2130話 模擬戦の意味
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あの後も模擬戦を続け、最終的に7勝3敗となった。
負けた2回は、誘導ミスとか読み間違えとかではなく、純粋に人造ゴーレムの身体能力が、俺の想定を上回ってしまい、対応できなくなってしまった形だ。肉体強度は人間に合わせるようにしているが、動きに関しては制限をかけてなかったため、想定以上の動きをされてしまった形だな。
人間だって、常にトップギアで戦っているわけじゃない。緩急をつけて、虚を突いたり力押ししたり、色々な戦法をとる。そんな小細工をしなくても、一撃で相手を沈められる力があれば、最短距離で敵を倒すんだけどね。
いくら強化された肉体とはいえ、装備を身につけていない生身の部分なら、ある程度の切れ味……攻撃力があれば、普通に切られるからね。油断せずに戦うしかないんだよね。
相手によっては、浸透勁を使い一撃で落とせるけど、この攻撃が通じる相手なら、近付くより遠距離から魔法を撃っていた方がはるかに安全なんだよな。
勝った5試合は他の2試合と同じで、詰め将棋みたいに相手の動きを制限して、最後に王手で詰みといった感じだったな。
全部で10戦して感じたことは、人造ゴーレムは可能な限り浮かせて対応する方がいい、ということだな。負けた2戦のうち1戦は、人造ゴーレムが異様に低く構えており、俺の誘導には乗ったのだが、俺が想定していた場所以外で足をついて、速度をあげられてしまい、負けた試合があった。
いつでも足を伸ばせば、地面に足が付く位置で体をキープしていたのだ。そこを読み切れなかった俺は、相手のペースに引きずり込まれ、後手に回り負けてしまった。
ミスリル合金製の人造ゴーレムに比べると、かなり早くなっており、身体能力は余裕で俺を上回っていた。俺やシュリも、肉体活性に力を入れて行えば、同等の動きをできるだろうが、それは俺の脳が処理できるスピードでは無いので、実質無理と言わざるを得ない。
雷付与で思考加速をすれば、制御できないことは無いが、ほぼすべてのキャパシティを肉体活性と雷付与で持って行ってしまうので、同じ速度で動けるだけになってしまう。
それで十分だと思う人もいるだろうが、相手はアダマンタイト製。俺の質量の何十倍も重いのだ。同じ速度同じ体系だったとすれば、質量が重い方が圧倒的に破壊力は高くなる。
そういう点を考えると、使用するのは愚策である。
ただ、アダマンタイト製の人造ゴーレムに通じるのなら、ほぼ大半の人間に通じると考えていいだろう。盾を持った想定や重武装も想定しているが、動きが遅くなるなら敵ではないだろう。
要は盾や重武装を貫通できる攻撃力があれば、問題ないのだ。魔法矢の散弾は効かなかったとしても、強力な弓と貫通力や破壊力の高い矢を使って、攻撃すればいいだけの話だからな。
回避が遅くなるなら、タダの的でしかない。
やはりネックになるのが、想定以上、対応できない速度の持ち主だな。後は守りの硬い敵にも通じないだろうな。詰将棋のような攻撃は、シエルには通用しないだろう。結界を使って防げばいいだけだからな。それに、シエルには勝つ必要がないのも大きな点だな。
守りに特化しているシエルは、周囲を守れれば問題ない。攻撃は他のモノがすればいいのだ。うちにはそれこそ、攻撃を担える奴が沢山いるから、シエルは守ればいい。
そもそも、四聖獣にはこの方法は使えないんだよな。シエルも含めて4匹が全員空中で移動する術があるので、俺の対応の外に行ってしまうのだ。あいつらなら、自力勝負になれば負けないので、詰め将棋をする必要もないんだけどね。
詰将棋の方が強い気はするのだが、例外もいることは忘れてはいけないだろう。
模擬戦が終わることには、妻たちや子どもたちが全員集まってきていた。下の子たちは、まだ眠いので母親に抱き着いているが、上の子たちはキラキラした眼差しで、模擬戦を見ていたな。その視線がこそばゆくて、時間前にやめちゃったんだけどな。
家の中まで聞こえてはいなかっただろうが、俺がや御付きの四聖獣たちがおらず、外で戦っている音がすれば、人が集まってくるよな。下の子たちは寝かせたままでもよかったのでは? と思ったが、先日の件があるから、連れ来てたそうだ。
寝て起きて誰もいなければ、むくれるからな。ああなると大変だから、連れてきてくれたみたいだ。
上の子たちみたいに、むくれなくなる日はいつ来るのかね?
「シュウ君、お疲れ様。バザールさんに聞いたけど、アダマンタイト製の人造ゴーレムと試合してたんだってね。欠陥品ではあるけど、力を発揮できる環境があれば、ほとんど無敵なんだから、無理しないでよね」
ミリーの言いたいこともわかるけど、模擬戦として想定上最高の個体がそこにいるのだから、それを倒せるようになっておきたいじゃん。いざという時にみんなを守るためにさ。
「そんな相手がいたら、シュウ君には戦ってほしくないんだけどね。従魔たちや人造ゴーレム、スケルトンたちに任せて、ダンジョンの底に落としてから、メグちゃんとシリウス君に倒してもらえばいいだけよ。ダゴンを近くに置いておくのもいいかもね」
水で動きを制限すれば、呼吸のできない相手はそのまま死ぬな。呼吸が出来たとしても、水の中でリバイアサンには絶対に勝てない。ダンジョンの底に落とせば、それで終わりということだ。
色々想定することは悪い事ではないが、その想定内で前線に出て戦う必要はないと、妻たちにきつく叱られてしまった。
確かにその通りなんだけど、強いにこしたことは無いから、訓練は続けるよ。
妻たちも戦う必要はこれっぽっちもないが、訓練はしっかりと続けているからな。拒否されることは無かった。
それにしても、負けたもう1戦で一度直接殴られた場所が、マジでヤバかったな。質量が何十倍もあると、高速で杭が撃ちだされてくるような衝撃だったわ。左腕の肩付近で受けて自分から後ろに飛んだのに、骨がぽっきり折れたもんね。
痛みよりも、動かせなくなったことにビックリしたわ。
会話をしていると、シンラたちが目を覚まして、早く食事へ行こうと騒ぎ出したので、みんなで食堂へ向かった。
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