2133話 商会の報告
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ゼニアの報告が終わり、補佐役の人はハンスというらしい。何度か顔を合わせているが、名前は知らなかったな。今まで挨拶が無かったのは、俺に名前を憶えていただくほど仕事ができるわけじゃなかった……というのがゼニスの言だ。
正直な話、ゼニスの補佐をできているだけで、十分な能力を持っていると思うけどな。支店長が大店の紹介のトップより仕事ができるって話だからな。その上に立つゼニスの補佐ができるのは、すごい事だと思うけどな……
なんて考えていたら、
「私だって、シュウ様に拾われる前なら、ハンスほど仕事をできない状態でそこそこの商会を動かしていたのですが、シュウ様から学んだことを考えれば、この程度ではまだまだですね。全部を任せるわけにはいかないですが、一部を任せることで、成長を促せると考えています」
要は、俺がゼニスに行ったことを、ダウングレードしてハンスに体験させて、成長させようってことか? 研修とは違うのかな? 俺的には、ゼニスしか任せられる人間がいなかったので、日本の知識をつけたブラウニーを教育係として着けただけなんだけどな。
そのブラウニーも、完璧に覚えているわけではなく、俺の売る覚えの知識と本から学んだことを、家事の合間にゼニスに教えていたはずなんだよね。家事の合間なのは、ブラウニーにとって家事が優先事項だからだ。
こっちは、併設された施設の報告もあり、概ね黒字みたいだな。一部赤字の所もあるがそれは、俺の管理下にある街の支店ではなく、帝国にある街の支店だった。
何で赤字になったのか気になったので、聞こうとするがその前に説明が入った。
「この支店の赤字なのですが、この街の領主が失策をして、その埋め合わせとして街にある商会から徴収を行ったそうです。徴収に応じた場合は、立て直したら税の優遇政策を打ち出すとのことです。失策をして、徴収まで行ったことを考えると、立て直しができたとして、数年では難しいと考え、撤退指示を出しています」
だってさ。失策がどんな物かは、皇帝に問い合わせれば分かるだろうが、そこまでして知りたい内容とも思えないので、ハンスとゼニスの意見を支持する。
徴収が必要になる失策って、そんなに金を使ったのかな?
俺の街に当てはめて考えれば、壁工事をしていて作っている最中の壁が壊れ、死人が出た……みたいな感じかね?
知りたいとも思えなかったが、気になってしまった。
その答えもすぐに出たので、これ以上悩む必要もなくなった。
どうやら、失策と言っているようだが、実際は領主の散財が原因なんだとか。失策に見せかけるように、口減らしを兼ねたスラムの人間を使った事業で、損害を出したように工作したため、商会の人間では分からなかったそうだ……いや、ゼニスは知っていたみたいだ。
ハンスは、知らなかったとはいえいい判断を下したと思うぞ。そして、ゼニスは相談を受けたが、助言という形でいくつかの道を示しただけだったようだ。これも、成長を促すための試練だったのだろう。
目の届かない所だと対応に時間がかかるが、目の届く場所ですぐにヘルプに入れるようにして、成長を促しているんだな。
散財による徴収なら、間違いなく第2第3の徴収があるだろう。そして、優遇政策は行われず、いつの間にかなかったことにされて、狸寝入りってところだろう。この世界の口約束は、無いのと同然だからな。
というか、俺の商会が無くなるってことは、街の経済にも打撃を与えて、街が混乱するだろうな。領主が混乱を鎮圧するために見せしめをするか、無能のレッテルを張られ皇帝に処刑されるかの、二択に一つだろう。
無駄に混乱させたいわけじゃないので、後でグリエルから皇帝に連絡を入れるだろう。復興には時間がかからないだろうが、一番繁栄していた時期には戻れないだろうな。残った商会で、商隊を作れるだけの力が無ければ、維持で終わりそうだ。
帝国の息のかかった商会を参入させるかもしれないが、息がかかっていても商会は商会なので、必要なだけの利益を求めるので、緩やかな成長はあるかもしれないが……全盛期は取り戻せないだろう。
利益が無ければ商会だって成り立たないからな。不足分を帝国が補填するとかであれば、話は変わってくるが、おそらくそれはしないだろう。クソ領主の残った財産は、徴収された商会などに返されるだろうが、全額ではないだろう。
多少の優遇政策は打ち出して、しばらくは帝国がけつ持ちをするだろうけど、その後は後任の領主が独自に頑張るしかないからな。
国という体裁をとっているが、帝国は基本的に、国の庇護下にある街という表現が分かりやすいだろう。
王国でもそうなのだが、基本的に街はその街だけで完結するように作ることが、コンセプトとして存在している。それでも食料関係は、強かったり弱かったりする街があるので、街にある商会を使って交易をさせている感じだ。
じゃぁ、うちの商会のキャラバンは何をしているかといえば、余剰分を不足しているところへ運びながら、ゴーストタウンの商品を売りさばいている感じだろう。その移動中に、襲ってくる魔物も盗賊も全て殺しているので、ジェノサイドキャラバンと呼ばれているのだ。
強くてお金を持っているから、強欲な領主なんかは召し抱えようと、権力と戦力をちらつかせることもあるらしいが、全部返り討ちにしているんだとさ。
時には、運が悪く亡くなってしまう人もいるが、そういう人間に対しては、死んだときに遺産を渡す相手を指名できるようにしているので、商会の審査に通ったら遺産をすべて渡している。
たまに、ろくでもない相手を指名していることもあり、しっかりと調査してから渡すことになっている。
めっちゃ、話が脱線した。
まぁ、徴収した領主は、いろんな意味で後は無いだろう。必死に頑張ってくれたまえ。
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