2132話 午前中の仕事
アクセスありがとうございます。
グリエルたちの報告は続き、領域内の話になった。
こういう世界だから、街の大きさには限度がある。無限に大きくできるわけではない。食料の問題で大きくし過ぎると、いきわたらなくなってしまうのだ。そのため俺の管理下の領域では、安全を確保できるような小さな街を作って、野菜の生産などをしている。
農家が多く集まる、便宜上、村と呼んでいる場所が増えてきている。街の周りにも試験農場のような物を作っているので、街を大きくするより、村を作った方が色々な意味で便利なのだ。
兵士たちの駐留場所にもなり、魔物への対応もできるようになっている。冒険者ギルドがないのは、村に置くと荒くれ者が増えてしまった時に、対応する人手が足りなくなるためだ。
街で依頼を受けて、村で補給や拠点にして仕事をこなして街へ帰る……といった流れができているみたいだな。野営が減って、冒険者たちの負担は減り、仕事の効率が上がり、安全が高まるといった好循環も生まれているのだとか。
王国や帝国にも、便宜上、俺たちが村と呼ぶような街はあるのだが、そういった場所は安全性が低く、盗賊に襲われる可能性も高い。そして盗賊も、こういった場所の有用性は理解しているので、殺したりするのではなく、持続的に標的にして盗みを続けるんだとさ。
ヒャッハーな奴が多いと思っていたが、頭を使うクズどももいるんだな。それが俺の偽らざる感想だった。
それにしても、何で今日こんな報告を受けているのかね? 俺が仕事終わって帰って来てからでもよくないか? とか思っていたが、こういう時の方が俺が真面目に聞くので、チャンスを逃さないために数日かけて、報告する内容をまとめたそうだ。
すいませんでした。報告のまとめありがとうございます。
グリエルが最後の報告を終えた頃、執務室に新たな人間が入ってくる。ゼニスとその息子、後は補佐役の人だな。最近、息子の教育をしていると小耳にはさんだが、上手くいっているのかね? いろんな所へ行かされ、苦労しているような話を聞いていたが……大分顔つきが変わっている気がする。
ゼニスは、財務を担当しながら俺の商会を動かしてくれているので、とても感謝している。負担が大きかったので、グリエルたちの指導した人間から、財務系に強い人間を引き抜いて補佐役に命じて、次代の財務担当を任せる人員も育ててくれているんだったな。
今日の報告はゼニスからではなく、街の財務関係に関しては補佐役の人から、商会の事に関してはゼニスの息子からという事らしく、連れてきたようだ。
今日連れてこられたゼニスの息子のゼニアは、緊張でカチコチになっている。もう1人の息子のゼパイルは、確か治療院とか商会に併設されている施設の管理者的立場だったっけな?
ゼニアは、ゼニスに促されて話し出す。
商会の活動報告を聞いて、収支、特別依頼でかかったお金の精算、継続して動かしているキャラバンの出費等々、大まかなところの報告をしてくれた。
俺がゼニスにお願いしていたように、必要なことを必要なだけ報告してくれている。
日本にいた頃、オンラインゲームで知り合った人が、月に1回ある報告会の愚痴を言っていたことを思い出して、無駄な話を入れず簡潔に話を済ませるように指示していたのだ。
聞いた愚痴は……13施設の長が集まり、収支報告と活動報告を行う報告会の話だ。これ自体は、なんの珍しいものでもない。各施設でどれだけの売り上げが出ていて、収支がどのくらいで、利益がどのくらいあるか、1ヶ月で行ってきた営業活動、来月の営業予定などを報告する会議だ。
俺は初め聞いたとき、何で愚痴になるのか分からなかったが、聞いた内容があまりにも酷かったのだ。
どのくらいの時間で会議が終わると思うと聞かれ、13施設の報告、統括部長の話、各10分程と計算して、2時間前後で終わると思うと答えた。
そしたら、笑われた。やっぱりそう思うよな? ってね。意味が分からなかったけど、次の言葉で絶句したのを覚えている。
朝9時に会議が始まって、昼をはさんで夜の7時まで……
???
最初、言っている意味が頭で理解できなかった。何で9時から19時? 食事休憩は30分程だとのことで、9時間半も報告会があるんだとさ。しかも月1回、その報告内容も毎回大して変わらないから、嫌になるって言ってた。
その人の報告は、10分あれば終わらせられると言っていた。報告すること、聞かれることが変わらないんだから、カンペを用意すればいい、すぐに答えられない内容なら、いつまでに報告書をあげます、といえばいいだけなのだと言っていた。
話を聞いていると、統括部長と呼ばれている人の質問の仕方も変だとは思ったが、新人が出来ることを先輩方が何でできないのか、不思議で仕方がなかった記憶がある。
自信がなさそうなのも良くないって言ってたっけ? 報告は、あった事を報告するしかないんだから、自信をもって言い切るべきだ。いい結果でも悪い結果でも、実際に起こった事なので覆せないのだ。事実を事実として報告する。社会人として大切なことである。
余計な飾りつけをせずに、良かったことなら継続して行い、悪かったことなら改善点をあげ、時には改善方法を知っている人がいるなら、教えを請えばいいのだ。
そんなことも出来ない人間が、多くて困るって言ってたな。
報告が簡潔な新人に報告が下手な先輩が、秘訣を聞こうとするだろうか? とは思ったが、少なくともエリアマネージャーの存在はあったみたいなので、その人を通して……いや、そのエリアマネージャーも、新人の言う事なんて聞かないか?
今考えても、良く分からん会議をしている会社もあるんだな。
っと、話が逸れた。こんな話を聞いていたので、俺は報告は簡潔に済ませるようにお願いしている。どうしても説明したいが長くなる場合は、先に書面で報告書を出してもらい、読んだうえでこちらから質問するという方法をとっている。
報告書がしっかりかけるなら、説明してもらう必要はないし、気になる部分を説明してもらうだけで済むので、お互いの時間も無駄にならない。中には、どうでもいい内容を、盛大にして報告書とかあげてくるアホはいるけど、そういったやつは、研修にまわされている。
そういう点では、ゼニスの息子ゼニアは、しっかりと必要な部分を必要なだけ報告してくれているな。
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