2160話 訓練Part2
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これは想定していた中で、こちらが一番不利な状況と仮定している。ただ、ここまではやくこの状況になるとは思ってなかったんだよね。
魔導無線以外に長距離で情報を伝える物の存在を軽視していた証拠だな。俺も2本目の煙を見てやっと気付いたもんな。すっかりその方法を失念していた。
これはしっかりと準備をしていた軍の勝利だな。
こうなったら、最速で駐屯地まで移動をするべきだと判断して、ピーチが指示を出している。
俺たちが真っすぐに駐屯地に向かっていると、新しく黄色と緑の煙が上がった。何かを伝える狼煙なのだが、こちらには情報が何もないので、何を伝えているのかは分からない。分からないことは考えても意味が無いので、罠の可能性を考えながら可能な限り最速で移動を続けている。
見つかってから5分、訓練開始から15分経った頃、かなり遠くからだが魔法と矢が飛んできた。魔法は大した威力はなさそうなので、斥候が無理やり覚えた魔法って感じだな。だけど、牽制としてはもちろん効果があるので、時間稼ぎを始めたってことか?
足止めではなく時間稼ぎ。俺たちの進行方向からではなく、進行方向の左右から攻撃が来ているのが肝だな。多分、足止めはほとんどできないと判断して、可能な限り時間を稼ぐというのが、あの狼煙の意味だったのだろう。
こちらもさすがに無防備に魔法や矢を受ける訳にはいかないので、足を止めて魔法の着弾地点より手前で止まる必要がある。タフネスに自信はあるが、それを前面に押し出していい訓練ではないので、敵の攻撃にはしっかりと対応する形だ。
本気であれば、魔法ですべてを吹き飛ばせるが、今回はその方法は無しなので、止まったり魔法で相殺したり、壁を作って対応する方法を選択する。
想定はしていたが敵の初手なので、止まって回避するという選択をピーチは取ったみたいだな。次からは壁か相殺を狙うように、指示が出る。
再び走り出し、少し進むとまた魔法と矢が飛んでくる……先ほどより少し数が多いが、土の壁で直撃を避け2枚出した壁の間をみんなで走る。
次も同じように防ぐが、ピーチの指示が変わる。魔法の数が多かった方へ進路を変え、時間稼ぎをしてくる部隊に向かうみたいだな。
これはまず追いつけないと思う。だから、この方向転換には違う意味がある。進路を変えて時間稼ぎの攻撃をしにくくさせる事と、相手の部隊の体力と集中力を削ぐための方向転換だ。
さすがに追いつかれないと分かっていても、集団で攻められれば逃げるのが普通だ。斥候たちは追いつかれるかもしれないという、プレッシャーで俺たちとの距離をしっかりと考えながら行動する必要がある。
俺たちに取っては、多少移動距離が長くなるだけで、大したストレスにもならない。言うなら、時間稼ぎの攻撃の方がストレスを感じるな。足を止めたり、相殺したり、壁を作ったりしないといけないので、ちょっと面倒だと感じる。
少し敵の斥候を追いかけたところで、ピーチがまた最短距離で駐屯地に向かうコースに変更する。
俺らの様子を見て、慌てているのが良く分かるな。土木組の子たちは……今回はさすがに分かっているみたいだね。
『ピーチさんの指揮が上手いですね。このコースを取られると、さすがに私たちでも焦ってしまいますね。適度に斥候にもプレッシャーを与えていますし、今回はピーチさんの方が上手だったということですね』
『これは仕方がないと自分も思います。実力差を考えれば、しっかりと時間稼ぎにはなっていると思うので、合格点かと』
副官たちは、これでも問題ないのか……あまり時間は稼げてないけど、これで良しってことは、何かしらの対策が間に合うってことかな?
1~2分毎にこちらへ魔法や矢を撃ってきて、時間稼ぎが続く。時々コースを変えながら移動をするが、もともと遠距離の攻撃なので、多少の移動では敵の手を緩めることは出来なかった。
どうするのかなと考えていると、斥候からの攻撃の仕方が変わった。先ほどまでは、まとめてドカンと来ていたのだが、散発的に魔法や矢がとんでくる。
まとめられるより、散発的の方が対処が面倒なのだが、今までそれをやっていなかったのに、いきなり方針を変えるのはなんなんだろうな?
よくよく観察すると、駐屯地の方角からいくつも紫色の煙が何本も上がっている。
俺以外にも気付いているメンバーがおり、ピーチに報告が入る。
狼煙と同時に攻撃の仕方が変わったのは、間違いないと思われる。それが意味することが良く分からない。可能性として考えると、迎撃部隊が展開を開始したとかそんな感じだろうか?
狼煙が上がってから、大体20分くらいか? 駐屯地までの距離は……まだ20キロメートル以上あるな。敵の時間稼ぎが成功しているな。
散発的な攻撃を防ぎながら進んでいると、前方に兵士たちの集団が見えてきた。駐屯地まで15キロメートルをきった所かな? この距離で見えるってことは、数キロメートル先にいのかね。遠くても2キロメートルってところかな。
起伏もあるので正確な距離は分からないが、視認できるということはおそらく1~2キロメートル先くらいだろう。
それを見るとピーチが、停止の指示を出す。
猪突猛進って感じで突っ込むわけにもいかないので、速度を落として敵の部隊に近付くようだ。そして、またチームを3つに分け、時間稼ぎをしてくる斥候へ2チーム、見えている敵の防衛部隊に1チームを言う配分で攻めるように指示が出る。
斥候のいる位置からチマチマと牽制されるのは、イラつくので早めに合流させようということだろう。指示を出したコースが、少し迂回をして敵の部隊と合流しやすいような位置取りだ。
斥候を分断させても、俺たちでは追いつけない事になっているので、合流させてしまおうという魂胆らしい。
こちらに斥候からの牽制が来なくなったので、一気に防衛部隊との距離を詰める。その距離およそ500メートルを切った所だろう。魔法と改造銃を使って、攻撃を始める。
一方的に攻撃していると、敵部隊に動きがある。俺たちに向かって距離を詰めるような動きをしている。ピーチは進んできた分だけ下がり、一定の距離を保っている。
防衛部隊がこの後、どう動くのかが見ものだな。
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