2159話 開始…訓練Part1
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時間がやってきた。俺たちは、一塊になって行動を開始する。駐屯地までの距離は、およそ40キロメートル。普通に歩けば10時間近くはかかるだろうが、俺たちの速度なら1時間もかからずに到着できるだろう。
この速度も、馬を使ってかなり速い速度を想定した時間だ。馬がそんなに長時間速度を維持できるわけ無いだろ! とか思うだろうが、ここは異世界である。馬にもLvがありステータスがある。
だから、軍馬として使われる馬はもっと早く移動することも可能だ。この速度は、盗賊崩れでも入手可能なレベルの馬ということだ。
その馬の速度にたいして、俺たちは生身でこの速度を出している。フル装備の状態で移動していることを考えれば、かなり高スペックな肉体を持っていることが、斥候たちに伝わるだろう。
隠密行動をしないで、身をさらけ出して進んでいる理由は、俺たちが隠密行動で近付けば、おそらく誰も気付けないため、それでは訓練にならないので、少し存在感を薄くしてはいるが、すぐに見つけられる程度の隠蔽しかしていない。
正直、俺たちクラスの人間が隠密行動をして近付いてきたら、自分でも発見することは出来ないと思ってる。四六時中気を張って、結界魔法などで情報を得ているような状態にでもしないと、絶対に無理である。
でも、俺はダンジョンマスターなので、マップ先生を使った索敵が可能なので、こっちのスキルを解禁するなら、ほぼ見破ることは出来るだろう。だけど、マップ先生に表示されなくなるアイテムもあるので、絶対ではない。
そんな奴らのために、主要都市では視認で発見できるように、クリエイトゴーレムでいろんなところに、カメラを設置している。自分で判断できるタイプのゴーレムカメラで、マップ先生と連動しており、映ってなかったら監視室に連絡が入るようになっている。
今までに何回か作動したことがあったが、どれも誤作動だったので大事には至らなかったが、もし本当に隠れられるアイテムで潜入されて、破壊工作でもされたら大変なので、誤作動だったとしても修正などは行わずに、そのままで作動させている。
マップ先生に映らない奴は、マジで街崩壊させられる可能性があるからな。多少の誤作動なら、甘んじて受け入れるべきだろう。設定をミスって、肝心な時に見逃すことがある方が問題だからな。
一応、暗部の人間や兵士たちにマントを着せて、マップ先生に映らないようにして、街を歩かせて動作確認をしているので、誤作動で起きる分には確認班に骨を折ってもらうことで決着がついている。
その誤作動が、1日に何十回とあるなら話は別だが、この誤作動は1週間に1~2回程度なので、そのくらいは頑張ってもらおう。
そういえば、今日の指揮は久々にピーチが執っている。プラムたちも成長して、ミーシャたちがいれば特に問題も起こさないし、従魔たちも近くについているので、トラブルなく過ごせるようになっている。
そのピーチが、移動速度を上げるように指示を出してきた。本来のスピード、40キロメートルを1時間以内に移動できる速度にあげる。単純に、マラソン選手の倍くらいの速度で走る感じだな。
レイリーから聞いた斥候の偵察範囲は、およそ30キロメートルなので、15分もすれば斥候がこちらに気付くはずなので、そこまでは一直線に駐屯地へ向かうコースだ。
交代交代でだが、相手の斥候がいないかを索敵しながら走っている。全員でやらないのは、集中力がもったいないからである。多少陰になるところもあるが、5人で前方を確認していれば、問題なく斥候を見つけられるので、余力を残すために交代で索敵している。
10分程走ると、ピーチが急に止まるように指示を出す。
土木組は少し遅れてしまったが、俺や妻たちはピーチの指示が出る前に気付いていたので、簡単に止まることができたのだ。
余力を残しているとはいえ、俺らの動きをみて斥候が気配を先に出すのはどうかと思うぞ……
俺は指示を出さない代わりに、レイリーたちとも連絡ができるように無線機をつけている。その無線機から、
『シュウ様たちはすぐに気付きましたが、土木組のメンバーは気付いていなかったので、合格ラインではないでしょうか?』
副官の内の1人の声が聞こえた。
『警戒のための斥候だから、本職ではない人間も担当しているから、合格点はあげられるのではないでしょうか?』
もう1人の副官の声だな。
『そうだな。さすがに、シュウ様と奥方様たちに気付かれたからと言って、不合格とは言えないですね。少し気付かれる距離が遠い気はしますが、予定より早めに発見できたので、プラスマイナスゼロですかね』
最後はレイリーの声だな。俺的にはアウトかなって思ったけど、俺たちを基準にしてはいけないみたいなので、レイリーたちの評価を支持しよう。
感覚の鋭い遊撃や斥候役の妻たちが、相手の斥候の様子を観察している。どう動くかを見るように指示しているようだ。スリーマンセルのようで、3人1組でここら辺を索敵していたようだな。
相手の規模は10倍以上だぞ。君たちはどういう判断を下すのかな?
今回に関してはほぼ一択なので、それ以外の対処方法をとらないことを祈る。
こっちがそちらに気付いていることはバレてるな。3人が同時に違う方向へ走り出した。正解。誰かがとどまって時間稼ぎは、今回に限ってはNGだ。そもそも、ここまでの人数差があると足止めが意味をなさないことが多いからだ。
地球で銃を使っている戦場であれば別だろうが、ここは異世界で遠距離攻撃手段が少ない。効果的な攻撃をできる人間は、斥候に向いていない場合が多いので、ここでの判断は満点。
全員違う方に逃げるのは、誰か1人でも逃げ切って情報を伝える必要があるからだ。
ピーチが指示を出し、チームを3つに分けて逃げた斥候を追う。
速度的には、俺たちが設定している速度では追いつけないな……体力も素早さもある兵士がしっかりと斥候を務めているんだな。
と考えていると、不意に逃げ出した斥候3人から赤い煙を吐き出しながら、空に登る物体が見えた。
一瞬何かと思ったが、次の瞬間に俺たちの位置から見て、駐屯地側にさらに赤い煙が立ち上る。
なるほど、狼煙か!
確かにこれなら、走るより早く情報を伝えられるな。おそらく色で状況を知らせているんだろうな。
それを見たピーチは、斥候を追うのを中断して集まるように指示を出す。
「今のでおそらく、駐屯地に非常事態だということが伝わってしまいました。捕らえてもあまり意味が無いので、最短距離で駐屯地へ移動します」
見つかって存在が知られたのであれば、真っすぐに突っ切ってしまおうということだ。
これは想定していた中で、こちらが一番不利な状況と仮定している。ただ、ここまではやくこの状況になるとは思ってなかったんだよね。
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