状況から、前面にしか敵のいない状況になった。敵も遠距離攻撃をしやすくなったが、俺たちは守りに使う労力が減った分、一人ひとりの火力が上がっている。これで、土木組の抜けた分はカバーできているだろう。
日没の時間を知ることは出来なくなったが、それはレイリーの合図があるから問題なし。
「残りもう少しですね。シュウ様、せっかくこういった空間に敵が入ってきましたので、音響爆弾の魔法を使いましょう。対策なしに入ってくるのは、無謀だということを教えてあげましょう」
ピーチが、密室ではないが限られた空間の方が効果が高い、音響爆弾を使用する指示を出してきた。爆発系の魔法も有効ではあるが、あれだと内部にいる人間も階段にいる人間も、重度の火傷を負いかねないので、音響爆弾を使うことを決めたようだ。
ピーチの指示に従って、魔法組が音響爆弾の魔法を使用し、俺たちは遮音結界で無効化する。小部屋に繋がっている通路にも結界を張っているので、土木組にも影響はない。
ダイレクトにくらってしまった兵士たちは、半数以上が鼓膜を損傷して、大半が半分意識を失っているような状況だった。
大部屋は死屍累々……これは立て直す前に終了時間が来てしまうな。
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