2169話 訓練Part11
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シュリが突っ込んだ後魔法が着弾し、その穴を広げるためにアリスとリリーも舞い降りた。
シュリとリリーは、きっちりと受け止め反撃をしているが、アリスは2人より小さな盾で、踊るような滑らかさで敵の攻撃を逸らしながら反撃している。アリスは2人に比べて器用なので、こっちの戦法を選んだんだろうな。
攻撃も正面から受けていれば、疲れが溜まり体力が削られていくので、緩急をつけて動くことで攻撃をかわしつつ休みを入れ、消耗を抑えているように見える。シュリとリリーも、防御や攻撃の合間にしっかりと休みを入れ、可能な限り回復に努めているのが分かる。
ピーチより全力でという指示が出ているので、維持できる最大限のパフォーマンスをするために、しっかりと自分のペースを作りだしている。遊撃部隊は一番疲れるがヒット&ウェイで、一、二撃入れてから離脱を繰り返している。
タンクは持久走のように戦っていると表現してもいいだろう。それに対し遊撃は、インターバルのような戦い方と表現するべきだろう。どちらの方が疲れるとは一概には言えないが、後者の方が消耗は激しいだろう。
チャンスがあれば飛び込んで攻撃し戻ってくる。戻ってきている間は、体を休めてはいるが臨戦態勢は解除できない。休んでいても、いつでも動けるように待機している状態なので、上手く休まないと自滅してしまうだろう。
魔法組は、遊撃部隊が突っ込むための隙を作るために魔法を撃ったり、遊撃部隊が逃げやすいように牽制したりするため、集中力は一番使っているかもしれない。複数人で負担しているとはいえ、常に気が抜けないので精神的に疲れる位置かもしれないな。
そういう意味では、ヒーラーが一番余裕があるのかもしれないが、集団戦の生命線なので、やはりと言っていいのか魔法や矢で狙われるため、守りにも力を割きながら回復をしている感じだな。
簡単な回復魔法なら、ここにいる全員が使えるが、他の行動にリソースを割くのは現状ではありえないので、体力の維持などはピーチ・キリエ・ネルの3人が行っている。
俺は、殿に近い位置で魔法を使いながら、みんなを合流させる役目を担っている。近接攻撃はしないようにしているが、近付かれてしまえば格闘で対応している。素手でも兵士たちの相手をできると考えると、なんか兵士が可愛そうになってくるな。
でも、手加減するつもりは無い。支給品と言っても高級品質ではあるのでしっかりと守れる盾のはずが、脆い石のようにボロボロにかけてしまっている。弁償させることは無いから、思う存分使い潰してくれたまえ。
鎧にも拳型の跡が残り、内臓損傷まではいかないが、骨折はしているであろう攻撃を遠慮なく叩き込んでいる。このせいで首より上は攻撃できない。それをしてしまえば、下手をすると死んでしまう可能性があるから使っていない。
みんなを追いかけながら殿を維持して、敵を近寄らせないように何とか頑張っている。みんなと合流してしまえば俺の負担は減るので、瞬間瞬間で全力を出している。
魔力に余裕はあるな。回復は追いついていないが、この消費量であれば1日は軽くもたせることができるだろう。とはいえ、ジリ貧の状況には変わりはないからな。タイダルウェーブで押し流したり、魔法でダメージを与えているとはいえ、向こうは戦闘不能と判断された兵士はほとんどいない。
広範囲に使う魔法では、決定力にかけてしまうため、一時的に数を削る効果しかない。時間が経てば、回復魔法で復活してくるのだ。
可能な限りで全力を出し始めてからは、半々くらいで戦闘復帰不能にしてはいるが、絶対数の差でどうにもならないのが問題だな。魔力はもっても時間が経てば経つほど、こっちの集中力は低下するし、精神力も削られていく。
とにかく、不利な状況としか言えないのだ。
始まる前はここまで苦戦させられるとは思ってなかった……
予想以上に兵士たちの練度が高かったんだろうな。油断をしていたのもある。すべてが負の方向へ働きかける要因となってしまったのだろう。
シュリが気絶させた部隊には追撃の魔法を使い、戦闘不能判定を出しておいた。こっちの素性がバレているので、この魔法で兵士たちは戦闘不能になったと判断されるだろう。魔法でマーキングもしているので、戦場に戻ってきたらすぐに分かるようにしている。
こういった無駄な魔力も使ってしまっているので、こっちには不利になってしまっているんだよな。こういった乱戦の場合って、出動してもらっている暗部たちが判定を下す前に助けられてしまうことがあるので、しっかりとマークをつけておかないと、復帰してくるんだよね……
強い方が配慮しなければ、ただの虐殺になりかねんからな。
ってかさ、今更だけど……この訓練の終了目標が無くねえか? いつもは、俺たちが全員倒すか倒されるかで終わりにしているけど、今回ってそれすると大変なことにならんか?
「レイリー! 今回の終了目標がない。人数もいつもの数倍いることを考えると、この訓練が数日続くことになる。どうする?」
俺の声を聞いた全員がハッとした表情になる。それは、妻たちだけでなく兵士たちも同じ表情だ。
戦闘中なのに、この場の時間が停まったかのように、動くことが無かった。
「目を覚ませ! 戦闘中だぞ!」
唯一動ける俺が、拡声魔法を使って全体に聞こえるように、爆音と言ってもいい音量で活を入れる。
全員が最悪の想定をしたのだろうが、兵士たちには少なくとも休む時間がある。戦闘をこのまま続けるなら、俺たちには休む時間がない。圧倒的不利だが、いざとなれば魔法で地面を掘ってこもれば時間は稼げるだろう。
だけど、訓練と考えるとこの方法は、本当に意味がない。逃げられる前提で考えれば、負けることは無いからね。
今更だけど、思い付きで訓練なんてするもんじゃないな。
それよりレイリーから連絡が戻ってこないんだが……
『訓練中の全員に告げる。今回の訓練は、日没まで。後2時間は無いと思われる。勝敗の判定は、部隊の損耗率で判定を下す。これより、気絶した人間も戦闘不能判定とし、戦闘復帰を禁止するものとする』
おっと、こっちに圧倒的有利な条件だな。
「みなさん、後2時間だそうですよ。本当の意味で出し惜しみなしです」
そのセリフに顔を青くしたのは、兵士たちだった。
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