2077話 君子、危うきに近寄らず
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今回はやることなすこと、全てが後手に回るような感じになってるな。
セキュリティーが甘い所をついて書類の改ざんというか知らない書類を紛れ込まれるし、まさか当日にお金がとりに来られるとは思ってなかったし、とりに来たお金がすぐに他の人間に回収されて移動させられるとは思ってなかった。
回収されたってことは、単独犯ではなかったということか……入社してから心境の変化があったのか、魔が差したのか、敵性勢力に取り込まれたのか操られているのか分からないが、明確に敵と呼べる相手が出てきたということか……
おっと、呼び寄せるつもりは無かったけど、妻たちにも連絡を入れて一部の妻たちが、手伝いに俺の執務室へ来ている。年長組の子ども産んでない組と年中組の全員が来たみたいだな。年少組は、土木組と仲がいいので残って作業しているみたいだ。
リンドが現場の指揮をとって、カエデが相談役みたいになって、ミリーが子どもたちを統率して、しっかりと役割分担をしながら対応しているみたいだな。
土木組の生活するスペースも、俺たちが生活するスペースも、内容や環境整備は後でいいから、子どもたちと治療師たちの生活するスペースを早めにお願いな!
言われるまでもなくリンドはその方向に舵を取っており、ブラウニーたちを使って治療師たちをすぐにでも受け入れられるように、家具も設置されているようだな。土木組に指示を出した辺りでリンドも気付いてくれたのかな? しっかりと舵を取って、方向を修正していてくれたみたいだ。
向こうの確認をしていると、追加で応援に来ていた綾乃とバザールが、持ち出されたお金を運び出した人間を発見する。過去の映像なので早回しで進めていき、今どこにいるのかを突き止めるために作業をしてくれている。
過去の映像から、この人物を検索できるようになれば別なのだが、過去の映像は映像だけで、その映像だけではマップ先生を使って検索できないのだ。
「これなら、召喚した金貨や箱を使うべきだったでござるな」
バザールが何か言っている。どういうことだ?
「召喚した物なら、ある程度なら履歴をたどって、マップ先生で検索できるでござるよ。まとまった金貨という形で検索は出来ないでござるが、履歴を使ったピンポイント検索ができるでござる。今でも、まとまった金貨があるところは検索できるでござるが、レイの金額なら早送りしても変わらないでござるよ」
あぁ! マーカーになる何かがあれば、過去にさかのぼって映像を探す必要もなかったのか……今回は色々やらかしているな。今回準備した金額は、ある程度の規模の商人であれば持っている額なので、金貨で検索してもかなりの数がヒットしてしまう。
一応金貨の枚数で検索したが、ぴったしの額で探した時は無かったので、運んでいる人間もある程度の金貨を持っているか、途中で仲間に分けたか……検索機能を使った方法では、見つけられていないのだ。
中途半端で不便だけど、これをひっくるめてダンジョンマスターの能力なんだろうな。自分のエリア内であっても、完全にこちらに有利という状況は作りにくいのが、この能力なんだよな。
分かりやすい典型的な能力で言えば、侵入者がいる階には直接召喚するタイプの魔法陣を設置することができないって奴だな。階層に付与するタイプは問題なく発動するのだが、個々に召喚となると侵入者のいない階層から進行させないといけないんだよね。
休憩しているエリアに攻め込ませることは出来るけど、その場所に直接召喚できないので面倒ではあるんだよね。後、侵入者がいるとその階は、大きくダンジョンがいじれなかったりするんだよな。検証していないので、どれだけいじれるかは知らないがな。
よしよし、綾乃が相手を突き止めてくれたみたいだな。
「シュウ、どうやら聖国の商隊の人間みたいよ。監視しているあいつは、帝国出身でしょ? どういったつながりがあるのかしらね。聖国の商人まで排除してはいないけど、またあの国の人間が問題を引き起こしたのね。本当に縁のある宗教なことで……」
トップは掌握というか、脅しまくってボッコボコにしているのに、未だにトラブルが尽きないんだよな。組織が大きくなりすぎると、トップの意思に関係なく末端の手足が動いたりするからな。それと同じ状況で、末端の人間が未だに問題を起こすのだ。
それも気になるが、帝国の人間である今回の犯人のこいつは、実力主義の思考に染まっているはずなのに、聖国の訳の分からない信仰やら何やらで取り込まれたのだろうか? その部分に疑問を感じている。グリエルもガリアも俺のボヤキに同意しているな。
宗教って理屈の通じない部分がある場合が多いじゃん。そうじゃない宗教もあるけど、過激派と呼ばれる人たちがいる宗教は、そう言った傾向が強い気がするんだよね。それと同じ匂いのする聖国の宗教は、厄介極まりないんだよな……
理論整然と論破したところで、宗教の名のもとにすべてを無視することだって多々あるしな。
どうせ今回もそう言った、末端の人間が関わっているだけで、本当のトップが関わっていないのは明白である。ただ、末端が関わっているだけなのだが、どうやってこちらに食い込んだのかはしっかりと確認しておく必要があるから、どうするべきだろうか?
俺がこの後どうしようか考えていると、
「グリエルさんとガリアさん、ゴーストタウンの兵士を動かしますので、関係各所に連絡しておいてください。それと、今の様子から逃げないと思いますが、出入を一時……対象の商隊を捕まえるまで、止めてください。あなたたち、本気の装備を身に着けたら移動しますよ。バザールさんのアンデッドも動かしてくださいね」
優しくバザールには頼んでいるように聞こえるのだが、背筋が冷たくなるような迫力がある。あのバザールも、突然の事と骨の体でダイレクトに背骨が冷えたのか、立ち上がり敬礼する勢いで返事をしていた。ござる口調をする余裕もなかったようだ。
って、まてやこらぁ!
状況に流されていたけど、シュリがきびきびと指示を出して移動を始める前に、止めることに成功した……一時的に……
妻たちが前に行く必要はないので止めようとしたのだが、子どもたちが楽しみにしていた今回の体験学習の様なモノを邪魔されて、ガチギレしている状態だったのだ。
あれ以上妻たちの行動を止めていたら、会話の途中であった「ベットに縛り付けて、例の薬を飲ませてから一日中相手してもらうことになりますけど?」みたいなことを言われて、俺は手のひらを返さざるを得なかった。
この系統の冗談に聞こえる話は、冗談じゃなく実行されるので、近寄るよ予想以上の被害が出るので逃げるに限るのだ。
何度も言うけど、妻たちといたすことは嫌いではない。だけど、それだけに溺れたいわけではないのだ。淫楽にふけるようなゴリゴリの性獣ではないので、手加減してもらえると助かります。
あ~、怪我しないようにスライムたちや、シャドーなんかはしっかりと連れていくように。
見事に手のひらを返した俺を見た綾乃は、ゲラゲラと笑っていた。
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