2128話 戦い方の模索
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久々に戦闘用の靴を履いたな。ハイカットの靴なのだが、足首の制限の全くない、クリエイトゴーレム製の靴だ。ドラゴンの革を使ったり、アダマンタイト繊維の生地を使ったりして作っている特注品だ。
ドワーフの革製品にクリエイトゴーレムをかけて、魔核で強化しても耐えれないことがあったので、本気で戦闘するときに使う物として、最近作ったものだ。今更作ったのは、強化して召喚していた靴でなんとかなっていたからだ。
新しく作ろうと思ったのは、召喚した物だと完璧に足の形に合わせることができなかったので、召喚してから少し改造して使っていたのを、完璧に足の形に合わせたレッドドラゴンの皮を使った靴を補強して、更にクリエイトゴーレムで強化したのを作った。
足首の動きも悪くないな。首も肩も腰もその他関節も問題なさそうだな。
バザールが人造ゴーレムの調整を済ませて、戦闘の準備が整った。
人造ゴーレムに相対すると、見た目は大して汎用の人造ゴーレムと変わらないのだが、なんか威圧感が違う。質量は見た目で分からないはずなのに、そう感じるのは、俺がこいつの素材を知っているからだろうか?
バザールの掛け声で試合が始まる。
距離は約10メートルほどだろう。俺たちからすれば、一瞬で無くなる距離だ。お互いに観察しあい、動かずに様子を見ている。
普段の人造ゴーレムの動きは、人間の真似をしているというのが分るのだが戦闘になると、格段に動きが良くなるんだよな。なんというか、しっかり考えて行動している印象なのだ。考えているのに動き出しが早いので、受けに回りすぎるとすぐに負けてしまう。
だからといって、先手で攻めようとしても、俺を軽く凌駕する情報処理のスピードと反射神経で、受けられてそのまま負けてしまうこともある。人造ゴーレムが学び始めて、受けからの反撃を覚えた時に、かなり苦戦した覚えがある。
先手を取らせても後手を取らせても、俺の思い通りに動かさないと負けが増えてしまう。それに、1回使った流れは、2回目以降は8割方防がれてしまう。100パーセントではないのは、同じ流れでも派生系がいくつもあるので、2割は読み違えて対応を間違ってしまった時だな。
そもそも、アダマンタイト製のボディーに斬撃は、ほぼ通用しない。アダマンタイト製の武器を使えば、凹ませることも可能だろうが、それでも同じ個所を何度も斬りつける必要がある。壊すなら、打撃による破壊しか考えられない。
俺は、両手にハンドアックスという、変則な武器構成だ。対する人造ゴーレムは双鉄鞭だ。
この武器を選んでいるのは、不慮の事故が少ないからだな。刃物系の武器だと、手加減のスキルが付いていても、手足が切られることがあるので、極力使用させていない。妻たちがマジで怒るからな。だから、基本は双鉄鞭や棍棒などが訓練時の使用武器となる。
確かに手足は切られることが無くなったが、その鉄鞭ってある意味刃物より凶悪なんだよね。革製の防具の上からでも、部分的に衝撃がありえないことになるんだよね。しっぺで皮膚を思いっきり叩かれたときの何十倍もの痛みが、防具の上からの攻撃でもあるので、回避はしっかりとしないといけない。
受けも甘いと鉄鞭がしなり、強打してくることがあるのでマジで注意が必要。それが2本だからな……下手に受けに回ると、全身がミミズ腫れになりそうだ。
睨み合っていても始まらないな。
この前考えた……うをっ!
攻めようかとした瞬間に、人造ゴーレムが突っ込んできた。不意を突かれた形になり、ギリギリで攻撃をかわし受ける形になってしまった。
もうこうなると、俺の勝ち目は無くなる。完璧に先手を決められてしまった以上、この流れからは抜け出さないといけない。反射神経では勝てないので、自爆覚悟で逃げる以外思いつかないな。
隙はまず作れないので、人造ゴーレムの攻撃を何とか回避しながら、魔法を構築する。使うのは、エアボム。空気爆弾だな。俺と人造ゴーレムの間で発動して、人造ゴーレムの動きを少しでも遅らせて、俺は爆発の勢いを殺さないように離脱する形だ。
魔法を発動しようとした瞬間に、人造ゴーレムが武器を捨て、鉄鞭の間合いから格闘の間合いへと詰めてきた。構築した魔法を使った時には、発動地点と俺の間に人造ゴーレムがいて、そのまま押し倒されて負けとなる。
全部向こうの思い通りだったな……マジで悔しいわ。
じゃぁ、2戦目をしますかね。
俺は号令と共に、考えていた作戦を実行する。
人造ゴーレムが動き出す前に、右手に持ったハンドアックスを、人造ゴーレムの右足首付近に投げつける。
鉄鞭では上手く弾かないと、そのまま体に当たってしまうので、右足をあげて回避するか、左へ移動する選択肢になる。人造ゴーレムは、移動して回避する方を選んだ。
人造ゴーレムが回避する前に俺は動き出しており、更に右手には2本目のハンドアックスを取り出している。ハンドアックスを投げて相手に対応させている間に、距離を詰めている。
強引に距離を詰めてくる選択肢もあるのだが、人造ゴーレムの戦闘条件に自身の肉体強度は計算に入れてはいけない事にしているので、基本的に回避が選択される状況だ。この部分は、人間に合わせた思考回路に近いものだろう。
それを利用して、回避させる行動をとらせ、俺は再び先手を取り、2本目のハンドアックスも投げた。狙いは、着地する際の左足首付近だ。
選べる選択肢は、勢いを殺さずそのまま左に流れる、止まって鉄鞭で弾く、切り返す、このくらいしかないだろう。さらに選択肢を減らすために左手のハンドアックスも投げた。切り返して右に戻ってほしくないので、切り返す動作をすると命中する絶妙な位置に投げた。
そうすると、更に左へ流れる人造ゴーレム。
俺はその間も移動して距離を詰めている。回避行動をとる移動の人造ゴーレムと俺とでは、こちらの方が自由に動け、しかも早い。
となれば、俺たちの距離は近付き、始めの半分5メートル以下になっている。
両手に新たに出したハンドアックスは、片方はまた左足首付近に投げ、もう片方は左に流れるのを阻止して、右に切り返すような判断をすべき位置に投げる。
そうすると、誘導されたかのように俺の前に人造ゴーレムが現れた。
俺が近くに来ている事は分かっていたので、反撃を仕掛けてくるが、無謀な攻撃であるため読みやすく、受け流すように攻撃をさばいて、体勢を崩し再度取り出した武器を首に突き付ける。
判定では俺の勝ちになるのだが、仕切り直したい時に急所に武器を当てて、始めの位置に戻ることもある。これは、俺が色々な攻撃を試したいので、先ほどバザールに調整してもらった時に、お願いしておいた試合終了の合図となっていた。
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