2151話 ウルの疑問と壁の勉強
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「お父さん、じゃあ本当に面倒っていう理由で、大きな石を積んでるの?」
「一番大きな理由は、今考えるとそうかもしれないね。このくらいの大きさが、作るのには一番速いんじゃないかな? これ以上大きくすると、人造ゴーレムの負担はともかく、人造ゴーレムの移動だけで石が分けるかもしれないしね。時間を考えると、このくらいがよさそうだったんだ」
「そうなんだ。だけど、お父さんなら、魔法で一気に作ることできるんでしょ? 簡単に作れるって言うなら、そっちの方が簡単じゃないの?」
「確かに、時間という一点だけを見れば、ウルの言った方法が一番だね。「じゃぁなんで…」でもね、それはあくまで時間という一点だけなんだよね」
「……どういうこと? 石を召喚するのだって面倒だよね? それも何回も何回もたくさん召喚しないといけないよね? なのに魔法で作るのは時間だけなの?」
「そうだな……ウルは、一気に限界まで魔力を使ったことある? 半分くらいまではあるんだね。その時の自分の様子って覚えてないかな?」
「あの時は……ちょっと疲れて、少し気持ち悪くなったかな?」
「ちょっとずつ使っている分には、そこまできつくならないんだけど、一気にたくさん魔力を使うとね、気持ち悪くなっちゃうんだよ。回復魔法とかでも治せないし、特に9割以上使うとね復活するのに時間がかかるんだよ。だから、魔法で作ることはしないんだよ」
「??? なら、無理のない範囲でちょっとずつ魔法で作っていけばいいんじゃないの?」
「あ~そう思うよね。ウルはまだ経験したこと無いかな……魔力で物質を生み出す場合、一度に多くの量を作った方がロスが少ないんだよ。例えば、100メートルの壁を作るのに1000の魔力を使うとして、10メートルずつ作った場合は、50メートル分くらいしか作れないんだよ」
「……でも、半分で済むなら気持ち悪い思いしなくて済むんでしょ? ならその方法でちょっとずつ作っていけばいいんじゃないの?」
「これだけ作る物が大きくなると、イメージが上手くできていても、何度も魔法を使うのって大変なんだぞ。簡単に使っている人たちが周囲にいるから、分からないかもしれないけど、魔法のイメージで頭を酷使しても、魔力をたくさん使ったみたいに気持ち悪くなるんだぞ」
「そうなんだ……便利に使ってるから、簡単だと思ってたけど大変なんだね」
「でも、土木組みたいに人数がいれば、その方法でも作ることは出来るね。ここにきている軍の土魔法使いの人たちだと、さすがにここまでの物は作れないけどね」
「そっか! お姉ちゃんたちは、人数でカバーして壁を作ってるんだね。お姉ちゃんたちの話を聞いてて、お父さんの話を聞いたから、ちょっと分からなくなっちゃってた」
なるほどね。土木組から聞いていたから、俺の作り方に疑問を覚えたのか。1人でやる場合は細かく作るより、一気に作った方が最終的な負担が少ないから、それを前提に話してたな。
その後も俺の作業を見ながら、ウルは色々質問をしてきた。
俺たちが作っている壁は基本的に、統一された石を規則正しく積んでいく形で壁を作っているが、一般的な壁はここまで整った形をしていない。ある程度形は整えているが積みながら調整している物や、まったく違う形を不規則に隙間なく積む物もある。
ヨーロッパの方にある壁や城は、前者のようにある程度の形の物を積みながら調整している物が多かったはず。後者の違うサイズの石を積んでいるのは、日本の石垣がイメージしやすいだろう。実際には違うのだが、まぁ見た目は似たような物だ。
日本の石垣は、表面に近い場所はそこそこ大きな石で作られているが、石垣の内側は砂利や砂、土などで隙間なく埋めているところに、表面を覆う形で石を積んでいることが多かったと思う。
平地では前者のような壁が多く、山とか起伏が激しい場所、斜面などでは後者の壁が多い。
昔、壁を作る時に一応勉強したんだよな。って、そう思えば、ディストピアの壁を作る時って、土魔法で作ったんだっけ? 初めからクリエイトゴーレムだったっけ?
そう! クリエイトゴーレムの場合だと、魔核からも魔力を引き出すことができるから、一気に広範囲を作ることができるんだよな。魔力で強化するから、土が原料でも壊れにくい。他にも元が土なので修復コストが安いという所は便利だったな。
まぁクリエイトゴーレムの場合は、素材が無いと作れないっていう縛りがあるな。もともと、物質を変形させる魔法なので、変形させるものを準備しなければ使えないのは、当たり前というもんだな。
どんな作り方にもメリットデメリットはある。ウルも知りたがったので、細かく説明してあげた。
壁を作る方法は、大まかに分けて3つある。魔法で全部を生み出して作る。ある物を利用して魔法で作る。すべて手作業で素材を準備して積んで作る。
大きく分かれば、この3つだろう。
全部魔法で生み出して作る場合のメリットは、技量次第だけど俺たちクラスなら、他の2つに比べて頑丈に作ることができる。デメリットは、壊れた場合に修復するのが困難。同クラスの魔法の使い手が修理しないと、反対に脆くなってしまいすぐに壊れる原因となる。
素材を準備して魔法で作る場合のメリットは、全部魔法で作るより圧倒的に魔力が少なくて済むし、魔法の技量も多少落ちても作れるし修理しやすい。デメリットは、魔力が壁から無くなった後の劣化が早い。素材によっては簡単に壊れてしまう。
すべて手作業で作る場合のメリットは、魔法使いがいなくても作ることができる。デメリットは、前者2つに比べ圧倒的に時間がかかり、壊れ方によっては修理が難しい。素材を運ぶのも一苦労。
簡単に説明すればこんな感じだろう。
俺たちが最近採用していうのは、1と2と3のハイブリット型……いいとこどりといった感じだな。
魔法でレンガを生み出し、手作業で積んでいき、魔法でレンガを接着させる。レンガを作れる魔法使いが沢山いればいるほど効率が上がる。積み上げていくのは、魔法が使えなくても問題がないのだ。レンガを積む時にモルタルを使えば、最後の仕上で魔法を使わなくても問題が無くなる。
これの良いところは、修理する素材をあらかじめ準備しておけるので、壊れた際に修復がしやすいという利点がある。壁に張り付かれたら、投石用として使ってもいいだろう。
強度に多少問題はあるが、魔物用としてはこれで十分だろう。人間同士となれば、壁が全く意味のない物になることもあるので、戦争の事は考えるだけ意味がないだろう。
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