2127話 幻想的な景色
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昨日は久しぶりに、睡魔に負けて寝てしまった。普段より大分寝るのが早かったので、その分早く目が覚めてしまう。俺は珍しく1人用のベッドで寝ていた。1人用っていっても、4畳半くらいありそうなベッドだが、最近ではうちではこれが1人用として認識されている。
普通の宿であれば、一般的な布団の大きさのベッドしかないのだが、俺たちが利用する場所のほとんどは、このサイズで1人分として準備されている。妻たちの分も考えると、全員分を1部屋に入れようとすれば、ちっちゃな体育館くらいの広さは必要だろうな。
まぁ、こういった出先では、3人くらいで寝るのが多いのだが、認識上1人用と呼んでしまっている。
近くに誰か寝ていてもいい気はしたのだが、妻たちが気を使って1人で寝かせてくれたのだろう。日本にいた頃は、近くに人がいると寝れなかったけど、今では安心しきって寝ているので気にする必要はないのだが、たまに気配で起きてしまうことがあるので、そのあたりを考慮してくれたのではないだろうか。
今は、空が明るくなるちょっと前だな。屋上に行って、景色でも眺めてみるか。
屋上へ上がり、太陽の上がる方角を向く。陰と陽のちょうど境目のようになっている。太陽に近い位置は明るくなり始めているが、離れるにしたがって闇が深くなっていく。近くに明かりがあるせいか、真夜中の夜空より暗く見えるな。
日本でも場所を選べば見えたであろう景色に心が奪われる……だが、その時間は長くなかった。5分も経たないうちに辺りは明るくなり、夜の帳は霧散して光に支配された。
1日に短い時間だけ見ることのできる光景を寝起きに見れて、何か得した気分になる。気候条件も良く雲一つない澄み渡った空の下で見ることができた。幸運3セットがいい仕事をしてくれたのだろうか?
美しい景色を見ている間に体は覚醒しており、気持ちの高ぶりでトップギアに入っている感じだ。
ガッツリと体を動かしたい気分になってしまった。
俺たちが建てた建物や訓練場では、本気で動けば穴だらけにしてしまうので、俺は悩んだ。それに相手がいなければ模擬試合も出来ない。
待てよ、模擬試合だけなら……収納の中に改造した方の人造ゴーレムがはいってなかったか? 中身を調べていくと、目的の物を発見する。
とはいえ、こいつも俺に合わせた模擬試合をするとなると、生半可な地面じゃ耐えられないんだよな。硬く自動修復されるダンジョン内で、ようやくあたりを破壊しながら模擬戦ができるっていう、馬鹿げた重さと力だからな……
屋上で悩んでいると、扉の開く音がした。誰かが来たのだと思い振り向くと、骨がいた。
「シュウ殿、明らかにがっかりするのは止めるでござる。気分転換に朝日を浴びに来たら、ブラウニーたちにシュウ殿が屋上にいるから、様子を見てくるように言われたでござるのに……」
「そりゃすまんな。でもよ、寝ないからこの時間に気分転換するのは分かるけど、アンデッドなのに朝日を浴びるって……正直アイデンティティが崩壊していないか?」
「そんなことは無いでござる。某のアイデンティティは、アンデッドの王であって光を克服した、最強のアンデッドでござる!」
「光を克服しても、聖属性は克服できずに俺にボロ負けしたけどな」
「アンデッドで! 最強の! ノーライフキングでござる。そこ間違えないでほしいでござるよ。それよりも、悩んでいたようでござるが、何か問題でもあるでござるか?」
「改造した人造ゴーレムあるだろ? あれって、重いうえに力が強いから、まともな地面だと訓練に使えないだろ? 俺の力もそうだけどさ。訓練相手が欲しいだけなのに、相手にも場所にも苦労しているよ」
「あ~あの人造ゴーレムでござるか。立ってるだけで柔らかい地面なら、沈んでいく最高の欠陥品でござるな。でござるが、使用場所が限られるから、使える場所を増やせるようにしたでござるよ」
思いもよらぬバザールの機転で、俺は訓練をすることができるようだ。
内容を聞いてみると、実に分かりやすい物だった。世界で一番硬い金属、アダマンタイトの板は召喚コストが非常に安い。鉄に比べても遥かに安い。ただただ硬いだけで、鉄の何倍も重たい板など使い物にならない。
だが、その板を敷き詰めることで、訓練を行える空間を作り出したのだ。召喚されたアダマンタイトの板はツルツルなので、クリエイトゴーレムを使って、表面をざらざらに加工してあるらしい。魔力をエルダーリッチなどから回収できるバザールが、暇を持て余した時に加工したらしい。
アダマンタイトの板が敷き詰められたのは、約100メートル四方の広大な範囲だ。模擬戦なら20メートルもあれば足りるが、手加減無しの訓練だとこれでも手狭になる時がある。
それでも、訓練する場所が作れただけでも感謝だな。
トップギアに入っていると錯覚していると自覚できているので、すぐに訓練を始めるようなことはしない。体は覚醒していても、体の機能がまだ最適化されていない。
体をほぐすようにストレッチをして、バザールの操るスケルトンと軽く打ち合う。
俺の意識に動きがしっかりとついてきているか、ゆっくりとした動作から初め、次第にスピードを上げていく。体の動きは、ちょっとムラはあるけど、問題ないレベルまでギアが入った事を自覚する。
うん、気分は悪くないな。初めから全力という訳にはいかないが、しばらく打ち合っていれば、その内トップギアに入るだろう。
「シュウ殿、模擬戦をする前に確認しておきたいでござるが、試合を止める条件はいつも通りでござるか?」
いつも通り……俺専用の訓練用人造ゴーレムは、俺が倒れるとその時点で攻撃を止めるように、魔核で制御されている。なので、ダウン=1負けとなり、再び相対して戦闘開始となる。
それに対して、俺からの攻撃には制限がなく、人造ゴーレムが動きを止めるまで戦闘は終わらないので、何回ダウンする前に、人造ゴーレムを破壊できるかという形になっている。
最近はやっていなかったので、少し緊張をしている。
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